ザ・グレート・展開予測ショー

温かい想い(その17)


投稿者名:ユタ
投稿日時:(02/11/28)










「けっ!てめぇのご自慢の残留思念はもう使えねぇぞ!」
「今、富士の樹海全体を包むほどの巨大な結界が張られています」
「ま、オカルトGメンは金かけてるワケー」

大逆転の理由を次々と語る3人。

ルシオラ(ソウト)は記憶の奥底にある者達の顔を睨んだ・・・

「ってことはママが・・・」


チャラ〜チャチャ〜チャララ〜♪・・・・


そのとき、美神の携帯に着信が入る。着信音は近畿剛一の新曲だったが今はそんなことを気にしている場合ではなかった。
もちろん普通の携帯はこんなところまでかからないが、
さすがは美神・・・金にモノを言わせて、ちゃっかり改造を施していた。
ディスプレイを見るとそこには美神の見たことのない番号が表示されている。

ピっ


「・・・・もしもし!」




少し緊張の顔色を浮かべ、電話にでる美神。

「令子!?無事だったのね!」

声の主が誰かと少しの間考えるがやがてハッと気付いた。

「ママ!?ど、どうして・・・・!?それにこの結界・・」

『実はね・・令子達に除霊を頼むと同時に、オカルトGメン本部にも応援を要請してたのよ。これも西条クンのデータのおかげね』

美智恵の言葉で全てを理解する美神。しかし、それよりも気なることを聞いてみた。

「そうだ!西条さんは!?」

『大丈夫・・・命に別状はないわ・・・』

「そう・・・・。なら聞いてもいい?ママ」

『ええ、何かしら?』

2秒ほど二人の会話に沈黙が訪れる・・・
なぜなら美神スーっとめいっぱい息を吸ったから・・・そしてその息を一気に吐き出すように・・・

「・・・・・ママ─────っ!!!私達を囮に使ったわね─────!!!!
 ソウトの存在の確証なんて、西条さんがとうに集めてたんでしょ!!!
 そのデータの中から、近日中にソウトが行動開始することが分かったから私達を足止めに使ったのね!!
 もう信じらんない!人間不信になったらどうしてくれんのよ!6億?20億くらい払ってもらわなきゃ割りに合わないわよーー!!」

ワンブレス(一息)で怒りを吐き出す美神。その大声で美智恵の耳がキーンと耳鳴りを起こす。

『そ、その件については、また話し合いましょ(汗)あ、いけない!電波が!じゃ・・・頑張って令子!・・・・ガチャリ』


「コラアアアァァァァ─────っ!!!
 『ガチャリ』ってなによ!『ガチャリ』って!人の命を何だと思ってるのよ─────っ!!!」

涙を吹き出しながら、携帯を握りつぶす美神。


(((((親子だなぁ・・・・)))))

美神以外の全員が同じことを汗を流しながら心で呟いた。

「で、この続きはあんた達がやってくれるわけ!?」

美神は不機嫌という表情を隠そうともせずに応援部隊の3人をギロっと睨んだ。

「いや、それがよー・・」

「ここまでくる間に、残留思念と戦いすぎて・・・」

「霊力使い果たしちゃったワケー!」

「「・・・・・・・・・・・」」

何も言わない美神と横島・・・やがて二人はエミと、雪之丞の前に立った。そして・・・


「この役立たずの3流呪術師がぁぁぁ!!」
「オタク達がボザボサしてるのが悪いんじゃない!それ以前この結界にどんだけ霊力を注入したと思ってんのよ!!!!」

「雪之丞ぉぉぉ!!期待させる登場の仕方はやめんか────!!読者の皆さんがもう呆れ取るわ─────っ!!!(泣)」
「仕方ねーだろが─────っ!!!!!ここまで来るのにどんだけ苦労した思ってんだ─────っ!!!!!!」

「「まぁまぁ・・・」」

お互いの額をくっつけグリグリとこする二組を、温和な二人(おキヌ、ピート)が諌めた



「ったく・・・・・じゃあこの中でまともに戦えるのは・・・横島クンだけみたいね・・・」

ヒリヒリするおデコを撫でながら美神は横島を見据えた。

「・・・・・・」

その言葉の意味を理解してるのか、何も答えない横島。

「おい、ピート。あいつって確か・・・」
「ええ、ルシオラさんですよ・・・正確にはルシオラさんの残留思念にソウトが取り付いてるみたいですね」

雪之丞の耳打ちに、苦渋の表情を浮かべるピート

「ち・・・横島には戦いづらい相手じゃねぇか」

雪之丞は魔装術を解き舌打ちをした。
その言葉を聞いていたルシオラ(ソウト)の眉がピクっと反応する。

『私と戦う?・・・寝言は寝てから言いなさいよ。あんた達を八つ裂きにするなんてわけないのよ・・』

先程からの動揺をまるで感じさせもせず、スっと立ち上がる。
確かに残留思念を封じる結界が発動しているはずなのに、ルシオラ(ソウト)の魔力はまるで落ちている気配はなかった。

「だったら何故しないの?・・・・・・・おそらく、今あんたは・・・」

美神が少し笑みをこぼしながら言った。

『今してあげるわ!!!』


ルシオラ(ソウト)が魔力を拳に込め飛び掛ってくる・・・・・だが

『!!?・・・・・・・・・・なっ!!・・・がっ!意識が・・・・・まさか・・・ぐっ』

ルシオラ(ソウト)は突然苦しみだすと頭を抱え地に膝をついた。

「ルしっ!!!・・・・・・・・・・」


その姿に思わず駆け寄りそうになる横島。
差し出しそうになった右手を苦渋の表情で引っ込めた。

やがてルシオラはヨロヨロと立ち上がると、
まるで懐かしい者を見るかような温かい瞳で横島を見つめた・・・・・・・そして・・静かにその口を開いた・・・・・・・


「・・・・ヨコシマ・・・・・・・・・・久しぶりね・・・・」

笑顔を浮かべ横島を見つめるルシオラ・・・それは・・・薄く・・・そして儚(はかな)い笑顔・・・

「ルシ・・オラ・・?」

その笑顔に魅入られるように、ヨロヨロとした足取りで近付いていく

「騙されんな!そいつはソウトに乗っ取られてんだろ!?」
「違う!!・・・今は全然違う!!!」

雪之丞の声に怒鳴るように返す横島。
その一言に押されたのか、雪之丞はそれ以上何も言わなかった。


「ご、ごめんなさい・・・精一杯抵抗してたんだけど・・・ぐっ・・・私はルシオラ・・・本人じゃないから
 ・・・・なかなか・・表面にでれなくて・・今は・・・結界と・・・ヨコシマの霊基構造の共鳴が強いせいで・・
 こうして話してるの・・・・でもそれも長くもたないわ‥・・・」

「ルシオラ!!」

「は、早く・・・私ごと・・・ソウトを・・・・・次に奴の人格が出てきたら・・・今度こそヨコシマ達を殺しちゃう・・・
 ・・・・・・そ、そんなの・・私は絶対に嫌・・・だから・・・・・・・・。ね?」

「そんな・・・」

ニコっと精一杯の笑顔を横島に見せるルシオラ。
皮肉にも、その笑顔が逆に横島の顔に悲しみの表情を浮かばせる。
そんな横島にむけてルシオラの右手があがり、その掌に魔力が集中する。

「・・・こ、この!・・・・・少・・・し・・・黙ってな・・・さいよ!」

自分の中の異物・・・ソウトと格闘するように、魔力が集中する右手を左手で押さえるルシオラ。
それを見ているその場の全員が、やりきれない気持ちとなる。

(・・・・・・・・・ルシオラさん)

ルシオラの行為におキヌは自分の頬に熱いものが流れているのに気付いた。
彼女は何て強いのだろう・・・そして、自分は彼女みたいに強くなれるのだろうか・・・・



ピリリリリリリイイイイイイイイイイイイイィィィィィ・・・・・・・・・・・



ネクロマンサーの音色が美しく響いた・・・・先程までの音とは違う・・・
悲しみ、哀愁、慈愛・・・・本来おキヌがもつ優しさ・・・・それが今まで以上にその音色に込められていた・・・

「ありがとう・・・・」

ルシオラはおキヌと目が合うとニコっと微笑んだ。



(『ヨコシマ!早く!!』)

「ルシオラ!?あれ!?」

突然、自分の頭の中に響くルシオラの声に驚く横島。

(『もう思念体のほうの私の意識は限界よ!今は一時的に霊基構造が活性化して、
  あなたの中から話しかけてるの!・・・・早く!チャンスはもう今しかないわ!』)

「俺が・・・また俺がやらなくちゃいけなのかよ・・・」

横島は顔を伏せ拳を震わせる。

「横島クン・・・・・もういい・・・横島クンが好きなように決めなさい・・」

沈黙を保っていた美神が口を開いた・・・

「美神さん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嘘ツケぇぇぇ─────っ!!!!!
 『今回も』言葉とは裏腹なプレッシャーを感じるぞぉぉ!!!!(汗)」

「当たり前でしょが─────っ!あんたがやらなきゃ私達は殺されちゃうのよっ!!!
 ・・・・・・・・・・・・・・・だからって・・・『今の』ルシオラの思念体を破壊しろなんて私の口から言えるわけないじゃない!」

「・・・・・美神さん」

「・・・・・・・だから、・・・だからあんたが正しいと思うことをすればいい」

それ以上美神は何も言わなかった

「横島さん!この大規模結界もあと20秒しかもちません」
「こっちのお嬢チャンも、もう限界みたいよ!」

超小型通信機からの情報を伝えるピート、
残り少ない霊力をおキヌにそそぐエミの声が、ますます横島を追い詰めていく。

『・・・ギギ・・・・・恋人をまた殺すのかギィ・・・・わたしなら、このままあなたと一緒にいれるのよ・・・アイシテルワ・・・ヨコシマ』

再び、意識を取り戻していくソウト・・・もはや予断が許されない状況となっているのは誰の目にも明らかだった・・・

(『嘘よ!アシュ様ならともかく、こんな悪魔が約束なんて守るはずない!それ以前にあれはもう私じゃないのよ!』)

「それでも・・・それでも俺は!」

(『・・・・・・・・・・・・・・ヨコシマ・・・・・私の・・・私の心と魂は常にあなたと共にあるのよ・・・それを忘れないで』)

「ルシオラ・・・」

横島はグっと目蓋を閉じる・・・そして・・・覚悟を決めた強い意志の瞳を浮かべる。

「そうだよな・・・例えどんな結果になっても・・・!!」

一度光を失った陰陽文珠が再び輝き、その光を増していく・・・

「後悔するのも、苦しむのも・・・・!!」

グっと前傾姿勢をとり、地を蹴った!

「全てが終わってからだ──────────っっ!!!!」

横島の右手の中でキイイィィィイインと高鳴る陰陽文珠が、ルシオラの腹部で光輝いた。















次回予告

「光輝く陰陽文珠を放ち、横島は何を想うのか・・・
 そして、ついにソウトを追い詰める美神達。
 この悲しい戦いの後に残るのは・・・愛か怒りか苦しみか・・・それとも」


「ふふ・・・・少しはお話したかったわね・・・・ヨコシマ」
「ルシオラ──────────っ!!!」

想いの果てに見えるものは・・・
温かい想い(その18)に続く・・・・・・・・・・・・・最終回まであと3回

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