ザ・グレート・展開予測ショー

魔人Y−7


投稿者名:NAVA
投稿日時:(02/11/28)

 「なっ!・・・では横島を魔族化すると?」






 驚愕しているのはワルキューレ。
 万魔殿の一室、夜魔の女王リリスの部屋においてである。



 かつて、エデンと呼ばれた楽園にはアダムという最初の人間がいた。
 そしてのその最初の伴侶としてリリスが存在したのだが・・・。

 リリスの余りの奔放さにアダムはグロッキーしたのだ。

 言い換えよう。

 アダムは夜の営みでリリスを満足させることが出来なかったのである。
 男が女を満足させてやれない。これはアダムとしては屈辱的な事態であった。





 分かるって思った奴手を挙げろ!





 私(作者)の経験だ。気にするな。君だけじゃない!


 ゲフンゲフンッ!

 


 とにかく、それが理由で二人は破局を迎え、アダムによってリリスはエデンを追い出され、魔界に降って魔族化。紆余曲折を経て魔王として君臨するようになる。
 
 そんなリリスの容姿と言えば、まさしく男をむさぼり尽くす蛇である。
 切れ長の目をしており、すっきりと通った鼻筋。
 唇は血を啜った直後のように、艶やかで鮮やかな紅。
 薄暗い部屋に艶かしく白い肌がくっきりと浮かび上がっている。



 そんな黒髪の美女が一段高いところからワルキューレを見下ろしている。

 「ええ。アシュタロスの後継者としてね」

 ワルキューレの動揺を面白げに見つめながら柔らかく告げる。

 「しかし・・・彼はそんなことを望みません!!」

 ワルキューレは内心の動揺を制し、横島を擁護する。

 「それにそんな行動が表面化すればせっかくのデタントが保てません!」

 何を馬鹿なことを。そんな視線をワルキューレに浴びせるリリス。

 「デタントねぇ・・・貴女は知ってるかしら?人間の・・・何と言ったかしら?アンブローゾ・ピアズだったかしら?彼は平和をこう定義しているわ。『平和とは戦争をしていない期間、あるいは戦争と戦争の間の期間である』と」

 「デ、デタントは戦争の準備期間だと仰られるのですか?!」

 「私達と神族の戦い。これは世界を磨きあげるための不毛なモノであることは貴女も知ってるでしょ?でもね。例え不毛な戦いであっても私達は戦わねばならない。そして勝たねばならない。それは私達の存在意義に関わる問題だからよ」

 神族の連中だって似たようなモノよ。そう吐き捨ててから、リリスは表情をガラリと変える。

 「ああ、それと。彼の魔族化には彼自身にもメリットがあるわ」

 そして貴女にもね。
 
 そう言いながらニッコリと微笑む。
 いわゆる魔性の微笑みという奴だ。

 「メ・・・メリットですか?」

 「ええ。彼にはアシュタロスの力を継承してもらいます。知っての通り、魔王ともなれば眷属を作り出すことも可能。そして彼の中には愛しのルシオラの霊基構造が眠っている。それを利用すれば彼女を蘇らせることも可能となるわ」

 ルシオラの名が出た時点でワルキューレは驚きの表情を浮かべ、ルシオラ復活が可能なことを知り青ざめていく。

 「なっ・・・」

 ゆっくりとリリスはワルキューレに近づく。

 「貴女は・・・死んだ女に勝てると思ってるの?私にはそうは思えない。ルシオラはもう彼の心の深い所に根ざしてしまっている。そして想い出というものは美化されるもの。悔恨が残れば残るほどそれは強い想いとなるでしょう」

 ワルキューレは戦慄した。
 この目の前の魔王は全てを承知している。
 ルシオラのことは報告書が行っているから当然と言えば当然。
 しかし、自分の心の奥底の気持ちまで見透かされている!?

 「死んだ女には勝てないけど・・・生きている女から男を奪い取るのはワリと簡単なことなのよ?」

 リリスはワルキューレの頬を手の平で優しく撫でながら、上目遣いにワルキューレの瞳を見つめる。



 『ね?だから横島を魔族化してルシオラを蘇らせましょ?そうしてからゆっくりと奪い取るの。横島からルシオラへの気持ちを削ぎとっていくの。その隙間を貴女で埋めていくの。大丈夫。彼が魔族になれば時間は無限にあるの。だから・・・ゆっくり着実に・・・ね?』



 ワルキューレは頭の中に響く、誘惑という名の暗示に抗い続けることが出来なくなり意識を失った。
 最後に見えたのはリリスの妖艶な微笑だった。







 「終わったわ。そろそろ出てきたら?」

 悪戯っ子のような表情を浮かべてリリスは振り返る。

 振り返って見据えた場所の闇が徐々に形を取っていく。

 現れたのは魔王ベリアルだった。

 「夜魔お得意のテンプテーションか。フンッ・・・相変わらずのお手並みだな」

 床に倒れているワルキューレを眺めながら、面白くなさそうにベリアルは評価する。
 ここだけの話、昔からベリアルはリリスに手玉に取られ続けているために頭が上がらない。
 それを覆い隠すように強気に出ている。それが今の彼だったりする。

 クスッ
 やはり妖艶な微笑みを浮かべながらリリスは言った。

 「それにしても横島忠夫・・・か。魔族の女を二人も・・・いえ三人も虜にするなんて興味深いわ。聞けば神族にも良い娘がいるみたいだしね・・・」

 ベリアルの虚勢を見透かしている彼女にとって、彼の姿は滑稽に映る。




 魔界にも大した男は存在しなかった。アダムよりはマシだったけどね。

 横島忠夫。貴方は私に何を見せてくれるのかしら? 
 

  







 毒蛇が自分を吟味し始めたことを横島は知らない。 






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アダムとリリスの関係に関しては・・・ジョークです。
いや、話の中では事実という設定ですけど、基本的にジョークです。
リアルで闇討ちとかはヤメテー(ぉ

それにしても・・・ワルキューレも横島に恋心を持っていた・・・というのは強引ですか?
ま、今更設定を弄るわけにもいかないんですけど。

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