ザ・グレート・展開予測ショー

懺悔


投稿者名:veld
投稿日時:(02/11/27)


 
 「人間欲しいものの一つや二つあって当然だと思うよ?って、神父の私が言っていいような台詞かどうかは分からないが・・・。別にそれを欲しがることに対して神に許しを請うなんて、ねえ。君の姉さんを見なさい。いや・・・あれを手本にするようになったら多分に困った人になると思うけど・・・ちなみに、一体君は何をほしがっているんだい?・・・言えない?そうか、それは残念だね・・・」




 あまり綺麗とは言えない、言ってしまえばボロボロな教会の中で、ある少女が神に祈りを捧げる姿を、この教会の主、唐巣神父は訝しげな顔で見ていた。その少女は顔なじみであり、よく知る人物ではあった。が、彼のイメージの中の彼女と、今目の前にいる彼女の姿が合わない。別人ではないか、そう思い、眼鏡のレンズを拭き、もう一度よーく見る。
 結果は変わらなかった。
 彼は何故か知らないが自然とこぼれるため息に憂鬱にならざるを得ない気持ちを隠せなかった。嫌な予感は確信に変わっていた。
 熱心に祈りを捧げていた彼女が一区切りついたのか立ち上がる。そして、彼女を見つめていた神父と目が合い、「こんにちわぁ!」と明るい声とともに頭を下げる。そんな彼女の姿に、緩む口元をきっと引き締め、大人の威厳を保とうとする、がその努力も報われることはなかった。
 彼女が素直であることは、神が起こした奇跡かもしれない、不覚にも、一瞬そう思ってしまったのは、彼と神様だけの秘密である。まあ、彼女の母親自体は素直な人であるのだから、そこまで言うほどのものではないかもしれないが。
 ふっと、思考を止めると、不思議そうな顔で見つめてくる少女の顔があった。

 「どうしたのかね?神様に最も縁がなさそうなのに・・・珍しいじゃないか」

 「どういう意味ですか!」

 少女の頬が膨らむ。怒っている、と言いたいのだろうが、残念ながらちっとも怖くない。神父は苦笑し彼女の頭を撫でた。彼がまだ、自分を幼い頃のように撫でる癖が直っていないことに、今度は彼女は苦笑した。

 「私、神様に懺悔してたんです・・・。」

 ほう、神父は興味深そうに彼女の話を聞き始めた。彼女の顔を見、その顔に見える深刻そうな表情から、彼女が本当に悩んでいることが分かる。

 「私、どうしても欲しいものがあって、でも、それは」









 教会から去り行く彼女の後ろ姿は、押さえつけられていたものから解き放たれたような、奔放さが感じられた。少なくとも、さっきのように悩んでいた様子は見えない。
 そんな少女の後ろ姿を見ながら、神父は何気なく彼女の欲しいものを想像してみた――が、思い浮かばなかった。聞けば、彼女は母親から厳しくしつけられているらしい。姉の二の舞にはしない、という母親の強い決意の表れらしいが、その結果、あんな悩みを持つようになってしまったのではないか、と考えたりする。彼の知る彼女の母親というのは、彼女の長女とは違い、常識的で(多分)良識的で(手段を選ばないという点では違うが)素直で(あけすけ過ぎる上に、頑固ではあるが)
・・・彼女の姉の二の舞・・・

 「彼女の・・・血・・・かっ!」

 思わず考えていたことが全然違う方向に移ってしまい、頭を抱えるような事実に行き当たってしまったことは否めない。だが、彼のできることに変わりはなかった―――そう。
 彼にできるのは、祈ることだけ。
 彼女のしつけの成果が、少しでも、彼女らの持つあの性質(滅茶苦茶あくが強い)を打ち消してくれることを、神に、祈るだけ。



 
 (ここからはあえてひのめちゃんの台詞なしでお楽しみください。)

 「ん、どうしたの?ひのめちゃん」

 くしゅくしゅ

 「また、お母さんに怒られたのかい?え、違うの?」

 こくこく

 「ふーん、欲しいものねえ・・・まあ、俺があげられるものなら何でもあげるんだけど」

 じー・・・

 「へっ・・・(汗)」

 じー・・・

 「えーと・・・」
 
 じー・・・

 「あのね・・・」

 じー・・・

 「それは・・・ちょっと・・・」

 うるうる

 「嫌いじゃないよ!!絶対に、それはないから!・・・じゃあどうしてって言われても・・・」

 うるうる、ひっくひっく

 「あーあー!泣かないで、分かったよ、分かったから!」

 きらきら

 「ひのめちゃんが十六歳になった時に覚えてたら?・・・いや・・・どこで覚えてきたの、そんな台詞・・・(汗)、一般常識って・・・」

 うるうる・・・ひっくひっく・・・ぐじゅぐじゅ・・・

 「わ・・・分かったから、うん、分かったから泣かないで・・・って、美神さん、
その手に持ってるのはな」

 ベキィ・・・バキィ・・・ドゴッ・・・グシャッ・・・グジャッ・・べチャッ・・・







 ―――終了
 「ひっく・・・ひっく・・・ぐすっ、れ、令子お姉ちゃん・・・お兄ちゃんは?」

 「ん・・・(汗)、お兄ちゃんは・・・どこ行っちゃったのかなぁ・・・」

 「ううぅ・・・お兄ちゃん(泣)」



 









 「って・・・何で美神さんが俺の部屋にいるんだ・・・ぐふっ」



 俯き涙を流す間に、消えてしまったあの人は、実は彼女の足元に。彼女が流す涙より、熱い血潮を垂れ流す。
気づけ、気づくんだ!ひのめちゃん!恋敵はすぐ傍にいる。作り笑いのその裏に、愛憎入り混じった感情隠す、君の姉が傍にいる!

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