ザ・グレート・展開予測ショー

魔人Y−6


投稿者名:NAVA
投稿日時:(02/11/26)



 美神が妙神山をせっせと登っている頃、魔界でも動きがあった。




 魔族軍仕官ワルキューレは6大魔王の集う万魔殿(パンデモニウム)に呼び出しを受けていた。

 
 6大魔王。
 魔界においては最高指導者に次ぐ権力と魔力の持ち主トップ6達のことである。
 アシュタロスもまた、末席ながらもかつてはこの6名に名を連ねていた。
 しかしアシュタロスの消滅以来、その席の1つは空席となっていた。

 彼らが万魔殿に集まっている理由。
 それはアシュタロスの消滅で生じた空席をどうするべきかという問題のためであった。

 あらかじめ述べておくと、彼らの中にアシュタロスの消滅を悼む者はいない。
 アシュタロスが嫌われ者だったわけではないが、転生の輪廻に耐え切れなくなった惰弱者。
 それが5人の一致した見解だった。
 しかしながら、彼の抜けた穴は大きい。
 神界とのデタントを維持するのは良いが、それはあくまで互角の戦力を持っているからこそである。
 別に神界との闘争を恐れるわけではない。むしろ闘争こそが彼らの本能である。
 しかし、魔界に自分達6大魔王がいるように、神界にも竜神王やら熾天使(セラフ)達が存在するのだ。


 『この戦力不均衡は正されなければならない』


 それが彼らに課された命題であった。


 彼らはアシュタロスに代わる人材を欲していた。
 しかし、すぐに代わりが務められるようでは魔王なんぞは名乗らない。
 長い議論が伯仲していたところで魔王ベリアルが提案した。
 
 『別に魔族に拘る必要はないのでは?必要なら神族を堕天させても良いし、人間を魔族化させてもよいのでは?』

 その発言のために、魔王達はまた人材捜索をするハメになったのである。




 



 結論として、神族は候補から外されることになった。
 神族を堕天させるにはかなりの手間暇がかかるし、その行為自体、神族全体に喧嘩を売るようなモノである。
 成功すればそれで良いが、失敗すればハルマゲドン(聖書級大戦)勃発まで考えられる。
 それを先送りするための人材確保だ。危ない橋を渡る必要はない。
 ちなみに彼らはハルマゲドン勃発自体を恐れてはない。
 最終戦争に勝つ為の準備期間。
 それがデタントという認識である。

 
 それはともかく。

 最終的に残った最有力候補のプロフィールは以下の通りだ。

 姓名:横島忠夫
 種族:人間(半魔)
 性 :男
 霊力:110マイト
 能力:文珠、霊波刀など。
 特記事項:先頃起きたアシュタロス挙兵の際、人類側の主戦力として常に最前線で働く。
      その過程でアシュタロスの眷属の霊基構造を継承し、魔族としての特性を持つ。
      魔族の特性を持つために、魔族化は容易と推察される。
      さらに、アシュタロスが作り出した眷属の霊基構造を持つため、
     
     『アシュタロスの力の結晶に対する拒絶反応が起きる可能性は極めて低い』
 
      煩悩の塊。


 次点になった者のプロフィールも紹介しておこう。

 姓名:美神令子
 種族:人間
 性 :女
 霊力:100マイト
 能力:時空間移動、霊具全般の扱いに長ける。
 特記事項:先頃起きたアシュタロス挙兵の際、人類側の主戦力として常に最前線で働く。
      前世はアシュタロスの作り出した眷属。
      それゆえ、魂には魔族としての特性が色濃く受け継がれている様子である。
      前世がアシュタロスの眷属であったために魔族化は容易であると同時に、

     『アシュタロスの力の結晶に対する拒絶反応が起きる可能性は低い』

      守銭奴。


 さらにその次にはアシュタロスの眷属であるべスパとパピリオが挙げられていた。
 この4人に共通する項目は1つ。
 
 『アシュタロスの力の結晶に対する拒絶反応が起きる可能性は低い』ことである。

 アシュタロスは輪廻の輪から外れることを願った。
 彼ほどの力を持つ魔族は、たとえ死んだとしても彼自身の力が望む望まざるに関わらず、いつかは彼を再構成して生まれ変わらせてしまう。
 これは神界・魔界の実力者全てに共通することであり、
 神界と魔界のバランスを取るための、言わば大自然の摂理、宇宙の意思である。
 
 しかし今回、アシュタロスは神界・魔界の両最高指導者の承認でこの流れをせき止めてしまった。
 故にこの力は行き場を失い、結晶化して6大魔王達の保有するところとなったのである。

 さて、べスパ・パピリオと共に5000マイトを軽く超える魔力の持ち主である。
 そこに横島と美神がその上の本命扱いなのは何故か?
 それはひとえに人間と魔族の成り立ちの違いによる。
 仮にべスパ・パピリオがアシュタロスの力を継承したとしても、そのまま力を発揮するわけではない。
 本来、魔族というものは生まれつき人に比べて巨大な力を持ちながらも、能力とその限界がはっきりとしており、
 訓練やら知識やらで磨くことは出来ても基本的な力が成長することはない。
 彼女達にとっては能力の上乗せというよりは、ドーピングに近い感覚で終わってしまう。
 (それでも爆発的に強くなることは確か)

 しかし人間は生まれつきの能力は低いが、成長に限界という概念がない。
 他の要因、例えば老化などで能力の高まりがストップしてしまうが、
 魔族化してしまえば、老化という現象は非常に緩慢になる。
 老いから開放された人間はどんどん成長を続けることが可能なのだ。
 人間を魔族化する際にアシュタロスの力の結晶を仕込んでおく。
 それだけでいずれはアシュタロス以上の魔王/魔神が誕生することになるのだ。
 その上、文珠、或いは時間移動というオプションまで付いてくる。(ちなみに、煩悩の塊だったり守銭奴だったりするのは魔界において悪徳ではない)


 つまり、6大魔王達は来たるべきハルマゲドンに備えて、アシュタロスの穴埋めどころか戦力の補強を目論んでいるのであった。
 

 余談ではあるが、何故6大魔王達本人がアシュタロスの力の結晶を取り込まないのか?
 力の結晶を取り込むという行為は要するにRPG風に言えばレベルアップである。
 例えばレベル10のキャラがいるとしよう。
 そこに力の結晶を使えば、そのキャラはレベル50まで一足飛びに強くなる。
 しかしこの力の結晶。決してレベルを40足すアイテムではなく、レベルを50にするだけのアイテムである。
 つまり、その全員がレベル50を超えている6大魔王達が使ったところでレベル90になるわけでもなく、何の効果もないのである。
 それどころかレベルが低くなる恐れすらある。
 以上、余談終わり。
 


 こうして横島・美神の双方に馴染みのあるワルキューレが万魔殿に呼ばれることとなった次第である。
 

 
 




  

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