ザ・グレート・展開予測ショー

チケット


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/11/26)

告白、誤解、動揺しりーずに関連してます(笑)←知ってる人いません

好きだと言う言葉を、思い人に言うのは難しいけれども、それよりもその言葉に込められた思いの深さを理解させるのは更に難しく、そして楽しい。

もう夜の帳は、空にかかり猫の爪のように細い三日月が、真上に上がったころ。

side美神。
事務所にて、美神は、ふかふかのソファーに背をしずみこませながら目の前の人物に声をかけた。
「で、なに?用事って?」
と、ちなみにその声音は、面白そーなものを含んでいる。
視界の先には一応(きっと、多分)恋人の横島そのひとである。
横島はいつものバンダナに、ジーンズ、デニムのジャケットにシャツというお決まりの格好だ。
だが、よく見れば、そのジーンズもジャケットもくたびれており、髪の毛もぼさぼさである。
元々細身の身体も、最期に見た時よりもすこしばかり痩せてもおり、頬のこけぐあいからもそれがわかる。
傍目にも、最近ろくな食生活をしていないことがわかるだろう。だが、その瞳はどこか熱のこもったものというか、きらきらと子供のようなヒカリがあるというか…
「え…いや、その」
横島は、汗ばむ手をごしごしと服で拭き、頬を赤くそめて、数分、迷ったあとに
ポケットにつっこんでいたであろう、紙片を二枚とりだす。
たんっと
音をたてて机の上に置かれた紙片は─

いつだったか、美神がいきたいと言っていた某有名劇場の劇(かの有名な風と○に去りぬ)のチケット(しかも一番いい席)である。
日付は明日で、チケットはくしゃくしゃで、お世辞にも、綺麗とは言いがたい。
「なに?これ?」
いやそれがチケットというものはわかるのだが。
美神は首を傾げ、聞く。
そういえば、一ヶ月前いきたいなあと何の気なしに言った事はあったが。
どうするにしよ、内容はもう知っているし、100回はみたものなのだ。
別に、だからどうしよおとは思ってなかったのだ。

「いや、なんとなく、美神さん、すきだっていってたから、この芝居」
偶然手にはいったんですよ。と横島。
んなわけない。
ならば、何故、横島がこんなにくたびれてるのだろうか?
(だから、最近仕事が終わると真っ先に、帰ったの?)
だけど、と思う。
横島は、本当に、嬉しそうにくしゃくしゃのチケットを差し出しているのだ。
きっと、好きではないそれを。
美神が喜ぶと思って。
こんなふうになって、嬉しくないわけがない。

美神は、見惚れるような、美しい笑みでじゃあ、二人でいく?と言った。


side横島。
どきりと、心臓が鳴るほどの綺麗な笑顔をみて横島は、ああそんなにこのチケット嬉しいんだなあとしみじみ思った。
一カ月ほど前、美神がぼんやりと、テレビを見ながら
「このキャステイングで見たことないのよねーいいなあ」
と言っていたのを聞いた瞬間思ったのだ。
これは、使えると。
これまで、デートといえば(といっても数えるほどしかしてないが)事務所でごろごろしてるだけなのだ。
買い物にいくにしても、何かをおごるにしても、横島の懐で美神の買い物などをおごれるわけがない。
けれど、オトコとして、年上とはいえ一応恋人の女性に(いくら収入が違っていても、しかも自分の貧乏の原因が彼女といっても)おごってもらうと言うのも…。
そう言えば、何かプレゼントというものもしたことがないのだ。
いかんせん、美神の欲しいのものは桁はずれのものが多すぎる。
そんな彼女が言った、劇場のそれ。
これくらいなら、と思う。
これくらいなら、なんとかなるだろうと、もちろん充分高いけれども。
そうして、少しづつ、一ヶ月間GSの仕事以外に、土木工事のアルバイトをした。
細身に見えても、力はあるし、というか美神のところで勤まるのだ。
大抵のところで勤まるにきまっている。
ただ、GS助手の上にというのは物凄くきつかったが。
それでも、チケットはなんとかとれたのだ。
もちろん、感激して、あんなことや、こんなことに、なればいいなあと思っていた。
けれども本当に、嬉しそうな美神の表情を見た瞬間─
まあ、いいかと思った。
あんなことやこんなことにならなくても。
喜んでくれてるのが、結局、笑ってる顔を見れただけで、嬉しいらしい─。

たいがいこのオトコも安上がりである。

おわり。

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