ザ・グレート・展開予測ショー

星たちの密会(7)


投稿者名:矢塚
投稿日時:(02/11/25)


 自身の冷却の為と、瀕死の重傷のためその場を動けない『甲』の右のハサミの

付け根に涼が接近する。巨大なハサミを保持する為、やはり付け根は太かった。

 しかし、早くこのハサミをそぎ落とし射撃スペースをもうけないと、『甲』の次の攻撃

が涼たちを襲うだろう。

「こんチクショウがっ!」

 涼の絶叫とともに、両肩にマウントされた砲身が交互に火を噴き、炸裂する。

涼は自分に被害が及ばないぎりぎりの位置で砲撃を続けたが、それでも熱せられた

空気が涼の機体を加熱していく。

 攻撃に反応し、『甲』も可燃ガスの散布を始めた。噴出されるガスが、辺りに充満する

前に涼の攻撃に反応し、大気中で燃え盛る。

「あと、一撃だ・・・」

 さすがに、ハサミの付け根もこの攻撃に耐えかねて、轟音とともに大地に落ちた。

 周囲はまるで、地獄の業火に包まれたようだ。

 『甲』の頭部がむき出しになる。涼は、連続射撃と周囲の高温の為にオーバーヒート。

体が動かず、その場に膝をつく。

「マリアッ!!」

 自分の損傷にはお構いなしに涼が通信を入れ、マリアが待機している方に根性で顔だけ

向ける。

 しかし、そこにマリアの姿はなかった。

「なっ?マリアッ!?」

 一瞬のパニックと、あらぬ思いが涼を満たす。

状況は全く理解できないが、涼のレーダーは上空十数メートルにいるマリアを捉える。

そちらを見ると、マリアが滞空場所からこちらにジェット噴射で飛んでくるのが見えた。

「ロケットアームッ!」

 ジェット噴射にガスが引火するのを恐れ、途中で噴射を切りアームを伸ばす。

 伸びたアームが『甲』の残った一本の触手をがっしり握ると、高トルクのモーターが

ワイヤーを巻き上げ、マリアを『甲』の頭部に引っ張っていく。アーム発射から数秒の出

来事だった。

「何してるっ!?マリアッ!!」

 涼の驚愕の叫びに、通信で返すマリア。

「ランチャーバレルが・先程の衝撃により・変形。弾頭発射には問題無し・但し・精密射

撃・不能。」

 そっけなさ過ぎる答えと、マリアの次の行動を察知し、涼が激怒する。

「まてっ!マリアッ!!俺がやるっ!!もう少しで動けるからっ!!マリアッ!!」

 涼の叫びを無視して、マリアが行動に移る。ランチャー保持に使っていた左手を離し、

『甲』の抉れた頭部に向ける。四角いコンパクトな銃器が勢いよくせりだし、ありったけ

の高速徹甲弾の猛射をあびせる。半分以上は跳弾しマリアを傷つけたが、少数の弾丸は

『甲』にめり込みひびを入れさせた。すばやく、左手をランチャー保持に戻す。

ランチャー先端を『甲』の抉れ、ひび割れた部分に向け全く躊躇することなくトリガーを

引き絞る。

「!!」

 涼の一瞬の叫び。それに答えるようにやさしく微笑み、マリアの口が何かを呟いたが

その声は聞こえなかった。

 瞬間的に生成されたプラズマが着弾箇所の周囲を、近接射撃をしたマリア共々破壊す

る。

 そして、数秒と待たずに『甲』の頭部は完全に破壊され、爆散した。



             つづく

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