ザ・グレート・展開予測ショー

魔人Y−5


投稿者名:NAVA
投稿日時:(02/11/25)





 妙神山にて。




 4人用家庭コタツを二人の女性と一人の女の子が囲んでいる。
 
 一人は神族の戦姫、妙神山の管理人である小竜姫。
 神界で権勢を振るう竜神族の一員でもある。
 
 一人は目のイヤリングを付けた独特のセクシーコスチュームに身を包む神族ヒャクメ。
 千里眼の持ち主である。

 一人は小学校高学年くらいの女の子魔族。御年1歳のパピリオ。
 将来、身体の某所が二人の姉・・・べスパとルシオラのどちらになるかを真剣に悩む少女である。

 本来、ここに居てもおかしくない魔族軍仕官ジークは里帰り中である。



 そんな3人がコタツに入りつつのんびりしていると、ヒャクメが急に遠くを見始めた。

 「あら?美神さんがこっちに向かってるのねー」

 驚いたように小竜姫が応える。

 「美神さんが?この時期に?この山に?」

 ありえない。普通、ありえない。
 まだ小降りとはいえ、雪の季節のこの山に美神令子が来ることなんてありえない。
 本物か?偽者なんじゃないか?まさか魔族の陰謀か?
 目は口ほどにモノを言う。
 正に今の小竜姫がこの状態だった。

 「じゃあ、ポチも来てるんでちゅか?!」

 パピリオがはしゃぎだすが、

 「残念ながら美神さん一人なのねー」

 ヒャクメは肩をすくめて応えた。

 「美神さんが?一人で?この時期に?この山に?」

 小竜姫的にはありえない事実のオンパレード。
 というか、美神令子を知る人間なら誰でも同じ反応をするだろう。

 「そうなのねー」

 「どうせお金の話なんじゃないでちゅかー?」

 納得して蜜柑の皮を剥き始める二人の神族と魔族少女。



 珍しく損得抜きで行動する美神令子に世間の風は冷たかった・・・。








 「分からない?!千里眼のアンタが?良いからマジメにやんなさい!!」

 小竜姫達の会話を知らない美神はとりあえず暖を取ってからヒャクメに横島捜索を依頼した。
 その回答に対する返事である。

 しかし何度やっても返事は芳しくない。

 「ヒャクメでも見つけられないとなると、魔界か神界にいる可能性がありますね」

 小竜姫は考え込むように言う。
 
 「魔界はともかく、神界が地上で何か行動を起こせば私達の耳に入るはずなのねー」

 ちなみにパピリオは外で雪だるまを作ってたりする。

 「他に考えられる可能性としては・・・霊的死角って奴?」

 呟く美神にヒャクメが応える。

 「人界でも何箇所かは私でも見れない場所があるのねー。厳重に結界を張ってある場所とかは特にそうなのねー」

 「ま、とにかく私達も神界関連で横島さんを探してみましょう」

 小竜姫が無難な線で纏めた。






 「ところで、さっき話したわよね?GS協会の件」

 美神は横島捜索の協力を取り付けたことに満足して、もう一歩踏み込んだ話題を口にした。

 「ええ。確かに美神さんの推測は否定しきれません」

 小竜姫は浮かない顔で『しかし・・・』と続ける。

 「あくまで推測の域を越えません。明白な証拠がないと神界からアプローチすることはありえません」

 「横島君が行方不明!これだけじゃ不満だってーの!アシュタロス戦の真の英雄でしょうが!」

 美神が憤る。本気3割、演技7割といったところか。
 基本的に神界は人界に不干渉の態度だ。
 美神としては、GS協会と喧嘩するには協力な味方が欲しいところ。
 この際、味方は強力であれば強力であるほど良い。 
 そこで多少コネがある神界に目を付けたわけだが・・・。

 「そのことは重々承知しています。私個人としては、ヒャクメもそうでしょうけど美神さん達の味方です」

 同意を求めるようにヒャクメに目をやる小竜姫。

 「そうなのねー。でももっと上の神(ヒト)を説得しないと駄目なのねー」

 
 『・・・・・・・・・・・・』


 それっきり3人は沈黙する。
 心情的には横島を探す、或いは救いたい方向で定まっているのだ。
 ただ、そのための妙案が無い。



 「フム。存外に頭の固い奴らじゃ」

 唐突にそう告げながら現れたのは小竜姫の師である斉天大聖。ウッキー!

 驚く3人だったが、斉天大聖が言葉を続けるので黙って聞き入る。

 「横島はアシュタロス戦最大の功労者である。これは神界・魔界ともに周知の事実じゃ」

 さらに続ける。

 「そして横島が行方不明。彼は文珠使いという神界・魔界でも珍しい特殊能力者じゃ。その力は知れ渡っており、それに一部の過激な魔族、あるいは神族が目を付けた可能性がある。デタントを守る意味でも神族・魔族両方で編成された調査隊の設置を上申する。こんなところかの」

 ここで一息付いて3人の顔を眺める。

 3人の顔に徐々に理解の色が広がってくる。

 「あるいは調査の結果、魔族でも神族でもなくGS協会が何かをしている証拠が見つかるかも知れんのう・・・」



 つまり斉天大聖はこう言っているのである。

 『神界・魔界に証拠を提出するんじゃなくて、逆に探させろ』

 と。 






 神界の協力を得ることは出来なかったが、横島捜索に関してはきちんと手を打てた。
 美神としてはまずまずの戦果ということで大人しく妙神山を後にした。







 
 「ところで老師。いつからいらしたんですか?」

 「驚かせようとして隠行術で・・・ほぼ最初から・・・誰も気付いてくれなんだ・・・」



 小竜姫が斉天大聖から猛特訓を課されることになったのは別の話。


 

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