ザ・グレート・展開予測ショー

魔人Y−4


投稿者名:NAVA
投稿日時:(02/11/24)


 美神令子は不機嫌だった。
 ここ数日ずっと不機嫌だったが、それもどんどんエスカレートしているようだ。
 原因はストレス発散用の生きたサンドバッグ横島の行方が知れないことと、
 それにまつわるGS協会の不透明な動きにあった。

 タマモの策に嵌って(薄々は感づいてたりする)以来、美神は持てる人脈・情報網の全てを使って横島の行方を洗った。
 



 『文殊に限らず、研究内容を盗まれたりして悪用されると困る』
 『最新鋭の兵鬼の開発とかもしていて、研究所の場所を教えることは出来ない』
 『研究協力への謝礼(ちなみに億単位)は上司である美神令子へ』



 色々言われて、結局は送り出すことになったが、所在地を確かめなかったことを今更ながら後悔する美神であった。
 ちなみに、最後の一言が彼女の中の何かを刺激した結果であることは言うまでもない。
 


 「そうね、オカルトGメンの力も借りておくか」


 そう呟いて、美神は母美智恵に連絡を取ることにした。






 『怪しい』


 調べれば調べるほど怪しい。
 例えば、主任研究員だと自己紹介してきたヤマサキヨシオ。
 あの研究者というよりは、どっかのサラリーマン風のニヤけた中年男!
 美神は彼の名前など聞いたことも無い。
 一応、業界の噂話とかで有名な研究者の名前くらいは知っている。
 しかし、調べてみるとヤマサキヨシオという研究者は無名である。
 文殊の研究というGS協会の肝いりの仕事を任されているのにである。


 この場合、この事態で、無名であるということは大まかに言って二つの解釈が成り立つ。

 1つは無能であるということだ。
 研究者として無能だから無名である。当然の帰結だ。

 1つはその研究・業績が表に出せないモノである場合だ。
 そうだった場合、横島君のクローンぐらいは作り出すかも知れない。
 


 どう希望的観測をしても、美神には後者であるようにしか思えなかった。
 それを傍証するようにGS協会の態度も不鮮明ではないか!
 

 もしかしたらその筋、裏の業界では有名な人物なのかも知れない。
 後で厄珍にでも聞いてみよう。






 さらに数日後。
 朧気ながらも分かって来たことがある。
 1つはヤマサキヨシオという研究者は公式には存在しない。
 にも関わらず、文殊の研究という命題は確かにGS協会から発せられたモノである。
 1つは最後にヤマサキと横島君が目撃されたのは、連れて行かれた日の東京の成田空港だ。
 そこで香港行きの飛行機に乗って、後は不明である。

 そこからどう捜索の網を広げようか。
 美神が思案していると、人口幽霊一号が母美智恵の訪問を告げた。





 「横島君の件で何か分かったの?」

 それはなさそうだなと思いつつも美神はそう切り出した。

 「そのことで悪いニュースがあるの」

 美智恵はおキヌの入れた紅茶を片手に語りだした。

 「前に横島君の件でアンタと交渉した協会のお偉いさん、覚えてるでしょ?」

 「ああ、あのいけ好かない奴ね」

 「そう、そのいけ好かない彼だけど。行方不明よ」

 ブッ!

 美神は紅茶を噴出した。
 今回のGS協会の一連の事情を知ってそうな第一目標をいきなりロストしたことになる。

 汚いわねぇとでも言いたげに眉を顰めながら美智恵は続ける。

 「私も事情を聞いて、横島君失踪にはキナ臭いものを感じたわ。で、そっち方面から調べようとした矢先のことよ」

 思わず美神は美智恵の顔を見つめた。それが指すことはつまり・・・。

 「探られると困るような裏がある・・・ということね」

 美智恵はタメ息を吐きつつ応えた。

 「そういう解釈が成り立つ余地は大きいわね。令子・・・アンタ派手に動き過ぎたのよ」

 だから相手は警戒態勢を強めたのだと美智恵は告げた。







 美智恵が帰った後、美神は自室で思索に耽っていた。
 おキヌ達は美神の真剣な様子に邪魔をしてはいけないと静かにしている。

 GS協会の不透明さは今に始まったことではない。
 思えばアシュタロスの乱の際。
 美神の身体に収まっていた魂の結晶がアシュタロスの野望に必要だと判明した時だ。
 GS協会は美神を暗殺して事を収めようとした経緯がある。

 美神自身、それが他人事なら率先してそいつを殺すところだが、自分が死ぬくらいなら世界も一緒にという発想の持ち主である。
 自殺という選択肢はどこにも存在しない。

 ここで大事なのは美神が似非ジャイアニズムの信奉者であるということではなく、
 GS協会が場合によっては美神を暗殺するために準備を万端に整えていたということである。
 幸い、その時はアシュタロスの侵入と干渉で無事に済んだが、GS協会が時には平気で冷酷になるということを端的に現している。


 
 『文殊』


 確かに素晴らしい能力だと思う。
 複数の文殊を組み合わせれば可能性は無限に広がる。
 その気になれば時間移動すら出来るはずだ。
 少なくとも、今現在でも私と横島君が組めば時間移動も出来る。
 協会が文殊を解明をしたがる気持ちもわかるけどね・・・。

 だけど、犠牲になるのは横島君かぁ・・・・。








 そうね。
 横島君は私の丁稚。当然、生殺与奪の権利は私にある。






 「GS協会と喧嘩・・・ぞっとしないわね」





 そう呟いて彼女は動き出した。





 彼女の名は美神令子。
 偶には損得抜きで善行をする、ちょっぴり素直じゃない女の子。







 


 向かうは妙神山。
 ヒャクメに出陣願おうか。


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ヤマサキヨシオ登場。
一人でもニヤリとした人がいれば私的にはOK(謎

というか、公開してない6話まで出来てますけど、横島君が未だに出てこない。
これから書く7話で登場・・・の予定なんだけどな。分からず(ぉ
常に話題の中心ではありますけど。

あと、ついさっき決めました。というか諦めました。
この作品にコメディはあまり期待しないでください。
私にその才能は無い(鬱

>kitchensink様
毎回、丁寧な感想及び疑問。ありがとうございます。
まだ話が始まったばかりなので疑問・違和感が生じるのは当然のことです。
その理由全てに対して納得していただけるかどうか自信がありませんが、次第に明らかにしていくつもりです。
とはいえ、最終的にトータルで納得いただけるように努力します。


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