ザ・グレート・展開予測ショー

星たちの密会(4)


投稿者名:矢塚
投稿日時:(02/11/22)

 怪獣の積まれた搬送船は、太平洋沖に落ちるようにセイリュートがコントロールを奪っ

ていた。

 指定された場所は、太平洋側のとある海岸線。広大な場所とは言いがたいが、

周囲に民家は無く、砂浜の終わりからは雑草の生い茂る荒地がそれなりの範囲で

広がっていたので問題は無さそうだ。足からのジェット噴射を

押さえて、二人は海岸線からおよそ1キロの地点に降り立つ。

「そのポイントが目標の進行方向上になる。接触までおよそ15分だ。これよりデータを

送る。」

 涼とマリアにデータが転送される。それを読み込んだ涼が、疲れたように言う。

「つまり俺たちは、海からあがってくる野球場くらいでかいカブトガニの化けもんを始末

しにゃあならん訳だ。

そのうえ甲羅はセラミック複合素材並み、一番薄いところで50センチ厚。体内には可燃

の液体が体積の5分の1以上詰まっている歩く火薬庫を、被害の少ないようにだ!」

 最後の方では流石に切れる涼。おかまいなしに、セイリュートが続ける。

「そうだ、この怪獣については私のデータベースに収録されてないのでスキャンの結果だ

けだ。恐らく、体内の可燃液を使い火炎放射の攻撃をすると思うんだが。

カナタ様の『抜刀』は引火の恐れがあるし、何より衛星軌道上から地上の一点に正確無比

な一撃を当てるのはカナタ様では不可能だ。まあ最悪どうしても無理なら、

衛星軌道からわたしが有質量弾を直撃させればいいが、それでは半径5キロ程度のクレー

ターが開いてしまう、そうなってはガードロイヤルの減点になる。」

 人事のように言うセイリュート。

「どうしてそう、強力でおおざっぱな兵器しか積んでないんだっ!・・・・・・

ともかく、頭部と思われる箇所を集中攻撃し仕留める。被害の少ないようにだ!」

「そうだ、それがベストだろう。」

 続けるセイリュート。

「それと今、マリアどの用の武器を射出した。もうすぐ、そちらにつく筈だが。」
 
 セイリュートが言い終わるやすぐ、二人の目の前に3メートルほどの四角い箱が落下し

てきた。 着地の寸前に逆噴射がかかり、見た目の質量とは思えないほど静かに大地に転

がる。

「・・・衛星軌道から落としたのか・・・」

 なんとなしに、涼は寒気を覚えた。

「マリアどの。こちら、セイリュート。あなた用の武器を送った。使ってくれ。生憎、照

準用のドライバーをあなたに合わせて組んでいる時間が無い。照準作業はそちらでやって

くれ。」

「サンキュー・セイリュートさん。」

 マリアが答え、箱を開ける。中からはライフル程度の全長の銃と弾頭が10数発。

 しかし、そのバレルは大人の腕より倍近く太く、弾頭も拳大だった。

「ナ・リタ軍正式採用の『プラズマ弾頭弾』とそのランチャーだ。照準用システムは

はずしてあるから、地球上の小銃と同じように扱ってくれ。」

 涼のほうはナ・リタの情報が記憶としてあるので、すぐに了解する。

「いいかマリアどの、その弾頭はマーキングした目標に着弾すると同時に小さなプラズマ

を発生、着弾箇所から直径50センチほどを蒸発させ、さらにその外周部分を余熱で焼き

尽くす。着弾箇所からおよそ直径1メートルはあらゆる物質を破壊するに足る。射程距離

は600メートル。友軍がいないのをよく確認してくれ。マーキングはこちらで設定済み

だ。当てるだけでいい。」

「オーケイ。これより・照準のセットを始めます。試射は・出来ますか?」

「ああ、黄色でペイントされた弾頭だ。」

 マリアは、ランチャーの説明を聞き終えると次の作業に入る。

「これより・機体機動制御を戦闘用に・最適化します。全非戦闘用アプリケーションを終

了・戦闘用OS『パラディン』にて再起動。・・・再起動中・・・」

 マリアから起動音が漏れ、瞳の色が輝きを失う。しばらくその状態が続くのを、涼は複

雑な想いで見つめる。このような、ちょっとした行動がマリアをアンドロイドなのだと再

認識させる。

 いきなり瞳に虹彩が戻り、マリアの再起動が完了した。そこに立っているのは、容姿は

まったく変わらないマリアだったが、何か違う。そう、わずかにあった人間らしさを全て

そぎ落としたような気配が漂っている。

 マリアの変貌に少し悲しいものを感じ、何か言いたそうな涼だが時間がなかった。

 交戦までは、あと10分。                             
                  つづく

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