ザ・グレート・展開予測ショー

温かい想い(その14(B))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(02/11/20)

両手を広げるルシオラ(ソウト)・・・

「何の真似だ!!?」

『意識が戻ったの!さぁ今しかないわ!早く!』

本当にルシオラの意識が戻ったのか、いや、そもそもルシオラの自我などなかったかもしれない
それでも横島はルシオラの言うとおり・・・貫くために霊波刀に力を込める

『さぁ・・・・・あなたが・・・・・・・・・・・・・・・あなたが生きたいならもう一度私を殺して・・・・・・・』

「!!」

『出来るわよね・・・一度私を見殺ししてるんですもの・・・』

ルシオラの表情がまた一転する・・・まるで無邪気に蝶の羽をむしるような子供の笑顔・・・

『ねぇ・・・どうして・・・?どうして・・私を殺したの・・・?』

「やめろ!ルシオラの声で言うな!!」
「横島クン!聞いちゃ駄目!!」

美神が懸命に横島に叫ぶが、横島の耳にはもはやルシオラの声しか聴こえなかった

『私はあなたのために命を捨てたのに・・・・どうして私を助けてくれなかったの・・・・』

「違う!俺は!助けたかったんだ!!」

『私は死んでしまったのに・・・どうしてあなたは生きてるの・・・・私のことを愛してくれてたんじゃないの・・・・』

「俺は!俺は!ルシオラを助けたくて!」

『でもあなたは生きている・・・・・・私を見捨てたのに生きている・・・・私を不幸にしたのに生きている・・・私を殺したのに生きている』

「やめろ!やめろ!」
「横島クン!悪魔の言う事なんて信じちゃ駄目!!」」
「横島さん!しっかりして!」

『どうして死んでいないの・・・一緒に死んでくれれば、よかったのに・・・・そうよ・・・死ね、死ね』

ルシオラ(ソウト)が冷たい視線を横島に向ける。その視線と横島の視線が交わった・・・・

『死ね、シネ、しね、屍ね、死ね、シネ、しね、屍ね、死ね、シネ、しね、屍ね、死ね、シネ、しね、屍ね
 死ね、シネ、しね、屍ね、死ね、シネ、しね、屍ね、死ね、シネ、しね、屍ね、死ね、シネ、しね、屍ね
 死ね、シネ、しね、屍ね、死ね、シネ、しね、屍ね、死ね、シネ、しね、屍ね、死ね、シネ、しね、屍ね 
 死ね、シネ、しね、屍ね、死ね、シネ、しね、屍ね、死ね、シネ、しね、屍ね、死ね、シネ、しね、屍ね』






「やめろ!やめろ!!やめろっ!!!やめてくれえええええええええええええぇぇぇぇぇぇえぇっ!!!!!!!!!」







横島は絶叫を挙げると、その場に膝を着き頭を抱えて丸くなる。
ガタガタと体を震わせ、全てから逃げるように目を力強く目を閉じた。

『あら♪精神崩壊くらい起こしちゃったかしら?私ってば名演技?』

何に満足したのか軽い口調で、おチャラけるルシオラ(ソウト)。その態度に






プチ
プチ



何かがキレる音が二つした。




「よくも!よくもぉぉ!!横島さんをおおおーーー!!!!!!」

普段のおキヌから考えられない怒号が発せられる。
頭に血を上らせたおキヌは吐血のことなど気にせずネクロマンサーの笛を吹こうとする・・・だが

「美神さん!!」

その笛は美神によって押さえられる

「今はまだ駄目よ・・・もう少し待って」

「でも!でも!横島さんにここまでされて!!」

「プロなら現状を見なさい!!!」

「!!」

美神の怒鳴り声にビクっと体を振るわせた

「救援が見込まれない現状で、ネクロマンサーの笛と・・・横島クンの力は絶対不可欠よ・・・・
 ・・・・・だから・・・あいつは私にまかせて、おキヌちゃんは横島クンを正気に戻して」

「美神さん・・・」

「そういうことよ・・・・・・・・じゃ、後は頼むわよ!!」

美神は軽くウインクを一つすると
その場におキヌと横島達を残し、神通棍を構えルシオラ(ソウト)の前に立った。

『あら?あなた一人で戦うの?・・・ふふ、でもあなたは冷静みたいだから油断すると危ないかしら?』

「おあいにく様・・・・」

神通棍に霊力がこもり、更に神通鞭へと変化する

「私もとうにブチ切れてんのよぉぉぉぉーーーーっ!!!!」


ズガアアアアアアアアアアアアアア!!!!



美神の神通鞭が地面を激しく削った。













「横島さん!横島さん!!しかっりして下さい!!」

「俺は!俺はぁ・・・!!」

おキヌの呼び声にもガタガタと震えるだけの横島

「ルシオラさんがあんなこと言うはずないですよ!正気を取り戻して下さい!」

おキヌは懸命に励まそうと横島の肩を揺らし叫ぶ。本当はネクロマンサーの笛の使いすぎで、
声を出すのもつらかった・・・それでも・・それでも横島の力になりたい・・横島を支えたい・・
と願いながら・・声をかけ続けた。

「俺はルシオラを殺したんだ!この手で!ルシオラを!あんなにいい奴を!!
 ・・・・そうだよ・・・ルシオラの言うとおり、・・俺が死ぬべきだったんだ・・・
 俺なんか生きてたって周りの人たちが不幸になるだけなんだ・・・俺が、俺が死・・」














パシイイイイイイイイイイイイイイイィィっ!!!!!!









乾いた音が樹海に響いた。
それと同時に横島は自分の左頬が熱く、痛く感じるのが分かった。
そして目の前の少女が涙の瞳で自分を叩いたということも。

「死ぬべきだった?周りのみんなが不幸になる!?」

おキヌは横島の襟首を掴んで、自分の顔に近づける

「ふざけないでっ!!!横島さんの命がそんなに下らないんですか!?
 ルシオラさんが助けた横島さんの命はそんなに価値がないんですか!!?
 横島さんが生きてて、誰かが不幸になったんですか!!!?」

普段のおキヌを知っている者が、今の光景を見れば目を皿のように丸くしているだろう。
それほどまでに、おキヌは激昂していた。

「横島さんが一番ルシオラさんをバカにしてるじゃないですか!!
 みんなをバカにしてるじゃないですか!!!
 ルシオラさんも!美神さんも!シロちゃんも!タマモちゃんも!みんなも!・・・そして私も・・・」

おキヌは横島の襟首からゆっくり手を放す。
そして・・・そっと横島の右頬を撫でる・・・

「みんな・・・みんな・・横島さんに生きて欲しい・・・一緒にいて欲しいって願ってるのに・・・
 お願いですから・・・そんな悲しいこと言わない下さい・・」

「おキヌちゃん・・・・」

「そんなの・・・そんなの、そんな横島さんは・・・」

おキヌの目から涙が溢れる・・もはや涙で視界がぼやけてハッキリ見えない・・・それでもおキヌは心の底から叫んだ。


「そんな横島さんは私の大好きな横島さんじゃない!!」

「・・・・!」

「う・・・グス・・・ううっ・・・・・・・・うわあああああぁぁぁあああんんんん・・・!!」

感極まったのか・・・おキヌは横島の胸に顔を埋(うず)めると嗚咽を漏らした。
横島の胸が少女の温かい涙で濡れていく。
横島はそんな少女の行動に少し戸惑い表情を見せるが・・・やがて「くっ」と口唇を噛んで天を仰いだ

(俺は・・・・・俺は・・・・何てバカなんだ・・・・一人で悲しんで、一人で自分を追い詰めて・・・
 そのくせ・・・こんなに、こんなにやさしい娘(こ)を追い詰めてたんだ・・・)

横島はそっとおキヌの肩に両手を置いた

(小さい・・・)

小さい、小さい肩を震わすおキヌ。

(こんな・・・こんな小さな肩で小さい体で俺を、俺達を支えてくれてたんだ・・・・)

横島はしばらくおキヌの肩を抱きしめると、ポンポンとおキヌの頭を撫でると力強く立った。

「ごめん・・・おキヌちゃん。俺、もう大丈夫だから…本当にごめん」

「謝らないで下さい!・・・・・・・・・・謝るなら・・・・・お詫びとして今度デートして下さい」

ニコっと笑みを浮かべ、おキヌが言った。
その一言に横島からも軽い笑みがこぼれた

「・・・・・ぷっ・・・ああ、了解、了解!じゃ、俺も行ってくるわ!!」

「気をつけて下さいね」

横島はコクンと頷くと脱兎の如く走り出した














『ふふ・・・ここまでね』

「かはっ」

倒れている美神を6mほど離れたところから、見下ろすルシオラ(ソウト)

『よくやったわ・・・・あなたも。本当はさっきの「電力変換技」の反動で体がボロボロなんでしょ?
 だから必要以上の霊力は使わなかったし、霊力をあまり使わない道具を使用してたんでしょ?』

くすくすと笑みを浮かべる・・その表情はまるで虫ケラを見るような冷たいものだった。

『それなのに神通鞭使ったり無茶して・・・・・・・・。それほど、ヨコシマのことが好きなのね・・・ふふ、少し妬けちゃうわ♪』

「はん!冗談!私は金のためにしか動かないわよ!!」

ボロボロなのにピっと中指を立てて強がる美神。

『そう・・・・あなたの強情さもここまでくると尊敬に値するわ・・・・でも・・・もう死ね!!』





ズガアアアアアアアアアアアアア!!!!!


ルシオラ(ソウト)から放たれた一撃が美神に迫る。
美神は自分の肉体の状態と、今の現状を照らし合わせる

(霊力はもうほとんどなし・・・あばら2本と、左腕の上腕骨折か・・・裂傷、打撲が・・・数え切れないか・・・
 ・・・・・もう避けれそうにもないわね・・・・)

霊波砲の光が美神の体を照らす。
今までの生きてきた人生が次々の脳裏に浮かぶ

(・・・・・・走馬灯か・・・そいや、南極でも見たっけ・・・)

かつて、南極でアシュタロスに殺されかけたときの記憶が思い浮かぶ

(・・・あのときは横島クンと一緒だったわね・・・そう思うとあんま恐くなかったなぁ・・・)

死に直面しながらもかすかに笑みをこぼす

(・・・・・・・・一度くらいデートしてやってもよかったな・・・・)




ズガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!ドガアアアアアアアアアアアアア!!!!!!




眩い光が美神を飲み込んだ瞬間、大爆発起きた!!






間もなくして、もうもうと猛々しい爆煙が樹海を覆い尽くしていった・・・・・・・・・・・












その15に続く

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa