ザ・グレート・展開予測ショー

ある不幸な物語


投稿者名:NGK
投稿日時:(02/11/19)

―――この感覚を忘れていたのは、いつの頃からだろうか。
「ばっちり完成じゃ・・・お主の要求は全てかなう」
僕はゆっくりと手を頭部から離した。
「”これ”は頭部と”完全”に一体化する。なんと言っても―――・・・」
”これ”をつくりあげた老人は得意げに語り始める。
しかし、それは僕の耳に入ってなかった。
その時の僕は喜びで胸がいっぱいだったから。
「・・・なんじゃ?聞いておらんのか・・・?折角、説明しておるのに・・・」
「え・・・?ああ、いいよべつに。これは依頼料だ」
そう言うと黒のアタッシュケースを老人の側に従っている女性に渡した。
中には両手ではとても数え切れないフクザワユキチが入っている。
それほどの価値が”これ”にあるはずであった。
「・・・本当に、これだけもらってもよいのか・・・?」
ここ百年、大金を目にしたことの無い老人は疑心暗鬼で尋ねた。
「ああ。これからの輝かしい将来のことを思えばこれくらいの額は当然さ」
―――そう、これからは何も恐れることは、もうなにも無いのだ。


「・・・結局、説明を聞きませんでしたね・・・」
安アパートの部屋の何処に隠れていたか不明だが、黒いローブ風の服を身につけた魔女風の女性がぼそっと言葉を発する。
「・・・うむ・・・使用上の注意じゃったんじゃが・・・」
もし、なにかあって「金を返せ」・・・と言われては困るのだが。
「まぁ、先輩ならどんなことがあっても大丈夫ですよ」
どちらかと言えば魔女風の女性の言葉尻からは何か起きてほしいと願っているようである。
「それはそうと、お主は金は欲しくないのか?”あれ”は、正直ワシだけの力ではできんかった」
「いいえ・・・いいんです。困っている人を助けるのは”魔女の努め”ですから」
心の底からそう言っているだろうと思えるセリフだった。
―――普通の人間であったら。
だが、老人にはどこか楽しんでいるようも思う。
長い間生きてきた経験がある種の疑惑を思案させる。
「(まぁ、ワシには何であろうと興味はないがな・・・)」
とりあえず老人の思案していることは、長い間たまった家賃を返済できるということだった。


アパートを出るとくもりだった天気は晴れていた。
まるで僕の心を表しているようである。
「・・・ふっふっふ・・・」
風が強い日は怖かった。
接着剤を使用した時もあった。
自分の不幸を呪ったこともあった。
―――なぜ、若い美空で―――と。
だが、それも終わりである。
エクトプラズム(原料)をベースにつくられた”これ”は頭を揺らしても掻いてもまったくビクともしない。
それどころか頭皮との一体感を感じる。
そう考えると、心は晴れやかであった。


「・・・なに馬鹿笑いしてんだ?」
ふと、気がつくと目の前にバンダナをハチマキ風に身につけた少年が僕の顔をのぞき込んでいた。
先程までの晴れ晴れとしていた心に暗雲がたち込める。
この少年は、主人公(男)の天敵とも言える間柄であり、同じ女性を巡って何度も争ってきた恋敵でもある。
「ふん・・・君には関係の無いことだ」
そう言うと何処から取り出したのか霊剣を構えた。
「令子ちゃんは君には渡さない・・・ということだ」
そんな話はしていないのだが、少年は”令子”という言葉に反応してか霊刃刀を発動し、構える。
何処と無く、今日の主人公(男)は絶好調であった。
まったく、恋敵にして宿敵にして天敵の目の前の少年に負ける気がしない。
「・・・「爆」」
少年は、文珠「爆」を発動させるとその場を立ち去ろうとした。
普通ならあの男は吹っ飛んでいるはずであり、後は何となくいい気になってその場を後にするだけであるはずであった。
だが、なにかしら「爆」によって生じた煙の中で光輝く何かがあった。
「(・・・なんだ・・・?)」
何か不安に駆られながらも少年は光に向かい・・・そして、見た。
フィットしていたカツラが吹き飛び、むきだしの頭皮が露わになっている西条の姿を。



『エクトプラズム・カツラの使用上の注意:このカツラは頭皮にフィットし錯覚を起こしがちですが、カツラはカツラです』


―――その後、西条が横島に対する態度が完全に変化した。
なにか西条の弱みでも握ったのではないかと美神除霊事務所の仲間たちは疑ったが横島はとぼけるばかりで喋ろうとはしない。
その後、横島の口からカツラの件が出ると仲間たちは信じなかったが、
鼻の利く者が西条のカツラを形づくっているエクトプラズムを発見し、そして・・・


「う、うそ・・・」
美神は、西条の”真”の姿にただ、呆然と立ち尽くした。
「ち、違うんだ令子ちゃん!!これには深いわけが・・・!!!」
そして西条は・・・(以下略)。


――――――完――――――

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