ザ・グレート・展開予測ショー

星たちの密会(2)


投稿者名:矢塚
投稿日時:(02/11/17)

 マリアと名乗るアンドロイドと落ち合う場所を決め、涼は通信を終える。

「今の間に、マリアの調査が終わった。これから、データを送る。」

「いや、いい。会うまでが楽しいんだ。」

 セイリュートの申し出を涼が断る。

「そういうものか?」

 いぶかしむセイリュートに、涼は苦笑する。実際のところ、マリアという名と声、それ

にアンドロイドというキーワードで記憶の検索をして涼にも相手のことは少しわかってい

た。

 『マリア』:ゴーストスイーパーDrカオス作製による、世界唯一の除霊用アンドロイ

ド。

 これだけだ。後は、想像するしかない。顔は、格好は、髪の色は、肌の色は、

それが楽しい。データを見れば全てわかるし、通信だけでいい。会う必要は無い。

 しかし、会って直接話してみたい。相手もそれを望んだ。この感覚は、セイリュートに

は理解できないだろうし機械にも不可能だろう、だからこそマリアが会いたいと言った時

に涼はうれしかった。相手にも人間の心があるのではないかと思って。

 マリアとは、コンタクトをとった場所からさほど離れていない公園で落ち合うことにし

た。一歩一歩に心が弾み、公園が近づいてくる。



 公園にはまだマリアは来ていなかった。ベンチに座り、マリアを待つ。マリアにはセイ

リュートがマーキングをしていたのでいつでもその位置がわかったが、涼はその機能を切

っていた。

 涼のほうに近づく足音が聞こえ、そちらを立って向く。目の前には一人の少女がいた。

 赤いはね上がったガラス細工のような髪、そこから出ている先の丸いアンテナ、色白な

肌、黒い革の様なハイネックのコート、袖の無いコートから出た細い腕、白い手袋、サイ

ドゴアのブーツ。

 そして、瞳。透き通るような輝きをした瞳。人形のようでいて違う、意思の宿りを感じ

させる瞳。

 ああ、もしかしたら彼女には心があるのかもしれないという思いが涼を包む。データだ

けでは得られないものを感じ取り満足する。

「あらためて、はじめましてだな。俺は星野涼。」

「はじめまして・私の名前は・マリアです。星野涼さん。」

 ぎこちないしゃべりのマリアに涼は言う。

「ああ、俺のことは涼でいい。俺もマリアって呼んでいいか?」

「イエス。ジェンダーを男性に設定・敬称登録します。登録終了。ミスター涼でいいです

か。」

「いや、そうじゃなくて呼び捨てでいい。」

「イエス。登録変更。変更終了。・・・涼で・いいですか?」

 やさしく、少しうれしそうな雰囲気でマリアが尋ねる。

 今まで一度も敬称を省いた事はなかったのだろうか、涼はなんとなくおもしろくなかっ

た。

 やはり、マリアは心の無いロボットなのかと思う。でも、違うかもしれない。なぜな

ら、呼び捨てを頼んだときうれしそうな気配があった。


 それから二人は、時間を忘れて会話を続けた。ほとんどは、涼の身の上話と質問にマリ

アが答える内容だった。セイリュートが急遽組んでくれた通信プログラムを使えば、短時

間に言葉を使わずに終わったが涼はそれをしなかった。マリアの反応をじっくりみたかっ

たからだ。 

 ただ、会話の中に『ソーリー。その質問には・機密保持上・答えられません。』という

フレーズが度々出て、涼をいらつかせた。

「そうかー、GSの仕事ってのもなかなか大変なんだなあ。今度、見学させてくれよ。」

「イエス・涼。マリア歓迎します。」

「俺は宇宙人と戦い、マリアは悪霊と戦う。似たもん同士の戦う相手が

正反対とは、冗談きついぜ。仕方ないとはいえ、過酷な人生だな。」

「涼は・戦いは・嫌いですか?」

「うーん、まあ、そうだなあ・・・」

 真剣に悩む涼。戦い自体は好きな方なのだが、そんなことを自分で言っては

救いようが無い。

「マリアはどうなんだ?」

「マリアは・無益な戦闘を・回避するよう・プログラミングされて・います。

しかし・意味ある戦いには・一切の妥協は・ありません。」

 硬い答えに、苦笑する涼。二人の会話は、途切れることなく続いた。


 結局は、涼の当初の目的はあまり成果がなかった。サイボーグになってしまった者の

苦悩を分かち合い相談する相手には、マリアは向いていなかった。彼女は初めから

アンドロイドとして、マリアという存在として作られていたからだ。

 でも、まあいい、今日は楽しかったしロボット仲間というべき存在も得られたと一人満

足する。ちょくちょく会いに行こうとも思う。

「いけねえ、もうこんな時間か?そろそろ帰らねえと。」

「・・・あの・・・」

 体内時計を確認した涼にマリアが、ゆっくり言う。

「・・・涼・よろしければ・今日からマリアと・友達に・なってくれますか?・・・」

 ぎこちないしゃべり方が、さらにぎこちなくなっている。

「は?何いってんだ?とっくにダチだろう?俺はそのつもりだぜ。」

 呆れて言う涼に、マリアが答える。

「サンキュー・涼。マリア・涼と友達です。」

 マリアが微笑する。

 しかし、その微笑は涼には満面の笑顔に見えた。

 楽しかった時間は、セイリュートからの通信により突如として破られる。

「リョウどの、プライベート中すまないが、ガードロイヤルの仕事だ。」


               つづく

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa