ザ・グレート・展開予測ショー

星たちの密会(1)


投稿者名:矢塚
投稿日時:(02/11/16)


 仕方なかったとはいえサイボーグとして生まれ変わり、宇宙人の侵略を2件立て続けに
解決し、セイリュートとカナタにうまく丸め込まれ機械の体で生きていくことを余儀なく
された男。

 星野 涼。

 昨日のことを思い出しつつ、機械仕掛けの小学生ボディーに一人苦笑しながら街を歩いていた。
 今日は機体調整と各種機能のレクチャーも兼ねて、一人で徘徊している。
「リョウどの。ボディーのマッチングはどうだ?こちらからモニターしている限りは問題なさそうだが。」
 衛星軌道上のセイリュートから、涼の頭の中に直接声が届く。
「・・・ああ、体に変なとこはないが。しかし、感覚はやっぱり変だ。」
 一人ふてくされたように街を歩く涼は、セイリュートに答える。
「変だな、こちらからモニターしているが体機能、各種アプリケーションに異常はないが・・・具体的にどのように変なんだ?」
 真剣みをおびた声が頭の中に響く。涼は思わず、ため息をつく。
「いやいい、これは俺の問題だ。」
「??」
 セイリュートにはかまわずに歩き続ける涼。こればかりは、セイリュートでも解決は
出来ないだろうと思う。彼女に限らず、今の自分の気持ちがわかる者などほとんどいないだろう。
 例えば、今の会話からして変なのだ。頭の中に直接相手の声が聞こえ、誰からの通信かすぐに判別できる感覚、訓練したわけではなくいきなり昨日から違和感なく使いこなしている、この感覚。
 まったく違う体に成り代わったのに何の苦労もなく使いこなし、これこそが本当の体であって今までの肉体こそが仮のものであったのではないかという錯覚。いや、かつての記憶こそが偽物であり今の記憶は作られたものではないと、言いきれるだろうか?
 かつてのSF映画の主人公たちの多くが突き当たった壁に、涼もまたぶちあたり悩んでいた。
 とめどもなく疑問が生まれ、それらを自ら否定していく作業を繰り返す。ただ一つ確実であろうこと、『俺は星野涼だ』それだけの想いを頼りにして。
 そんな作業に心を奪われつつも、彼の足取りはしっかりしていた。歩行補助の機能がしっかり働いてくれていた。そんな彼の頭に警報が鳴り響く。
「警告。前方900メートルニ正体不明ノ物体ヲ確認。コレヨリ、甲ト呼称。甲ノ武装ヲ確認・・・」
「リョウどの、武装した非人間タイプの物体を確認した。」
 頭の中の警報にセイリュートが割り込んでくる。
「なんだ?また、宇宙人か?だったら、ちょうどいいうさばらしになるな。」
「今、確認作業中だ。人間タイプのアンドロイド。」
「警告。甲ノ接近ヲ確認。接触マデ800メーター。」
「おい、どうすんだ?やっちまっていいのか?」
「待ってくれ、今照会している。無用な戦いなら避けるべきだ。それに向こうもこちらに気づいたようだが、武装のセーフティは解除されていないようだ・・・よし、コンタクトを取ろう。少し待ってくれリョウどの。」
 セイリュートは、あらゆる通信手段を使い目標との接触をはかる。その間にどんどん目標との距離が近づく。
 涼の頭に声が流れてくる。それは硬質な女、いや、少女というような声だった。
「そちらからの・通信を・確認しました。そちらからの・攻撃がなければ・こちらに・敵対の意思は・ありません。」
「・・・と、いうことだが。どうするリョウどの。」
 涼は、そのアンドロイドに会ってみたくなった。自分以外に、こんな環境になった人間だろうか?
 それとも、もっと違う何かの目的で作られたのだろうか?その思いにとらわれるまま、尋ねる。
「俺は、星野涼。あんたの名前は?もしよかったら時間はあるか?」
「私の名前は・・・マリア。・・・マリアも・あなたに・会ってみたい。」
 それが涼と、マリアと名乗るアンドロイドの声だけによるファーストコンタクトだった。

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