ザ・グレート・展開予測ショー

戦場に架ける橋


投稿者名:ハルカ
投稿日時:(02/11/14)

遠くで聞こえる銃声。
近くを走る敵兵の足音。

むせ返るような血と硝煙のにおいの中、
彼は泥の中でジッと気配を消し、敵をやり過ごしていた。


先の大戦から数年。
彼、横島忠夫は今戦場にいる。
最愛の女性を守りきれなかった自分と決別するため、
そして、最愛の女性を失った悲しみを紛らわすために
彼は世界へと修行の旅へ出た。
その途中で死にかけたところをワルキューレに拾われて今いる魔界の戦場に至る。

今回の指令は敵の大軍を食い止めるための時間稼ぎ。
数千もの大軍を相手に百にも満たない数で戦わなくてはならない。

完全な捨て石だ。
いや、今回だけではない。
彼は今までも自ら進んで危険な、生存率が10%にも満たない戦場に何度も出ている。

だが彼はそのたびに生き残って帰ってきた。
ボロボロに傷つきながらも、その手に最大の戦果を持って。


敵をやり過ごしたのを確認すると彼は闇の中を走り出す。
もう少しで仲間との合流地点だ。
仲間と合流した後一晩待機して、日の出と共に奇襲をかける。

指定された合流地点につくと横島は通信鬼を取り出して
彼の上司であるワルキューレと連絡をとる。

「こちら横島。ワルキューレ、合流地点に到着したぞ。
 これからどうすりゃいいんだ?」

ザザ・・・
少しノイズが入ってはいるが電波状態はまあ良好だ。

「こちらワルキューレ。
 いつも上官には敬語を使えといっているだろう!!
 ・・・まあ、いい。
 そのままC−4地点に移動しろ。そこが本当の合流地点だ。
 それにしてもさすがだな、横島。貴様が二番目だ。
 こんな短期間でここまで成長するとは・・・・上司として誇りに思うぞ。
 では、健闘を祈る!!」

横島は通信鬼をしまうと地図を広げて『C−4地点』を確認した。
作戦の漏洩を防ぐために、兵士に本当の情報が与えられないことはよくあることだ。
ここからはそんなに遠くない。彼はすぐに移動を開始した。


横島がC−4地点に着くとそこの一人の人影が見える。

(ワルキューレのヤツ、俺が二番目だって言ってたからな。
 ってことは一番に来たやつか?)

横島がその人影を確認しようとする。すると・・・

「べ!ベスパ!!」
「ポチ!いや、ヨコシマ!!」

「「どうして、ここにいるんだ!?」」

二人の声がぴったり一致した。

二人の間に気まずい沈黙が走る。
その空気に耐えられなくなった横島が先にきりだした。

「あれから、何かしてねーと気がおかしくなりそうで
 戦って、戦って、戦って・・・・・・・・・
 気が付いたらここにいたって感じだな。」
(ベスパ・・・
 俺はこいつの数少ない肉親である姉と最愛の相手を殺してしまったんだ・・・)

「フン、私と同じだね。
 毎日『ここで死ねたら、どんなに楽か』と考えながら生きている。
 だけど私もお前も大切な人から受け継いだ命。
 簡単に捨てれるほど軽い命じゃない・・・だろ?」
(私はこの男の最愛の女性でもある私の姉を殺した。
 そしてこの男は私の最愛の男性を殺した。
 だが、それはあの人が望んだことだ!あの人はようやく安息を手に入れた。)

<そうか、俺だけじゃなかったんだ>

ベスパの言葉にそう思うと、彼の目から涙がとめどなくこぼれ落ちていた。

「バ、バカ!泣く奴がいるか!!」

ベスパがあわてて言葉をかけるが・・・

「お前もな。」

「えっ!?」

ベスパの目からも本人の気が付かないうちに大粒の涙がこぼれ落ちていた。

「ハハハ。俺たち、似たもの同士なのかもな。」
(こんなふうに笑ったのは何年ぶりだろう?)

夜空には星が輝き、夜風が音を奏でていた。

(そうか、俺は何年もこんなものにも気づいていなかったんだな。)

「・・・なあ、アイツのこと教えてくれよ。
 俺がお前たちと出会う前、アイツはどうしてたんだ?」

「私もあの人のことが知りたい。
 お前は南極であの人をコピーしただろ。あの人は何を考えて生きていたんだ?」


俺たちは一晩、語れる限りのことを語り合った。
昔のこと、大戦中のこと、そしてお互いのことを。

もうすぐ夜明けだ。
いつのまにか仲間も数多く集まってきた。これから激戦が始まる。

「ベスパ!絶対生きて帰ろうぜ。もっと話がしてえよ。」

「・・・そうだね。お前の話をすべて聞くまで生きるのも
 悪くない気がしてきたよ。」

そして二人は戦場に向かった。

(ルシオラ・・・やっと俺は先に進めるような気がしたよ。)


今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa