ザ・グレート・展開予測ショー

南極物語(5) 


投稿者名:志狗
投稿日時:(02/11/13)

『敵の正体がわかったわよ!』

通信鬼から聞こえてきた美神の言葉に顔をほころばせる横島とシロ。
「本当ですかっ!」
『ええ、でも正確には敵とは言えないけどね。』
「どういうことですか?」
『相手は悪意を向けているけど、それは「横島君達だから」ってわけじゃないのよ。』
「??」
美神の言葉の意味が分からず疑問符を浮かべる横島。
『まあ結論から言っちゃうとね・・・・』
もったいぶっている訳ではないのだろうが、美神はそこで言葉を切る。


『あんた達を襲っているのは地脈エネルギーそのものよ』


この後の美神の話は以下のような物であった。

地脈には多くの働きがあるが、今回関わっているのはそのうちの二つ。

まず、地脈エネルギーの供給。
地脈は地球中を巡り、土や水や風など地球を構成するあらゆる要素に霊的なエネルギーを供給する。
人間が血管やリンパ管を通して体中に酸素や養分を送るようなものだ。
妖怪や悪霊、あるいは人間がそのエネルギーを利用する事はあるが、それはあくまでも二次的なことである。
いうならば、「地球」という体に寄生している生物が、そのおこぼれに預かっているといったところらしい。


もう一つは浄化作用。
地脈は、地球上で生物が発する負の思念が邪気として過剰に堆積しないようにそれらを吸収、浄化している。
邪気の堆積は霊的環境を乱す。
さらに思念の中には悪霊化するものもある。死んだ者が悪霊化するのも死亡時の思念によるものだ。

しかしこの様な浄化作用があるにもかかわらず、世界中に悪霊がはびこっているのは何故か?
 
それは至極単純で、単に浄化作用の許容量を超えているからだ。
人間の数の増大により浄化作用が追いつかなくなっている。
中世などでは、霊障も現在に比べて妖怪、悪魔などによるものが多かった。
現在では魔物は減ったと言うわけではないが、悪霊の発生数が爆発的に増加したため実問題の割合としては減っている。


そしてこの二つがどのようにして関わってくるかと言うと
世界中から邪気、シロの言葉で言うなら悪意、を吸収してきた地脈はチャクラである到達不能極に集結する。
そしてひとまとめにされ、チャクラにある浄化槽のような場所でいっせいに浄化された後、再び世界中の地脈を巡ることになるのだが・・・

その浄化槽から未浄化の地脈エネルギーが漏れ出しているというのが美神の出した結論だった。

核ミサイルによる破壊で地中にある浄化槽に穴が開けられる。
そこから漏れ出した地脈エネルギーはその役目、つまりエネルギーの供給を果たそうとする。
ただでさえ破壊の限りが尽くされ、大地としての生命力が限りなく減少した土地だ。地脈のエネルギーを過剰なまでに取り込む。
しかしそのエネルギーには全世界から集められた濃厚な悪意が詰まっている。

そしてこの悪意は混ざり合う事で個々の方向性を失い、純粋なものとなっている、
悪意はただくすぶっているだけの物ではない。他の意識体へ向かって作用する物である。
この生物の存在しなかった異界空間に意識体である横島とシロがやってきた。
悪意を含んだ地脈エネルギーを過剰に含んだ大地は横島とシロに引き寄せられていく。
さすがに地面そのものは動いたりしないが、石などは過剰なエネルギーと相成って弾丸のように横島たちに向かっていった。

横島の結界内の石が動かなかったのは横島の結界による浄化作用のためで、荷物が攻撃されなかったのは意識体でないからである。


『――というわけよ。』
説明を終わらせる美神の声に、はっと我に帰る横島とシロ。どうやら途中から美神の言葉は右から左へと抜けていったようだ。
「えーっと、何すればいいんでしたっけ?」
『あんたたち・・・聞いてなかったわね。』
「そっ、そんな事ないですよ!な、なあシロ?」
「そっ、そーでござるよ!ちょっと忘れちゃっただけでござるよ。」
慌てる二人に美神は通信鬼の向こうで嘆息する。

『いい?もう一度だけ言うわよ。結界をといたらすぐに超加速に入る。
その後シロが地脈エネルギーの漏れ場所を突き止める。悪意をたどればできるはずよ。
場所を突き止めたら文珠で地脈本来の浄化作用を増幅、そうすれば辺り一帯を浄化できると思うわ。』
「と思う?」
横島が不安そうな声を漏らす。
『しかたないでしょ、今まで誰もそんなのやった事ないんだから・・・。地球の力しだいってとこね。』
「そんな〜。」
『泣きごと言うんじゃないの!あんたの文珠の力しだいでなんとかなるわよっ!通信切るわよ!終わったら連絡しなさい!』
言うなり通信は一方的に切られてしまった。

「しょうがない、腹くくるか。」
やけくそ気味に横島がいうが、シロは腹、と言う言葉にはっとする。
「先生!怪我は大丈夫なんでござるか!」
そのシロの言葉に横島自身も忘れていたのだろうか、思い出したように脇腹に手をやる。
やはり完全には止血できなかったのだろう、じわじわと染み出した血が止血しているバンダナをどす黒く染めていた。
「文珠使ったから痛みはないんだが・・・」
神経を麻痺させているため実感がわかないのか、どこか他人事の様に言う。
「そういう問題じゃないでござるっ!早く治療しないと!」
「でも、文珠は浄化の増幅する分を考えると多分ぎりぎりだし。なにより結界はそろそろ限界だしな。」
先ほどからのたたきつけるような石の弾丸の嵐に、目に見えて弱まっている結界を見ながら言う。
「だけど!」
それでもなお食い下がろうとするシロの頭に、横島はぽんっと手をのせる。
「大丈夫だって、治療はするけど事態が収拾してからでいいだろ?今は時間がないしな。
その時はヒーリング頼むぞ。文珠は品切れになるだろうからな。」
だがまだ不安そうにするシロに、横島は微笑みかける。
「・・・あとで全部話してやるって約束もしただろ?」
「あ・・・・・」
横島の怪我の事で頭がいっぱいだったシロは、ほうけた声を漏らす。

(先生が約束破ったりする事なんてない!)
そんな確信がシロの中にはあったらしく、シロの不安は拭い取られる。
「絶対でござるよ!それに怪我の手当ては、全部拙者に任せてるんでござるよ!」
「わかったわかった。」
何で怪我の手当てまで?と思う横島だったが、とりあえず承諾しておく。

「じゃあ早く終わらせて、拙者が手厚〜い看護を・・・」
「何をする気だ・・・」
悶えるシロを、今度は横島のほうが不安げな表情で見る。



「それじゃあ行くぞ。」
「はいっ!」
シロの返事を聞くと、横島は結界解除の掛け声をだす。

「3,2,1.GO!」
掛け声と共に結界が解かれ、石の弾丸がなだれ込んでくる。

その瞬間に超加速に入った二人の姿は掻き消えた。

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