ザ・グレート・展開予測ショー

温かい想い(その7)


投稿者名:ユタ
投稿日時:(02/11/ 7)









「ぜぇぜぇ・・・み、美神さ〜ん・・・そろそろ休憩・・・・を」

重装備のリュックに潰されるように横島は倒れる。
美神はチラっと横島を見ると、左手首の腕時計に目を移した。
時刻は12:40

「そうね・・・お昼にしましょうか?」

美神の一言で比較的拓(ひら)けた場所で、おキヌの作った弁当を広げる。

「こ、こんな不気味なとこで弁当食うなんて、俺らだけやろな・・・(汗)」

横島の言うとおりだった。
日差しは高い木とその枝で遮られ、ときおり聞こえる不気味な野鳥の泣き声、
そして9月中旬とは思えない肌寒い風が吹き抜ける。
しかも自殺者のメッカという先入観がさらにそれを演出していた。

「ほほい、ほうとがいふでおはるか(ここにソウトがいるでござるか?)」

そんな雰囲気はおかまなしという感じで
おキヌ特製の肉入りサンドイッチをほおばりながら、シロが聞いた。

「そうよ。富士の樹海って言えば、
年間何人も自殺者や行方不明者が出てるからね・・・その上、方位磁石も使えない。
霊的磁場の乱れもあって霊能力者・・・GSはいつもように第六感も使えない・・・
・・・・物理的、霊的にも潜伏するには格好の場所ね」

「ふえ〜、凄い洞察力っすね・・・」

いつものことながら凄いと美神に感心する横島。

「当たり前でしょ!・・・と、言いたいとこだけど・・・」

美神がポンっと全員の前に一枚のCD−ROMケースを放り投げた。

「今回は前もって、ママが詳しいデータ揃えてたから、事前調査はほとんどいらなかったのよね」

「さすが、美神殿の母上でござるな」

「このデータによるとソウトは数日前まで東京で活動していたらしいわ・・・」

「何でですか?」

「東京みたいな大都会は人の念が溜まりやすいのよ、
そういったところの残留思念は、念を吸収して普通より強く大きくなるわ。
ソウトはそういう残留思念を取り込みに行ってたんでしょうね・・・」

「ってことは、その悪魔は最近まで私達の近くにいたのね・・・」

タマモが真剣な眼差しで美神を見た。

「そういう事。私達に気付かれないように行動するなんて、かなりの使い手よ。
しかも、強い残留思念を吸収したと思うからかなり力を蓄えたでしょうね・・・・・・・」

美神の話にシーンと静まりかえる四人、
改めて自分達が戦おうとしている相手の手ごわさを痛感していた。

「うっうっうっ・・・・・・そんな、ただでさえ危険なところに、
凶悪な悪魔・・・しかも霊力は減少傾向・・・死ぬ!今回はマジで死ぬ!」

「だ〜いじょうぶよ!あんたがそう言って死んだことないじゃない♪」
「あってたまるかーーーーー!!!(泣)」

ニコっと笑顔で言う美神とは逆に泣きながらツッコむ横島

「先生!安心下され!先生のことは拙者がお守りするでござるよ!」
「油揚げおごってくれるなら」

と、二人は言ってくれるがここは男の子・・・

「ば、バッカ野郎!自分の身くらい守れるわい!(弟子・・・しかも年下の女の子に守ってもらうようでは俺のメンツがぁ・・)」

と、精一杯強がってみた。

「ちんけなプライドが先立つようなら大丈夫ね。・・・さ、そろそろ出発するわよ」

「美神さん、その悪魔さんまではあとどのくらい何ですか?」

おキヌが弁当を片付けながら、そっと美神に尋ねた。

「う〜ん、それが正直なとこよく分からないのよ」
「わ、分からないって・・・ちょっと美神さーん!!」

美神のアバウトなセリフに、横島が慌てた声で叫んだ。

「うっさいわねぇ・・・霊的磁場の乱れで霊感が巧く働かないし、
見鬼クンも大体の方向しか指してくれないわ」

「ってことは俺らはめっちゃ不利な戦いになるんじゃ・・・」

タラタラと嫌な汗が横島の背中に流れる、顔には縦線。

「そうね♪」

あっけらかんという美神のセリフに今度は汗がサーと引いていく。
横島は美神にクルっと背を向ける。

「・・・・・・・・帰る!おウチに帰るーーー!!!!!」
「落ち着かんかバカ者!」

泣きながら走り去ろうとする横島の首根っこを美神が掴む。

「GS美神は勝てない戦いはしないのよ、まぁ見てらっしゃい!」
「そ、その根拠はどこから来るんすかーーー!?」

なおも納得いかないとばかりに、横島が泣き叫ぶ。
美神は「しょうがないわねー」という表情で言った

「リュックの中見てみなさい」

「リュック?」

美神に言われ横島はガザガサと、リュックの中身を確認する。
1000万級以上の破魔札13枚、カスタム霊体ボウガン2丁、
予備の神通棍3本・・・etc。相手が相手だけに普段より強力な装備が入っている・・・そして

「何すか、これ?」

横島がヨイショと、リュックからそれを取り出した。
それは・・・30cm程の大きな水晶玉。しかも4つ。

「きれいな玉ですね〜」

おキヌが珍しそうに水晶玉にそっと触った。

「ナメッ●星のドラ●ンボール?」

タマモが持ち上げながら聞いた。
タマモのボケにズルっとこけそうになるが、何とか気を取り直しす美神。

「違うわよ!これがソウト対策用の除霊道具よ!」

「これがっすか?こんなもの一体どこで・・・」

「300年前にソウトを封印したエクソシストの一人っていうのが、実はドクターカオスなのよ」

「え!?あのじいさんが!?」

横島はとても信じられんという表情をする

「その時に使った道具らしいわ、昨日家賃の立替(後払い)の代わりに頂いてきたのよ」

「相変わらず苦労してるんやなー、で?これどうやって使うんですか?」

「それは・・・・・・・・・・・・・・・っ!!!?・・・・・・・・みんな!!」

美神が何かに気付き、ハっとして周りを見渡す。そして4人に警戒するよう声をかけた。
多少うまくいかない第六感・・・霊感が全員に危険の信号を伝える。

「美神さん!あそこ!」

美神同様、周囲に注意を払っていたおキヌが指をさす。そこにはボヤ〜と人の形をした物体が浮かんでいた。
よく見れば20代後半くらいの若い女性のように見える。

「自殺者の霊でござるか・・・?」

シロが声を出した瞬間だった。
女性の霊と思われる物体が猛スピードで美神達に向かって飛んでくる!

「!!、みんな避けなさい!!」

美神の声に反応し、四人はその場を散開する!
女性の霊がその場に突っ込んだと思った瞬間・・・・




ドガガガアァァァァァァァァァァァァァァァアアアァァァンンンっっ!!!!!!!!!!




先程まで5人がいた地面が爆発する!
直径5m程のクレーターができ、爆煙が巻き起こる

「ごほっ!ごほっ!・・・み、みんな無事!?」

煙に少しまかれ、咳き込むが全員の安否を確認するように美神叫んだ

「な、なんとか・・・」
「コホ!ごほ!ぶ、無事でござる・・・」
「あつつ・・・一体何なのよ!」

「横島クンは!?」

「ぶ、無事ッス・・・道具も確保してます・・・・・・・・い、今の何すか!?」

「普通の幽霊さんとは違うみたいでしたけど・・・」

ようやく、霧散した煙の中から五人は集まる。
おキヌは出来立てのクレーターを見ながら美神に聞いて見た。

「どうやら、残留思念に少し魔力を込めた爆弾みたいなものね・・・」

美神が今までの出来事から瞬時に推測をたてて言った。

「と、いうことは・・・」

ゴクリと横島がツバを飲み込む。

「ソウトはもう近くにいるみたいよ・・・」

「そ、そんな拙者達がいながら、ここまで接近を許すなんて!!?」

シロが驚きの声をあげる。声は出さなかったがタマモも同じ気持ちだった。
超感覚をもつ彼女達は人間よりも遥かに優れた察知能力を持っていた。
特にシロの嗅覚は霊波の流れ、臭いさえ嗅ぎ分けることが出来る。
富士の樹海とはいえ、美神達よりは先にソウトの接近に気付くことができるはずだった・・・。

「そうね、霊的磁場で超感覚が使えないからってここまで気付かせないなんて・・・
敵は強いわ!・・・・・・・・・・ま、どんだけ強かろうと最後に勝つのは私だけど!!」

美神が言い終えた瞬間だった!五人の体に「ズンっ!』と、強い霊的プレッシャーがかかる!







『それは、それは楽しみだギィ!!』

「「「「「!!!!?」」」」」

五人がその声に反応する!まず美神が霊力を開放した。
横島達もそれにつられて戦闘態勢に移行する!おキヌはネクロマンサーの笛、シロは霊波刀を構える。
タマモは拳に狐火を纏(まと)い、横島の手のひらでは「キイィィン!」と文珠が輝く


「どこ!?」

タマモが相手の気配を全力で探りながら叫んだ。

『ここだギィ!!』


ズズズズっ


声のしたほうに全員の視線が集まる!10m程離れた、
木の影から大人の男性くらいの人型の何かが出現する。
それを見て、横島が少し怯えながら叫んだ。

「ひ、ひえぇぇぇ!なんすか!この頭部は目玉のオヤジに口を付け加えたような顔で、
体は八頭身で、全身真っ黒でシルクハットかぶって、鉄杖を手に持って、更にマントをしてる
化者は!!!?」

「よ、横島さん・・・何て説明的なセリフ・・・(汗)」

こんな時でもおキヌはツッコミを忘れない

『失礼なコト言うなギィ!』

「お前が悪魔ソウトでござるな!!」

『そうだギィ!!』

シロは律儀に返事をするあたり、結構紳士な悪魔かと一瞬思ったが、
さっきの不意打ち爆弾を思い出し、そんな考えを消した。



「もっとゴツいかと思ってたけど・・・・・・・ま、どっちでもいいわ!
私の現世利益・・・─もとい!人々の平和を乱す輩はこの美神令子と!」
「正義の侍、犬塚シロと!」
「美神事除霊務所助手、氷室キヌと!」
「タマモと」
「超絶美形にして今世紀最後の正義のヒーロ・・・ぶっ!」

美神は蹴りで横島にツッコミを入れる。

「あんたはそんなじゃないでしょ!」
「しくしく・・・美神除霊事務所所属GS見習い兼丁稚の横島忠夫が・・・」

「極楽に送ってあげるわ!!!!!」

キンっと美神の神通棍が霊気を帯び伸びる。





「さあ!戦闘開始よ!!」







その8に続く


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