ザ・グレート・展開予測ショー

マイフェアレディー:アフターフェクト(後編)


投稿者名:矢塚
投稿日時:(02/11/ 6)

このお話は前作「マイフェアレディー:アフターフェクト」の後編です。
よって、横島は未だに人格が女性化していますので、彼の台詞は
某堀川氏の中性的で艶っぽい声をイメージしてください。

################################

 寒村の各戸がそれなりに密集していた場所からは、目的地の廃屋はかなり離れていた。
 一同は、警戒しつつ廃屋に近づく。元は地主の家柄だそうで、廃屋はかなりの敷地面積を有していた。廃屋から漂う霊気そのものは強くも無く、この面子ならたいして苦労はしなくてすみそうであった。
「あの、美神さんのお母さん。私、なぜかものすごーく不安なんですけど。」
 おキヌが、恐る恐る口にする。
「そうね、さっきから私もものすごーく厭な感じです。」
 美智恵がちらりと後ろを振り返りつつ答える。視線の先には、横島ヨーコ(自称)を中心に円陣を組み周囲を警戒する唐巣神父、ピート、タイガーの3人。
 美神は自分のしでかした事とはいえあまりの成り行きに、なんかもうどうでもよくなっていた。
 先ほどから、横島ヨーコを3人がちやほやと扱っている。ヨーコがつまずけばタイガーが手を差し伸べ、ヨーコが少し寒いといえば神父が上着を羽織ってやり、少し怖いといえばピートが肩に手をかけ慰めた。ちなみに美神がけつまずいた時は、『あーあ、つまずいちゃったよあの女』という視線にさらされて、本気で殺してやろうかと思った。
「それにしても皆さん、何か、尋常じゃあないですね。」
 おキヌがそっと囁くのに、美智恵が答えた。
「これは、いわゆる業界専門用語(どこの?)で言う『萌え』ってヤツね。」
「萌え?」
「そう。特定の対象に一般人以上の愛着を持って反応し、自らの妄想を暴走させて
シチュエーションに酔う行為よ。」(注:あくまで美智恵の解釈です)
 続ける美智恵。
「ピート君はお兄ちゃんという言葉にあまりいいイメージがなかったのを、今日覆されてあえなく撃沈。タイガー君は付き合ってるのが一文字さんだっけ?それが今日は頼られる先輩に仕立て上げられ甘えられ、これまた撃沈。神父にいたっては破門されたとはいえ神に心寄せる独り者・・・禁断の果実は甘そうねー。」
 うんうんと拝聴するおキヌ。令子がその後を継ぐ。
「言わなかったけど彼等、後で横島クンに殺されるかもね。なにしろ本来の人格は無くなった訳でも眠ってるわけでもなく、体の自由が無いだけで今の状況をリアルタイムで体感してるでしょうから。」
「そ、それは・・・」
 言葉に詰まるおキヌ。ちらと3人を見れば、ヨーコを中心とした三つ巴に発展しつつあった。
 そんなこんなで、屋敷に侵入する一行。
「みなさん。悪霊になられた方の成仏に頑張りましょう!」
 ヨーコが愛くるしい声を上げ、励ます。
「「「おお!」」」
 3人の声がハモり、眼が燃える。
「燃えるな、萌えるな。」
 美神の突っ込みに、一同の気が緩む。
 突然、ヨーコの足元の床をぶち破り悪霊が強襲してきた。
「きゃー!!」
 ヨーコの悲鳴。悪霊の触手が彼女の足を絡めとり、さかさまに吊り上げてしまった。
「お、お、おんなー。結婚したかった、ラブコメしたかった、なのに、なのに、
いったい何が俺の全てを駄目にするというのかー!?」
 誰かを彷彿とさせる台詞に、一同はたじろぐ。
「おめえが俺と、け、け、結婚してくれんのかー!?」
「っああ!いや!あんっ!いやーやめてー!ああんっ!いやー!!」(注:横島です)
 ヨーコの生々しい悲鳴が室内を満たし、じたばたあがいたせいでシャツもめくれてしまい、白い肌にかわいいおへそがちらりとのぞく。
「やばい!」
 戦闘態勢を整えた女性陣。横に眼をやると、ヨーコの悲鳴とあられもない姿に腰砕けになっている3人の馬鹿どもがいた。
「みっ、みなさーん!?」
「こーらっ!こんのアホどもっ!!」
 おキヌ、美神の怒号が飛び交うなか、悪霊の触手がヨーコの服を引き裂いてしまった。もちろん、エクトプラズムスーツとともに。
「「!!」」
 ヨーコと悪霊に衝撃が走る。ヨーコは服を破かれたことに。悪霊はその中から出てきたモノに対して。
「「いっ、いやー!!男いやー!!」」
 ヨーコと悪霊の声がハモり、次の瞬間には悪霊は跡形も無く消え去り、後には
上半身裸の横島が白目を剥いて倒れていた。あまりの展開に皆が絶句するが、女性陣のほうが立ち直りは早かった。
「ふっ!どうやら悪霊も女の中から男の裸体がでてきて、現実の理不尽さとあまりの残酷さに絶望しすぎて成仏したようね。」
 シリアスに、そして少し憂いをおびた声で美神がしめる。
「そんなんでいいんですか?」
 おキヌの問いに、美智恵が悟ったように語る。
「おキヌちゃん、世の中綺麗な事が正しくて、汚れたものが間違ってるわけではないわ。人間はそれらを真摯に受け止め生きていくしかないのよ。」
 綺麗にまとめに入る美智恵。そうでもしないと、やりきれないのだろう。
「なにはともあれ、一件落着ね。あの3人以外は。」
 美神の視線の先には、悪い夢から覚めて放心状態のような3人の男たち。倒れている横島の周りをとりまいて、へたり込んでいた。
「ああ、写真だけでも撮っとくんじゃった・・・」
 タイガーの言葉は、唐巣とピートの心に切なく悲しい喪失感と共に響いた。
 その日この寒村に、切ない別れのエピソードが一つ生まれたのだった。

 翌日、横島は元に戻ったがとんでもないトラウマを刻み込まれて復讐どころではなく、1ヶ月程人間不信に陥りアパートに引きこもってしまった。
 
                  おわり

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa