ザ・グレート・展開予測ショー

マイフェアレディー:アフターフェクト(前編)


投稿者名:矢塚
投稿日時:(02/11/ 5)

この話は、36巻『マイ・フェア・レディー』の展開です。
なお作中、横島の人格は女性となっておりますので、彼の台詞は某堀川氏のとても艶っぽくなまめかしい声をイメージしてください。

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「毎回毎回、あんたという子はお金に眼がくらんで、めちゃくちゃなことをするんじゃありませんっ!」

 ユニコーン捕獲後の寒村に、美神美智恵の怒鳴り声が響き渡る。
 結局、美神令子の目論みは一人の馬鹿のためにあえなく潰え、そのうえ母の美智恵にばれてしまっていた。西条は一足先に、高価なユニコーンの角を本部まで搬送するために引き上げていた。
「だって!途中まではうまくいってたのよ!」
 美智恵に反論する美神。
「成功する、しないの問題じゃあないでしょう!どうするのよあの子は!?」
 美智恵が大喝する。その指先にはあの子がいた。
 流れるような漆黒の髪に少しきつめの眼差しだが、やさしさの溢れた整った顔。美神令子顔負けのすばらしいプロポーションの元・横島忠夫。いつもの服装でさえなければ絶世の美少女と呼んでも差し支えない。その上、今では美神の為にその心までも男にとって果てしなく都合のいい女になっていた。
「だーいじょぶよ!明日になれば元に戻るようにしてあるから。」
「えっ?横島さん明日までこのままなんですか?」
「・・・まあね。横島クンの煩悩をベースに、そこから抽出されたイメージで人格を構築したけど、ちょっと強力すぎたかしら?今じゃもう横島男の人格を、横島女の人格が覆いつくしてるみたいね・・・でもまあ、だいじょぶ、だいじょぶ。」
「シュークリームの、シューとクリームみたいな感じですか?」
「あ、いい例えね。クリームは横島男、シューは横島女。さっきまでは所々で男の人格が出てたけど、今じゃもう女の人格に完全に制圧されたみたい。・・・でもシュークリームが聞いたら気を悪くしそう。」
「そんな・・・ひとごとみたいに・・・」
 美神のいいかげんな台詞に、おきれるおキヌ。
「まったく・・・」
 頭を抱える美智恵に背後から声がかかる。
「美智恵君。どうやら首尾は上々だったようだね。」
 美智恵が振り返るとそこには男3人がいた。
「唐巣神父。ピート君。タイガー君。ご苦労様。」
 美智恵が疲れた声をかける。
「えっ?どうしたのみんな。」
 美神の問いかけに、唐巣が答える。
『ああ、ユニコーン捕獲の為の応援さ。タイガー君の精神感応を使って理想の美女の幻覚を見ている隙に我々が捕獲する寸法だったんだが、さっき西条君から連絡が・・・」
 唐巣の言えたのはそこまでだった。唐巣、ピート、タイガーの視線は美少女の前に釘付けになっていた。
「あ、あれはもしかして、横島さんですかいノー。」
「ええそうです。エクトプラズムスーツに強力な催眠暗示呪法で、このような姿ですが。」
 タイガーの恐る恐るの問いに、美智恵が答える。
「相変わらず、バラエティー豊かな人生ですねー。」
 ピートが呆れて呟く。そんな3人に、横島が初めて口をひらく。
「唐巣神父。ピートさん。タイガーさん。お久しぶりです!お元気でしたか?」
 声質は横島のままであったが、男性臭さが抜けた中性的で少しアクセントが高く艶っぽい声がもれる。かわいらしい笑顔としぐさを添えて。その横島を3人がほうけた様にみつめる。その3人から出た言葉に、女性陣はわが耳を疑った。
「・・・ピート君、これは、なんとゆうか、その、アレだねえ・・・」
「ええ、中身は彼ですけど、これはこれでその・・・なんとも。」
「おお!こっこれは・・・なんか・・・なんかノー・・・」
 3人の呟きに、美神が呆れて言う。
「・・・あんたたち・・・スーツの中身は横島クンよ?」
 その一言に、はっと我に返る3人。
「もっ、もっちろんわかってるよ、美神君。」
 しどろもどろにアクセントを狂わせて、唐巣が答える。
 妙に目つきの危ない3人に美智恵が声をかける。
「さあさ、3人とも。残りの仕事も片付けちゃいましょう。」
「なあに?まだここで仕事が残ってんの?」
 美神が問いかける。
「ええ、結婚できずに自殺した男性の霊。過疎化とそれに伴う嫁不足が生んだ、寒村の犠牲者。」
 慇懃無礼な美智恵の物言いに、おキヌがあわてて周りを見まわす。村の関係者は役場のほうに 引き上げたようだ。聞かれなくて良かったと、おキヌと横島だけが安堵する。
「まあ、なんてかわいそうな人。あの、美智恵隊長さん、よろしければ私もご一緒していいでしょうか?私も何かの力になりたいんです。」
 それまで黙っていた横島が、意を決した顔で言う。下唇を少し噛んだ顔がなんともけなげに見える。
 横島の台詞に、ちょっとだけ感動する女性陣。対称的に眼がとろーんとしている男性陣。
「ええ、かまいませんが、自分の身は守れますね?」
 少しづつではあるが、美智恵もこの横島に違和感を感じなくなっていた。
「ええ、もちろんです!」
 元気に、ぴょんと飛び跳ね答える横島。えいっ、と気合をいれ霊波刀を出す。
 出たそれは細身の剣。レイピアのような形状。少し腰が引けつつも気丈に構える精悍な眼差しに、男性陣から『おおっ!』と、声が上がる。
「まあ、煩悩が源じゃあこんなもんか。文珠は無理そうね。」
 美神の台詞はしかし、野郎3人の耳には届いていなかった。もう、横島を見る眼が恋していた。
 どうやら、ユニコーンすら途中までだましおおせた横島からは『男に果てし無く都合のいい女オーラ』とでも言うべきフェロモンでも出ているようだ。
「いや、君は僕がしっかり守りますよ。」
 トチ狂ったピートの台詞に、横島がはにかみながら答える。
「子供扱いしないでください、もう!・・・それと、もしよかったら私の事は横島君じゃなくて『ヨーコ』と呼んでください。その代り、ピートお兄ちゃん、タイガー先輩、唐巣おじさまとお呼びしてもいいですか?」
 顔を赤らめ、横島ヨーコ(自称)が上目使いに潤んだ瞳でみつめる。
「ヨーコ・・・お兄ちゃん・・・」
「ヨーコ・・・先輩・・・」
「ヨーコ・・・おじさま・・・」
 流石に横島の煩悩データベースを使用しているだけあって、このフレーズは3人の心のツボにヒットした。呪文のように繰り返す3人。
 美神、おキヌはヨーコをほっとくわけにもいかないので、自分等も同行を申し出た。 
「・・・はいはい。じゃあ、歪んだラブコメもそこまでにして、いきますよー。」
 おざなりな美智恵の掛け声にかなりの不安をはらみつつ、一同は目的地に向け出発した。

                  つづく

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