ザ・グレート・展開予測ショー

温かい想い(その5)


投稿者名:ユタ
投稿日時:(02/11/ 3)







「ハァ、ハァ、ハァ、・・・!」

男は力の限り走っていた。
息は激しく乱れ、心臓が限界だと叫びをあげ、肺が酸素をくれと要求する。
男の名は西条。日本屈指のGSにして、オカルトGメンの優秀な隊員でもあった

「はぁはぁ・・・取り合えず、ここまでくれば・・・」

西条はビルの間に隠れるように入りこみ壁にもたれながズズっと背中を引きずるように腰を下ろした。
その表情は疲労困憊(こんぱい)、
服はところどころ破れ、その周囲は出血で赤く染まっていた・・・

(くっ・・・僕とした事が・・・)

西条はギリっと唇を噛んだ。長年の訓練からか素早く息を整える呼吸法を施す。

「まいたのか・・・?」

霊剣ジャスティスを構えながら、そっと顔をビルの間から出した。
通りに人通りは全くなくヒュウっと冷たい風が吹いた

「・・・・・・ふぅ、早く隊長に知らせなければ・・・」

途切れかけた緊張感を再び纏(まと)い、西条が歩き出そうとした。・・・その時!

「なっ!」

ズバアァァァ!!

西条が背後に気配を感じた瞬間、背中に激しい激痛が走った。
血がまるで噴水のように吹き出す。血と同時に力が抜けていく感覚を味わいながら、西条がうつ伏せに倒れていく

(・・・こ、ここまでか・・・)

スローモーションのように遠のいていく意識の中で、西条は呟(つぶ)いた


















・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



美智恵がソウトの除霊を頼まれてから二日後・・・
時刻は午前11時

「み、美神さ〜ん!い、一体どこまで行くんですか?」

ぜえぜえと肩で息をしながら横島が尋ねた。
もちろんその背中にはいつも通りの重装備リュックがずっしりと圧(の)し掛かっている。
美神一行は木々が鬱蒼(うっそう)とした獣道を歩いていた。

「あと、少しよ。頑張れ男の子!」

(くっそー!何で俺がこんな目に)

横島は心の中で毒気ついて昨日のことを思い出した・・・







・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

美智恵からソウトの除霊を頼まれた翌日・・・

「と、いうわけで・・・私達でソウトを除霊するわよ!」

美神は併せて6億円の報酬があることは伏せておいて、
全員に悪魔ソウトの除霊の経緯と横島の霊眠期について説明した。



「はい!」
「了解でござる!」

おキヌとシロの元気な返事。
二人とも「世のため人のため思考」な故に人に害をなす悪魔をほおっておくという事は出来なかったのだ。
だが・・・・・・・

「「・・・・・・・・・・・・・・」」

タマモと横島から返事はなかった。

「ちょっと、どうしたの二人とも?」

いつまでも沈黙を保つ二人に美神が声を掛けた

「私には関係ないわ・・・」

「へ?」

タマモの応えに、美神は少しマヌケな声を出してしまう。
やがて、その言葉の意味を理解したのシロがタマモにつっかかった。

「タマモ!おヌシには正義の心というのがござらんのか!!」

タマモはシロの声に耳を貸さず、相変わらず沈黙を保つ。
そして全員の視線のが集まるとゆっくり口を開いた。

「・・・・・美神さんが、私をここに連れて来たのは人間界の常識を身につける為なんでしょ?
そもそも除霊なんて、普通の人間はやらないと思うし・・・。今まで黙ってたけど私が手伝って来たのはあくまで気紛れ・・・
私はあなたの部下でも、下僕でもないし、全く面識のない人間を守るつもりはないわ・・・」

言い終えるとクールな表情を崩さずタマモは美神を見据えた。
逆に取れば「面識のある人間」知り合いは守るということにもなるが・・・

「ぐっ!・・・確かに一理あるでござるな・・・しかし!」

なおも何か言おうとするシロを美神が制した・・・

「タマモ・・・あんたがそこまで言うなら手伝わなくてもいいわ・・・」
「み、美神殿!」

美神の意外な一言にシロの目がパチクリとさせる。

「そ、じゃあ私はお留守番ね・・・」

もう用はすんだとばかりに部屋を退室しようとするタマモ。
タマモがオフィスを出ようとした時美神が間延びした声で言った。

「残念だけど、仕方ないわね・・・・・・・・・・あ〜あ、ソウト除霊の暁には『狐屋』の特製キツネうどんを
ご馳走しようと思ったのになぁ」

ピクっ

タマモの耳が小さく動いた。

(み、美神さん・・・タマモちゃんを買収する気だ・・・(汗))

一瞬にして美神の思考を見抜き、苦笑いするおキヌ

「き、狐屋の特製キツネうどん・・・・・・・そ、そんなんじゃ、わ、私の心は揺らいだりしないわよ!」

(揺らいでる揺らいでる(汗))

おキヌは、どもるタマモに心の中でそっとツッコんだ。

「それに、極楽寿司の一貫800円の超高級いなり寿司食べ放題・・・」

どこか遠い目で誰に言うでもなく美神は語り続ける

「超高級いなり寿司が食べ放題・・・」

タマモは、いまにもタレそうなヨダレをゴクリと飲み込んだ

ちなみに『狐屋』、『極楽寿司』というのはここら、いや関東では他店を圧倒する程の名店。
中でも油揚げに命を賭けており、全国から油揚げファンが来店するほどだった。
タマモは両店とも一度だけ美神につれて行ってもらって以来、ファンになったのだが、
さすがに高級店・・・タマモのお小遣いでは2か月に一度行けるかどうかだった。

「それから、ちょっとした知り合いに頼んで天界から『昇天油揚げ』を頼むはずだったのに」

『昇天油揚げ』・・・その名のとおり昇天する程美味いと言われる天界の名産品。ちなみに知り合いとはもちろん小竜姫のこと。

「ぐぐぐ・・・・」

「はぁ・・・残念ね〜」

美神はワザとらしいタメ息をつくと、チラっとタマモを見た。
その表情はおいしい餌が目の前にあるのに、それが罠だと分かって近づけない獣のソレ。
3秒程その表情を続けるが、ここでタマモはギブアップ。

「し、仕方ないわね!そこまで言うなら手伝ってあげてもいいわよ!」


なるべく誇りを保つように、虚勢を張るがまわりの皆にはバレバレであった。

(楽勝ね・・・)

美神はほくそ笑んだ。あと2年はタマモはこの手でいけると・・・

「さて、横島クンも、もちろん協力してくれるわよね?っていうかあんたに拒否権はないけど♪」

タマモを攻略した美神は次の獲物・・・もとい助手を説得し始めた。

「いやじゃぁぁっ!ただでさえ霊力が落ちてるのに、そんな危険な奴と戦ったら死んでしまうわーー!(泣)」

「大丈夫、霊眠期については説明したでしょ?すぐによくなるわよ!」

「そんなの信じれるかー!大体美神さんには何億って金が入るかもしれんが、そんな仕事俺の安時給じゃ割があわーん!」

涙を流しながらイヤイヤと首を横に振り続ける横島

(さすが、横島さん・・・美神さんに大金が入るのが分かってる・・・・・・)

「ふぅ、じゃあ仕方ないわね・・・」

「お、俺はキツネうどんくらいじゃ騙されないですよ!今月は食費は少し残ってるし餓死することもないし・・・」

なおも抵抗する横島に・・・美神がそっと背後から抱きついた。



ピト・・・むにゅ

「!!!!?(こ、この感触はぁぁぁぁ!!)」




その柔らかい胸の感触に、横島の全神経が背中に集中し思考を鈍らせる。

「どうしても・・・駄目?」

「こ、こ、こんなモンじゃ、おおおお俺はぁぁぁ!」

明らかに効いている!効いているが、最後の一線で何とか耐える横島


ピキっ

そんな状態を見ておキヌの額に青筋がたった。
表情が明らかに険しくなる。だが、そんな自分の表情に気付いておキヌはハっとなる。


(ど、どうしたんだろう・・・美神さんの横島への色仕掛けなんていつもの事なのに・・・・)

(胸が・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・痛いよ)

おキヌはギュっと胸を掴んで俯く。自分の心に自問自答するが結局答えは出なかった。
そんなおキヌの気持ちも知らず、美神と横島は相変わらず交渉(?)を続ける


「横島クン・・・付いて来てくれるわよね・・・」

フっと横島の耳に息を美神は吹きかけた

(も、もうあかん・・・・・・・・・・・・・だがよく考えろ、横島忠夫!
お前はいつもいつも、この手でこの女にひどい目に合わされて来たじゃないか!
今回だってそうに決まってる!もう騙されるな!ここはガツンと言ってやれ!)


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「いいかげんにしやがれ!このクソ女ぁ!!そんな色気でこの俺が騙されると思ってんのかーーーー!!」

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・















と、いうセリフは言えるはずもなく、二つ返事で今回も同行ということになった。

「くそー!また騙されたー!ちくしょー!」

「何が騙したよ!人聞きの悪い!・・・それにちゃんと付いてこないと大変なことになるわよ」

美神がポカリと横島を小突いた。

(ったく・・・あんな事すんの恥ずかしかったんだからね・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・??・・・・・・変ね・・・昔はあんなの平気だったのに・・・・)

二日前のの出来事を思い出し少し赤面する美神。思い当たるところはある。
しかし、プライドの高さ故か「そんなはずはない」気のせい気のせいと自分に言い聞かせた。

「ここでは私達の超感覚もあまり役に立ちそうにないわね・・・」

タマモが緊張の面持ちで静かに言った。

「そうでござるな・・・・」

シロもそれに同調する。

「そうですね・・・ここは・・・」

おキヌは緊張からくる唾液をゴクリと飲み込んだ。



















「富士の樹海だからな!ちくしょーーー!!!!(泣)」

横島の泣き声が深淵な森にどこまでも響き渡った・・・・






その6に続く

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あとがき

えらい急展開になってしまったような・・・・・・(汗)
収拾がつかなくなってきた訳じゃないですが・・・
完結するのか!?こんな行き当たりばったりでいいのか!?と自問自答の日々です(汗)
その6は90%くらい完成してます・・・・・・・・・・次回は美智恵さん大活躍(笑)・・・・・・・・かな?







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