でーと。
投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/10/31)
放課後の、ファーストフード店にて。
「え?」
数十秒、珈琲カップを手にしたままの格好で、おきぬは固まったあとの一言である
視線の先には苦々しい、表情の弓、そして一文字がいる。
「…45秒」
腕時計を見ながら、一文字。
「まあ、最長ですわね」
くすくすと、笑いつつ弓。
慌てて、かちゃんとカップをソーサーに置き、わたわたと、慌てたように、言う。
「いえ、その、あの、本当ですか?」
と、
「もちろんですわよ」
にっこしと、弓。
「そりゃこんな事、ジョウダンで言うわけないだろ?」
何を言ってるんだと一文字。
「…冗談であってほしいなあ…」
救いを、求めるかのような表情でおきぬ。
そんなことがあり得ないことは十分すぎるほど知っていたが。
夕食時。事務所にて
「あはは、そりゃ災難だわねー」
箸で、おかずをつつきながら、美神。
「笑い事じゃないですよっ」
人数分の緑茶を注ぎつつおきぬは言う。
シロは一心不乱に食べており、会話などには意識がいっていない。
タマモは、シロのようにがつがつとは食べないが、黙々と箸を勧めている。
そして、シロと同じように、一心不乱に食べるはずの横島が、箸を持ったまま固まっていた。
さしずめ、数時間前のおきぬと同じような状態である。
「……え?本当かそれ?おきぬちゃん、頼まれてでーとするって」
「そ、そうなんですよお、そうしないとって弓さんと一文字さんが言うんですよ」
なにやら、頼まれたらしくてと、はあっと、ため息をつき、おきぬ。
「いいんじゃない、おきぬちゃんも、年頃なんだし、デートの一つや二つしても、相手に思う存分たかってやりなさい」
微笑ましいおきぬの姿に、くすくすと笑いながら美神。
「美神さんもしたんですか?」
「そらまあ、したわよ」
この美貌だもの、男がほっとくわけないでしょう。
と美神。
「の分、性格の捩れ具合でおつりがきますけどねー」
ぼそっと横島が言った瞬間
ばきっと─横島の顔面が、テーブルへめり込んだ。
がっしゃんと、テーブルの上にある食卓の上にある料理が跳ねるが、皆のものなれたようで、横島以外はすべて、茶碗を料理の載った皿などと空中でキャッチする。
「ああ…せんせーっご飯もったいないでござる」
皿をもったままシロ。
悲しいくらい愛情がこもった言葉だ。
夕食後、事務所にて。
「何なやんでんの?横島くん」
食後のお茶を楽しみながら、からかうように、美神が言う。
「なにって─………おきぬちゃんがデートって…いや、いいんですけど、でも、その、なんだろう…」
巧く、言葉にできないらしくわきわきと、頭をかかえ呟く。
「なら、しないよーにって言えばいいじゃない」
くすくすと笑い、言う。
(横島くんがそう言うなら、喜んでやめるでしょーに。)
「いあ、でも…」
「あんたは、そーゆうとこ押しが弱いわね、嫌なら嫌でいいのよ」
ナンパならいくらでもするくせに。
「美神…さん」
いつになく、優しいお言葉に横島が思わず感動するかのよーに目を潤ませると
「言っても、判断するのは向こうなんだからね」
にっこしと、美神は釘をさすかのように言った。
そして意気込んで横島が、部屋を出て行ったあと一言
「ま、おきぬちゃんなら、いいか」
という美神の声が、聞こえた。
何がいいのかは、また、別の話。
そして、おきぬの部屋。
おきぬは自室の机に座り、ぺらぺらとページをめくっていた。
課題をしなければならないのに、進まない。
頭が、意識がいって集中できない。
おきぬは、課題を諦めてぱたんと、ノートを閉じる。
そしてはあとため息をひとつついた。
「嫌だなあ」
じわりと、嫌なものが胸のなかにこみ上げる。
知らないひとと、なんででーとなるものを自分がしないといけないだろうか?
美神は、それでいいといってくれていたが、でも、知らない人となぜ、二人っきりでいないとなんだろうか?思わず首をかしげてしまう。
くるりと自分の髪を一房、指に絡めため息をまた、つく。
と─こんこん
控えめな、ノックの音がした。
「はい?」
かちゃん─という音がした後ドアの向こうにいたのは、
「ども」
と片手を上げ、所在なさそうにしている横島の姿であった。
「どうしたんですか?」
横島が、おきぬの部屋にくるなんて滅多にないことだ。
女性の部屋に、男(横島)が入るなんぞ百年早いと美神に言われて(というかぶちのめされて)以来、よほどのことがない限りこない。
首を傾げ、おきぬが聞くと、横島はぽりぽりと頭を掻き、うーっとうなり、そしてうつむいたかと思うと、がばっと擬音がつきそうな勢いで顔を上げ、
「でーとしないでほしいんだっ」
と言った。(いや声の大きさから叫んだといったほうが正しいだろうか?
「え?」
おもいっきし予想外の言葉を聞いたのだろう。おきぬは、言葉こそかえしているが、それはもう反射的に返したという代物だ。
そんなおきぬの様子に、気付かずに横島はまくし立てるように、言う。
「いや、おきぬちゃんがいいならいいんだけど、嫌そうだし、俺もなんか嫌だし、すきなのかって聞かれるとよくわかんねーけど、なんか嫌なんだ」
と。
顔には汗をだらだらとかいて言うその姿は、どこか必死でそして、可愛くて。
─でーとしてほしくないんだ─
その言葉が、じんわりとおきぬに染み込んでゆく。
おきぬは、ふんわりとほんとうに、嬉しそうに笑いそして、悪戯っぽく瞳を煌かせ
「─でーとしてほしくないんですか?」
と言った。
「うん」
横島はその言葉に躊躇う事無く、答える。即答である。
先程の、なにやら嫌な感じがどんどん薄れ、かわりに暖かい、うれしいものが胸のなかに溢れる。
「でも、そしたら、理由がないと断れないですよ?」
もちろん、横島にそういわれた瞬間、断ろうとは思ったのだが、少しだけ、ほんの少しだけ、悪戯心が芽生えたのだろうか?おきぬは、そんなことを言う。
「じゃあっ俺と─えっとみんなで、どっかいこうっ」
すると横島はそういった。
横島にしてみれば、自分と二人っきりではまたあれだろーなあという、配慮みたいなものだろーが、余計なお世話というものであろう。
鈍感男、ここに極めりである。
だが、おきぬは、そんな横島の鈍感というか、そんなところも愛しいと思っているらしくふわりと笑い
「そうですね、みんなで一緒に、いきましょう」
と嬉しげに言った。
さて、これがどんなお話へと発展していくかは、また、別の機会に。
おわり。
今までの
コメント:
- 皆さんこんなやつ知らないと思いますのがいちおーハズキと申します
駄作しか書けないやつですが隅っこに置いてくださいね(懇願)
つうか、こんなお話いいのかなーオチもなにもない、…面白くないですねえ(とおいめ)
ああっ見捨てないで(汗 (hazuki)
- hazukiさん作品の上に、横島クン&おキヌちゃんメインな作品を放って置くはずがありません(爆)。知らない男の人との「でーと」一つで、色々と真剣に悩んでしまうおキヌちゃん、おキヌちゃんに「でーと」をして欲しくないことをいっぱいいっぱいな状態で不器用ながら必死に伝えようとする横島クンがそれぞれに「らしい」気が致しました。おキヌちゃんが競争相手ですと、何故か寛容になるあたり令子「らしい」気もしますし(笑)。ほのぼのとした、温かみのあるいい作品でした;投稿お疲れ様です♪ (kitchensink)
- 初めまして!ユタと申します。
面白いです!過去ログからhazukiさんの作品読んでます!
僕もhazukiさんのように巧い作品が書けるようになれるのが目標です♪ (ユタ)
- “面白くない゛ですとぉ!?そんな話では在りません。hazukiさんが書いて、おキヌちゃんが横島にこんなこと言われて、しかも題名の『でーと。』での期待をこれ以上無いくらいに素晴らしく嬉しい裏切りかたして…!もうっもうっ、私はずっとhazukiさんの作品の虜ですよぉぉぉ〜〜〜!!(血涙&暴走&悶え)
えーと、冷静に……なれない(泣)。kitchensinkさんのお言葉のままとだけ言わせてください。私は修行に(頭を冷やしに)行ってきます(爆)。 (マサ)
- すばらしいです!
三つ指そろえて正座したまま頭を下げさせて頂きます!(いわゆる「土下座」)
hazukiさん、ここにあり!という作品ですねえ、さすがです!
こういう作品書きたいんですけど、書けないんですよねえ・・・(涙)
これからは、朝起きたら、hazukiさんのいらっしゃる方向にお祈りをしてから、
その一日を始めて行こうと思います! (マリクラ)
- どうもはじめまして、新参者のゲンと申します。以後お見知りおきを・・・
・・・素晴らしいです。素晴らしすぎます。
自分には一生かけない作品です
特におキヌちゃんのほんの少しの悪戯心が・・・もう・・・
ああ!涙で作品が見えない!(感涙中) (ゲン)
- はじめまして。矢塚と申します。
ああ、いい雰囲気で好きです。いいなー、いいよなー。
読後に俺も、甘酸っぱいラブコメしたくなりました(実生活のほうで) (矢塚)
- ど、どうしようコメントがきてる(汗)
すっごく嬉しいです!!(けどこんなお話で貰っていいのか自分)
と、いうことでコメント返しです
キッチンさん
コメントいつもいつも本当に有難うございます。なんかもー有難すぎて拝んでしまいます(涙)しかもほおって置かないって…あううれしい あったかいのかはよくわかりませんが、こー他のお話の現実逃避に書いてたのですが(笑)←駄目じゃん。
ああでも、いちおーおきぬさんふぁんのかたに反対されなかったのでほっとしてます(笑 (hazuki)
- ユタさん
コメント本当に有難うございます。そして始めましてです♪
巧いかなあ?いやむしろ下手ですようち(苦笑)…はっきしきっぱし下手ですけど……(読み返して落ち込んだらしい)ユタさんうちよりじょーずですって…目指さないほうがいいですぜったい(笑)…過去ろぐ…あう………すいません(何故か謝る)
あうーっでも読んでもらってうれしいしっ (hazuki)
- マサさん
コメント有難うございますすっごくうれしーですよおお♪
虜ですかっ(てれ)いや嬉しいのですけど、こんなやつの作品にはならんほーがいいです絶対(爆)!!つーかそのマサさんの暴走っぷりが羨ましいです(笑)
ああ師匠と呼ばせてください(萌えの←笑)!!
つーかおきぬちゃん度では、マサさんの作品に敵うひといないですよーっ (hazuki)
- マリクラさん
コメントありがとーございますです♪(と土下座してもらってるので、ぺたっとすわりおなじよーに土下座)…いいのかなあこれ(自爆)
マリクラさんのお話はうちすきですよーうちには絶対書けない関連だし
それに、みんながおなじだったらお話読むのつまんないし(笑
…いやにてるんですけど作風でも、マリクラさんとおなじよーなのはうちには絶対かけません(きっぱし)つーか拝まれてる(汗)いやそのじゃあうちもマリクラさんおがんどこ(笑) (hazuki)
- ゲンさん
コメント有難うございますそしてすっごく嬉しいです♪あんどはじめっましてです。
古いだけで進歩とうものがないものです(自爆
素晴らしいのかなあ?むしろ駄目っぽいのですが(笑)
一生ってうち程度なら直ぐ(五分もあれば)かけますよ?
悪戯こころはーなんとなく書き足したんですけど、喜んでもらえて嬉しいです♪ (hazuki)
- 矢塚さん
コメント有難うございますすごくうれしーです♪
いいかんじですか?ああよかったなんか気の抜けたコーラみたいな感じだあと自分デ思ってたので、そういって貰えると、安心します(苦笑)
…実体験でらぶらぶしたいですねえ…(おひ) (hazuki)
- はぅ!→銃撃
お・・・おキヌちゃん・・・横島・・・ラヴラヴ・・・ガク(ばたっ!)
っとまぁ冗談は置いといて、微笑ましい横島とおキヌです。
やっぱりhazukiさんの話って心が暖まります。
特にご飯に対してものすごい愛情をもつシロのくだりなんかもぅ(w (NGK)
- いーですねーいーですねえ♪「絹島」ラヴの私としてはしんぼーたまらんです!
描写がとっても素晴らしくって、とても自然に感じます。
こんなの見ちゃうと書きたくなってきちゃいますねえ・・・絹島。 (sai@姫島も好き・・・)
- はじめまして!!
お初に御目にかかりますハルカと申します!!
コメントが遅れてしまいました。すいませんです。
hazukiさんの作品、いつもドキドキしながら読ませてもらってます。
私も早くこんなドキドキさせるような作品を書けるようになりたい!!
次回作も楽しみにしてます。がんばってください!! (ハルカ)
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