ザ・グレート・展開予測ショー

温かい想い(その2(B))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(02/10/29)



















洋館突入30分後・・・

「ふぅ、あらかた片付きましたね」

ネクロマンサーの笛を口から離し、おキヌが声を掛けた。

「ええ、ここが最後ね。今まではザコ霊ばかりだけどラスボスは少し強そうよ」

ここは地下二階・・・二手に分かれながら各部屋を浄化してきた美神達は最後の部屋の前で集合していた。
美神達の目の前から今までとは段違いの妖力が感じられる

「美神さん〜・・・俺、もうヘトヘトなんですけど・・・」
「あんた荷物持ちしかやってないじゃない?」
「その荷物が重いんじゃぁぁぁ!!」

涙と鼻水を流しながら抗議するが、もちろん美神は聞いちゃいない

「へへん、先生の譲りの霊波刀があればヘっちゃらでござる♪」
「そういって、アンタはいつも足を引っ張るけどね・・・」
「なにぃ!」
「ほらほら二人とも喧嘩しなの!」

どこでも喧嘩をしだすシロとタマモにやれやれとおキヌが仲裁にはいる。

「バカ騒ぎはここまでにして突入するわよ!」

バタンっ!!

美神が扉を蹴り開けた

『誰だあぁぁぁぁぁぁぁ!!ここは私のモノだぁぁぁぁぁ!!!』

扉が開いた瞬間に、悪意のこもった怒声が聞こえる。五人はそれが5m程の塊・・・悪霊だと視認する。

「ふん!妖力は高くても頭は悪そうね!
私の現世利益の為に極楽へ行ってもらうわよ!
シロ!タマモ!私が切り込むからフォロー頼むわ!
おキヌちゃんはネクロマンサーの笛で他のザコ霊を成仏させてあげて、横島クンはもしもの為の簡易結界の展開と
霊体ボウガンで援護射撃」
「へ?霊体ボウガン?」

てっきり、文殊か霊波刀を使えと言われると思った横島が美神に聞き返した。
そもそも霊体ボウガンなど横島自身は最近使ったことがないからだ。

「いいから!」

「は、はい!」

美神の声にハっとして霊体ボウガンを取り出す横島。

(まただ・・・何で横島さんを前線に出さないんだろ?)

おキヌの頭に一瞬疑問が頭をよぎるが、今は笛を吹くことに集中した。

数分もすると、美神除霊チームの連携のよさもあり、低級霊はほとんど成仏し、
親玉の悪霊も虫の息となっていた。

「さ、トドメよ!」

美神が神通鞭を振りかぶった。

『まだだぁぁぁ!!』

トドメが決まると思った瞬間、悪霊が6体に分裂をする

「なっ!」

 一瞬、悪霊の思わぬ行動に驚いた美神だが、瞬時に冷静な判断をする

「大丈夫!6体に分かれたけどその分妖力は落ちてるわ!各自各個撃破!!」

美神号令の元、シロ、タマモが中心に分裂した悪霊を撃破していく、だが残りの一体が

「おキヌ殿!危ないでござる!」

他のザコ霊に集中していたおキヌへと突撃する

「おキヌちゃんに手を出すなんて100年早えぇぇ!!」

おキヌの前に横島が<栄光の手(ハンズオブグローリー)>を構え飛び出した!

「往生せぇやぁぁ!!」

横島が気合を入れて、霊波刀を突き出す。しかし、そんな横島に美神が叫んだ

「駄目!横島クン!文珠を使いなさい!!」

だが、美神の声は目の前の敵に集中している横島には届かなかった


ズガァァァァァ!!


悪霊と<栄光の手>がぶつかる、シロ、タマモ、おキヌはこれで悪霊は霧散すると思った・・・だが



ドガアァァァァ!!



「うわあぁぁぁぁ!!!」


悪霊が霧散するどころか、吹っ飛ばされたのは横島のほうだった

「よ、横島さん!」
「先生!!」
「ヨコシマ!」

三人が横島へと駆け寄る、除霊中ということを失念して

『ガアァァァァ!!』

横島を吹っ飛ばしたとはいえ、ダメージを負った悪霊が態勢を整え再び突撃してくる

「しまっ・・・!」

最初に気付いたタマモが声をあげるが、それと同時に

「油断するなって言ったでしょ!!」

『ギャァァァァァァァ!!』

美神の神通棍が悪霊を貫く、悪霊はそのまま断末魔を上げながら消えていく・・・

「ふぅ、除霊完了ね・・・。おキヌちゃん、横島クンはどう?」

胸中は横島への『心配』の二文字でいっぱいだが、それを声出さないように平静を装って尋ねた

「あ、はい気絶してるだけみたいです・・・ホントによかった・・・」

おキヌがポロリと涙を流す。自分をかばって傷ついた横島を心の底から心配していた。

「そ、じゃあさっさと横島クンを起こして地脈を戻して帰るわよ。ほら、目ぇ覚ましなさい」

かがんで、横島の頬をペチペチと叩く

「・・・う〜ん、あと五分」

寝言をつぶやき美神の胸にもたれかかった横島に、エルボーが炸裂したのは0.3秒後だった









美神除霊事務所ガレージ

「いでで、悪霊から受けたダメージより美神さんのエルボーのほうが効く」
「大丈夫ですか?横島さん」
「おキヌちゃんはやさしいなぁ〜・・・それに比べて・・・」

横島が意味ありげな視線を美神に向ける

「うっさいわねぇ、自業自得よ!ほら、さっさと荷物降ろしなさい」
「美神殿ぉ、拙者もうお腹ペコペコでござるよぉ〜」
「私も、早く油揚げ食べたい」

シロとタマモが肩を落としながら言った

「もう20時ですもんね。私、先にあがって夕飯の準備してきていいですか?」
「ええ、お願い。実は私もハラペコなのよ」
「あ、あのぉ、俺もぉ・・・」

横島がそぉ〜と手をあげる

「ったく、仕方ないわねぇ・・・おキヌちゃん五人分お願いね」
「はい♪」

おキヌの返事が心なしか弾んでいたのは気のせいではないだろう

「ん?」

おキヌが階段を上がろうとした時、タマモが声をあげスンスンと鼻を動かす

「上からいい匂いがするでござる」

それに同調するようにシロも言った

「誰かいるのかしら?」
「ど、泥棒さんですか!?」

おキヌがアタフタと慌てる

「バカねぇ、普通の事務所ならともかく私の事務所に泥棒ごときが侵入できるわけないじゃない・・・
人工幽霊一号!」

『はい、何でしょうオーナー』

「誰かいるの?私に来客?」

『はい、1時間ほど前から美神美智恵さんがいらしてます。
間違いなく本人なので、入ってもらいました』

「やっぱりね、それで今は料理中ってとこかしら」

『はい、皆さんの分の夕食みたいです』

「と、いうことはもう、ご飯が用意されてるでござるな!美神殿早く行くでござる!」

「はいはい、わかったわよ。・・・横島クンは・・・」

「『片付けが終わってから来い』・・・でしょ?」

「合格♪じゃあ後片付け頼むわね〜」

「横島さん、手伝いましょうか?(汗)」

「お、おキヌちゃん・・・(感涙)」

「駄目よ、おキヌちゃん。男はしごかれてこそ成長するんだから♪」


おキヌは最後まで申し訳なそうな顔したが、美神に促されて4人はオフィスに向かった。


「ちくしょー!やめちゃるー!こんな事務所いつかやめちゃるー!!」

人気(ひとけ)のないガレージに横島の叫びが悲しくこだました・・・



美神達がオフィスへ入ると、美智恵が雑誌を読みながらソファーに腰掛けていた。ひのめはその隣でスヤスヤと寝息を立てている。

「あら、お帰り。遅かったわね」

部屋に入ってたきた美神達に気付いて美智恵が声を掛けた。

「全く・・・来るなら、来るって言ってよ」
「いいじゃない。親子の中で遠慮はなしよ♪」

「み、美智恵殿!そ、それよりも!」
「はいはい、ご飯ね?台所に用意してあるからみんな来なさい」

よっぽどお腹が減っているのかシロとタマモはダッシュで台所へと向かった。

「・・・・あれ?横島クンは?」


「今、後片付け中」
「そんなコキ使ってるといつか逃げられるよ?」
「私は給料内の働きをさせてるだけよ♪」

(ったくこの子はホント素直じゃないんだから・・・)

美智恵ははヤレヤレと心で囁いた。

「あの、美神さん・・・」

「ん?」

台所へ向かおうとした美神はおキヌの声で立ち止る。
おキヌの真面目な表情に美神も表情も引き締まる

「あの・・・こないだ聞いたことなんですけど・・・」

「横島クンを前線に出さないって話?」

「は、はい!」

自分の言おうと思ったことを当てられて、おキヌは少し慌てる

「ふぅ・・・確証は得たし、言ってもいいわね・・・」

ゴクっ

おキヌの喉がなった。
ずっと前から気になっていた。
霊力に目覚めてから横島はただの荷物持ちではなく常に美神の隣で戦うようになっていた。
それなのに最近は昔のように結界の展開や破魔札などを使って後方からの援護が中心になっている。
それがどうしてもおキヌの心に引っかかっていた。
そして、今日の霊体ボウガンや、悪霊に苦戦などする始末。
いや、ホントはそんな戦術的なことが気になったんじゃない・・・
大事な・・・大切な人の調子がいつもと違うことが心配だった・・・

「今、横島クンはね・・・」


バタンっ


「あ〜、疲れたぁ。後片付け終わりましたぁ」

美神の話の腰を折るように、ヤル気の声で背伸びしながら横島が入ってきた。。

「お疲れ様、ご飯できてるらしいから食べてきなさい」

話の途中だった美神の代わりに美智恵がねぎらいの言葉をかける。

「!。あ、隊長お久しぶりッス」

「今晩は。相変わらず苦労してるみたいね・・・・・・ん?横島クン・・・」

横島を一目見て美智恵が怪訝そうな表情を浮かべる

「どうかしたんっすか?」

横島が不思議そうに尋ねる。美知恵が一呼吸おいて言った・・・














「あなた・・・・・・霊力が下がった?」

「「え?」」

美智恵の発言に横島とおキヌの声がハモる。

「・・・やっぱりか・・・」

美神の呟(つぶや)きは誰にも聞こえなかった・・・・・・






その3に続く



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あとがき

。は〜、こんだけ伏線張っといて完結するだろうかと心配の日々(笑)
その3くらいでボチボチ解決していくんでよろしくお願いします(汗)






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