ザ・グレート・展開予測ショー

秋の気配


投稿者名:アフロマシーン改
投稿日時:(02/10/13)









(もう終わりね。)






窓の外は灰色。
部屋に光は、ほとんどさしこまない。
私は、実家に戻るために荷造りしていた。


(結婚してから、浮気の連続。)


トランクから顔をあげると、
机の上にある結婚式の写真が見える。
とても小さく見える。


(日がかげって、見えない・・・・・。)


夜どおし、泣いた目がいたい。
洗面所の鏡におそるおそる顔を映す。


「やだ・・・・・・、ひどい顔。」


ぱしゃぱしゃ。
夕闇に沈んだ家の中を、顔を洗う音だけが聞こえる。
やがてそれは、シャワーの音にとってかわった。


(もう・・・、全部洗っちゃおう。)


お湯が、赤くはれた目をやさしく愛撫し、
白いうなじから、肩へと流れて落ちていく。


(あーいうひとだって、幽霊のころからわかってたじゃない。)


スポンジを泡立てて、肌にあてる。
きめこまやかな泡が、胸元をゆっくりとすべりおちていく。


(あのひとのやさしさは、とっくに私に向けられるものじゃなかった。)


腰かけにすわって、、丹念にごしごしと身体をこすっていく。
照明に照らされた肌は、泡にぬれてどんどん輝きをおびていった。


(あのひとの隣に住んでいた娘、今日もあそこに泊まっていくのね・・・・・・。)


つややかな黒髪は、腰まで豊かに広がっている。
細くてまるい指先で、すこしずつ髪をかきあげてといていく。


(私が幽霊のとき、あのひと彼女と結婚・・・したんですよね。まねごとだけれど。)


熱いお湯が、身体を包む。
肌が桜色にそまる。





(私たちの結婚も、まねごとだったんですか?!)





シャワーのはげしい流れにまじって、
熱いしずくがほほを、伝っておりていった。


(ちがう!)




(あなたが私の左胸を、かんで残したしるし。)


心臓の上をそっと、手のひらで包む。
薄い紅色の先端が指の間から、こぼれる。


(まだ消えたわけじゃないんです。私の心にあとがまだ残っているんですよ。)




「あああっ・・・・・・。」













(むにゃむにゃ・・・・・・?)





「黒真珠婦人」

 ーつづくー


(はっ!)

(やだっ!わたしったら、お昼の奥様向け愛憎ドラマみてたら、へんな夢みちゃった。)

(おまけに女性週刊誌、枕にしてるし・・・・・・(汗)。)



扉の外から、いつもの騒ぎが聞こえてくる。

「堪忍や〜!しかたなかったんや〜!」

「またあんたは、ひとの風呂覗いて!この変態が!」

ドキャ!バキッ!グシャ!

「ギャーーーーーーーーーーー!!」

横島の断末魔が、事務所中に響き渡る。



「まーまー美神さ・・・・・・。」

(今日はとめるのどうしようかな・・・・・・、ふふっ。)


振りあおいで見た窓の外は、秋の白い光がさしこみ明るさに満ちていた。





その現場を目撃したシロは、のちにこう語ったという。


「あのときのおきぬ殿の顔は、もなりざとかいうご婦人の微笑みに、そっくりだったでござるよ。」



































今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa