黒金7『少年』
投稿者名:紫
投稿日時:(02/10/ 5)
押さえきれないっ・・・!!
辺りに力があふれてきた。圧倒的な『消滅』。
膨大な力の渦の中で、光が見えた。蛍。ルシオラの眷属。
ふらふらと、辺りを飛んでいる。
それに、コスモ・プロセッサが放った電光が当たる。
消える。死ぬ。
「・・・あ・・・?」
既視感。
蛍が消える。死ぬ。
こんな光景など見たはずがない。
そのはずなのに・・・!!
(・・・ヨコシマ・・・)
・・・ルシオラの声が聞こえた気がした。
辺りの音が聞こえなくなる。心臓の音がやけにうるさい。
見たはずのない光景が脳裏をよぎる。
東京タワー。一度しか振り返らない自分。何かをつぶやくルシオラ。その姿が光り始め、そして・・・
蛍が消える、蛍が死ぬ。
蛍が消える、ルシオラが死・・・
「う・・・あ・・・ああああああああああああああああ!!」
その可能性を見せたのは誰なのか。
この世界か。最高指導者達か。滅びを望まぬ、生ける者達か。蛍の最後の瞬きか。
・・・平行世界の『誰か』か。
尋常でない霊力が膨れ上がる。
『王』が行う、世界に満ちる『力』を操る事とは違う、内面から湧き出るもの。
それは、万能に近い二つの存在から見れば微々たるモノ。
そう、横島の、『人間』の力。
「・・・あああああああああああああっ・・・!!」
『王』とは関係のないその力を、巨大な剣の形にまとめ上げ、コスモ・プロセッサに叩き付ける。
狙いなどろくに定めていない、力任せの一撃。
それがコスモ・プロセッサの回路の一部に傷を付ける。
コスモ・プロセッサの力が揺らぐ。それで、十分。
押されていた『王』が押し返し、その傷からコスモ・プロセッサを『消して』いく。
黒金の霞がその巨体を蝕んでいく。
跡形も残さずに。
・・・体に力が入らない。『王』に酷使されて、かなりガタがきているようだ。
霊力も尽きている。文殊が出せない。
『王』はコスモ・プロセッサを消すうちに薄れていってしまった。反作用は、その役目を終えたのだ。
今はもう、世界と一体となるあの感覚はない。
心身共に満身創痍といった風体だが、横島の顔は穏やかだった。
(・・・よし・・・)
立っていられない。地面が近づいてくる。
しかし、地面にぶつかる前、気を失う前に、何か柔らかいものに抱き留められたような気がして・・・
・・・目を開けてみる。白い天井が見えた。ここは・・・病院か?
脇腹の辺りに圧迫感がある。どうにか首を動かしてそこを見た。
椅子に座って、頭を俺の腹に押しつけて、ルシオラが眠っている。
ずっと・・・みていてくれたのか?
その寝顔を見つめ、なんだか自分がとんでもねー幸せ者だと急に自覚する。
ルシオラの髪にさわりたかったが、やめておく。起こしたら、悪い。
・・・俺も、もう少し寝るか。
この世界には色々と問題がある。アシュタロスが憎んだこの世界は。
素晴らしい、綺麗なモノだけで出来ているわけではない。
ろくでもないモノも、汚いモノもたくさんある。
だが、たとえそうだとしても。ある少年と、ある少女は・・・
確実に、幸せであった。
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はい、第七話です。終わりました。
七話。短いような、長いような微妙な数字。そりゃあ、何十話と書いている人から見れば微々たる量でしょうけど、自分ではかなり書いた気がします。つーか、今までの17年で一番長い文章かもしれません。不出来な所、いーかげんな所もあると思います。そーいった所も含めて、全体を通してのコメントとかいただければ嬉しいです。もちろん、何か一言でも嬉しいです。次の投稿はいつになるかわかりませんが、(なにやらしみじみと)では。
今までの
コメント:
- 平行世界で行なわれている、或いは行なわれてしまった出来事までも「王」の力で見えることが出来てしまうあたりが興味深かったです。そのまま暴走するかと思いきや、作品内でも触れられているようにコスモ・プロセッサが消滅した時点で「王」の存在自体が不必要ですから、暴走のしようが無いですよね。全7話を通して紫さんが独自に編み出した「王」という「反作用」から来たアイデア&設定が決してぶれることなく、そして作品世界に違和感無く溶け込んでいる点が良かったと思います。連載お疲れ様でした♪ また紫さんの作品を拝読出来る機会がおとづれるのを楽しみにしております。 (kitchensink)
- 最後までコメントしてくださって有り難うございます。あの設定はかなり考えて作ったので、違和感がないと言ってもらえて嬉しいです。次回も頑張りますので、これからもよろしくお願いします。
さー、次はなにを書こうかな♪ (紫)
- 楽しませていただきました。
次回作も期待しています(^_^;) (黒川)
- 最後は綺麗に纏まりましたね。どうもお疲れ様でした。
結局の所、決着をつけたのはちっぽけな人間の感情でしたね。
善や悪と言った、巨大ではあるけれども温かい血の通っていない概念が趨勢を決するよりも、この方が物語りの締めくくりとして相応しいと思います。いやー、良かった。
次回作にも期待しております。 (黒犬)
- わぁ〜い♪ 横島君とルシオラさん、ハッピーエンドですね〜♪
パピちゃんも無事で、この後三人で暮らせるといいにゃ〜♪
連載、お疲れ様でした♪ (猫姫)
- 黒川さんへ
そー言ってもらえて嬉しいです♪しかし、話を書いてそれに感想とかもらうのがこんなにイイものだとは思っておりませんでした。何とも言えない快感です。クセになりそうです。(次も頑張ろう♪)
黒犬さんへ
このラストはルシオラが生きている事と共に、かなり書きたかったものなので、共感していただいて嬉しいです(嬉しいばっかだな、俺)。
では。 (紫)
- あ。いつの間にか猫姫さんからもコメント来てる。
ふふ、これからは三人で仲良く暮らす事でしょう。・・・横島は、ルシオラと二人っきりになりたがるでしょうけど♪ (紫)
- よく考えられた設定と、それに負けない描写力。なによりルシオラが生きていたこと(そのための物語だということ)が、きちんとマッチした非常に良い作品だったと思います。次の投稿を心待ちにしておりますので、がんばってください。それでは。 (りおん)
- りおんさん、コメント有り難うございます。
えと、えらい褒めていただき恐縮です。
今のところ、投稿出来るようなモノは出来ておりませんが(何となくの構想しか出来てません)、次回も頑張ります。では。 (紫)
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