光
投稿者名:kort
投稿日時:(02/10/ 5)
光がせまってくる。
凄まじいスピ−ドで至近距離からこちらに向かってきている。
自分を殺すために、ただ一点を狙って。
それは怒りに溢れた純粋な力。
剣のように鋭く、破壊のみを為す光。
この光で終わってくれればいいと思う。
この光で、終わらせてくれ…。
終わりを迎えた次の瞬間には、いつも光に包まれていた。
それは彼を柔らかく包み込み、ゆらゆらと抱いた。
彼は力が抜けていくのを感じながら目を閉じ、しばしまどろむ。
そして次に目を開けるとき彼は常に、自分が最初に生を受けた場所に佇んでいるのだ。
私に終わりは来ないのか。
死してもまた「自分」として生まれることができるのか。
歓喜。
ならばいつか、そう遠くないいつかに、この宇宙の勢力図は変わる。
私は勝者となるだろう。
…勝者となること、それが永久に叶わぬことだと知ったのはいつだったか。
滅ぼす側にいることに耐え切れず、自ら攻撃に身をさらしたのはいつだったか。
終わりたい、と願い、包み込んでくる光を忌み、切り裂こうとしたのはいつだったか。
自分を抱く光に身をたゆたわせながら、自身の首をかき切ったのはいつだったか。
光がせまってくる。
包み込むようなものではなく、柔らかな彩も見せない光。
怒りに溢れ、剣のように鋭く、目も眩むほどに輝いている。
再生ではなく終わりをもたらす光は、けれど彼にとっては再生の光。
牢獄から抜け出すための光だ…!
……なんて美しい!
光が彼を貫く。
世界は暗転した。
あの包み込むような光は、今度こそは表れなかった。
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アシュタロスの話です。…一応。
私には難しすぎる題材でした。はぁー…。
今までの
コメント:
- kortさん、お久しぶりです♪ いわゆる「魂の牢獄」から抜け出すことを一番望んだアシュにとって、本来なら歓待すべき「包み込むような光」は忌むべきものでしか無かったワケですね。しかし反対に牢獄に打ち克とうとすれば、「宇宙意志」によりそれすらも制限されてしまう彼が、最後は自らを破滅されることでしか「幸せ」を享受できない形になってしまった過程が、今回の作品から伝わってきました。投稿お疲れ様でした♪ (kitchensink)
- 永遠の自殺志願者であるアシュタロスの苦悩が良く表されている一編ですね。 (黒犬)
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