ザ・グレート・展開予測ショー

父の思いと父への思い!(前編)


投稿者名:志狗
投稿日時:(02/10/ 2)

それは、いつもと変わらぬよく晴れた日の午後の事だった。


その時横島は、電柱を背に道に座り込んでいた。
そのそばには、シロが心配そうな顔で立っている。

「せんせー、大丈夫でござるか?」
「だ・・・」
「だ?」
「大丈夫じゃね〜〜〜!!」
「きゃいん!」

怒鳴る横島に怯えるシロ。乱れた呼吸を整えながら横島は続ける。
「いいかシロ!俺は美神さんの使いで厄珍堂に行くついでに、散歩に行かないかと言ったんだ!決して散歩がメインじゃない!」
「そんな〜」
「そんな〜、じゃない!それをお前は止めるのも聞かずに、関係のない道ばっかり行きやがって!」
「・・・・ごめんなさい。」
急にしおらしく謝るシロを見て慌てる横島。
「う、あ、いや、その・・・俺のほうこそ、怒鳴ったりして悪かった。」
「・・・先生が散歩に誘ってくれるなんてあんまり無いから、つい浮かれてしまったんでござるよ。」
「・・そっか・・・散歩ぐらいならいつでも誘ってやるから、な?」
「本当でござるかっ!」
先ほどとは一転し顔を輝かせる。
「ああ、でも今はちょっと限界だ。厄珍堂までは歩いて行くぞ。」
「は〜い。」
言いながら歩き出す横島に従うシロ。
そのコロコロと変わるシロの表情に、横島に自然と笑みが浮かぶ。
「でも、お前って本当に子供で、心と体のバランスが取れてないよな〜。(まあそのおかげで、手を出さずに済んでるんだけどな。)」
「拙者をこんな体にしたのは、せんせーでござるよ。責任取って欲しいでござる。」
「・・・誤解されるから、そーゆー事言うんじゃない。」
しかし時既に遅し、周囲の疑いの視線を浴びながら、シロを連れてこそこそと逃げ出す横島であった。


〜厄珍堂〜

「厄珍のおっさん、いるか〜?」
「今行くから、ちょっと待つあるよ〜。」
少しの間の後、店の奥から黒メガネ、鯰髭の小男、厄珍が出てきた。
「ぼうずに犬のお譲ちゃんあるか、「狼でござるよっ!」、で、今日はどうしたあるか?」
「美神さんの使いで、道具の補充だよ。注文してあったろ?」
「つい、忘れてたあるよ。その通路の突き当りの部屋においてあるから、持ってくよろし。」
「ああ、じゃあシロはここでちょっと待っててくれ。」
そう言って、横島は奥の部屋に向かって言った。

シロは横島を待つ間、店の品物を眺めては時々匂いを嗅いだりしていた。厄珍はテレビを見ている。
ふとカウンターの隅の方を見ると、台座のついた水晶玉のようなものが置いてあり、その上から透明なカバーが覆っている。
台座には何やら呪文らしき文字が細かく書いてある。
特に目立つような物ではなかったが、シロは興味を引かれた。
「厄珍殿、これは何でござるか?」
「ん?ああ、それは『召魂の宝珠』あるよ。」
「しょうこんのほうじゅ?」
不思議そうな顔をするシロに、厄珍はテレビを見るのをやめ、シロのほうへ向き直ると説明し始めた。
「名前の通り、魂を召還するアイテムあるよ。
でも、血縁者のしかも転生前の魂しか召還できない上に、使用者と強い”思い”で繋がっている、とか使用条件が多いのあるよ。」 
「ふ〜ん、そうなんでござるか。」
「他にも問題が多くて処分を頼まれたから、分解して宝珠の部分だけ売ろうと思ってたあるよ。」
シロがその”他の問題”について聞こうとすると、
「お〜い、厄珍〜、どこにあるんだ〜?」
奥の部屋から横島の声がする。
「全く仕方ないあるな〜。今行くあるよ〜。」
そういうと、厄珍も奥の部屋へ行ってしまった。

手持ち無沙汰になってしまったシロは、仕方なくまた店の中をうろつく。
『・・・・・・・タイ』
「?」
何かが聞こえたような気がした。
辺りを見回すが自分のほかには誰もいない。気のせいか、と思いまた品物を眺め始める。
『モウ・・度・・タイ』
「!?」
気のせいではない、確かに聞こえた。
声のしたと思われる方に近づいていくと、そこにはあの宝珠があった。心なしか、先ほどと輝きが違うようにも見える。
さっきまでは無感動なガラス玉の色だったが、今はもの悲しげな青じみた色になっている。
シロはそれを覆っているカバーを外し、宝珠を覗き込む。カバーの四隅に小さな精霊石が埋め込まれていたが、シロは気づかない。
『モウ一度会イタイ』
ばしゅぅぅぅぅぅぅぅっ!!
宝珠から声がすると同時に、青白い光が飛び出しシロの顔をめがけ向かってくる。
「くっ!」
シロはすばやく反応しその場を飛び退くが、不意を付かれた上に距離が近すぎた。
まだ体が中に浮いている間に、光が再度接近する。
(かわせない!!)
かっ!!!
光はシロの額に直撃し,閃光と共にシロの頭に吸い込まれていった。

閃光が収まると、シロはゆっくりと立ち上がった。動作はしっかりしているが、その瞳には光がない。
カウンターに近づき、置いてある宝珠を無造作に手に取る。
「もう一度・・・・・父上に・・・。」
そう呟くと、シロは宝珠を片手に店の外へと駆け出した。

奥の部屋で道具を探し出し、数の確認をしていた横島と厄珍は、店のほうでなにやら音がした後,閃光が上がったのに気付き何事かと戻ってきた。
そこで横島が見たのは、片手に何かを持ち、走り去っていくシロの後姿だった。
「シロ!!」
横島が叫ぶと同時に厄珍も声を上げる。
「ああっ、ない!宝珠が、『召魂の宝珠』がないある!」
「それって、シロが持ってたアレか?」
「!ぼうず!もしかしてあのお譲ちゃん、最近誰か家族を亡くしたあるか?」
「あ、ああ。しばらく前に父ちゃんが殺されてる・・・。」
「そうあるか・・・うかつだったある。」

事情が全く分からない横島はだんだんいらだってきた。
「おい!いったいシロはどうしたんだ!説明してくれ!」
「あの『召魂の宝珠』は、死んだ家族の魂を呼び出すアイテムある。でも使うためには使用者の生命力を吸収させ続けないといけないある。」
「なんだって!!」
「それだけじゃないある。使えるのは死者と強い思いで結ばれているものだけあるから、使うとほとんどの者が”二度と離れたくない”と思って、死ぬまで使い続けるあるよ。
それでも使う者が後を絶たず、多くの人の命とその”思い”を吸い取った宝珠は、いつしか”もう一度会いたい”という思いを僅かでも持っている者の心に入り込み、
死ぬまで宝珠を使うように仕向けるようになったある。一応簡単な封印をしておいたあるけど・・・」
「そんなことより!どうすればシロは元に戻るんだ!」
「宝珠を破壊するか、破魔札を額に張って、取り憑いた”思い”を外に出して祓えばいいある!」
「分かった!俺はシロを追う!厄珍は、美神さんに連絡してくれ!タマモならこっちを探せるはずだ!」

そういうと、注文した道具の中から破魔札を何枚か取り、横島は店を飛び出した。背中越しに厄珍の声がする。
「アレは、人間だと霊能者でも一時間も経たずに命を吸われるある!人狼でもそう長くはもたないある!急ぐあるよ!」

厄珍の言葉に一層の焦りを感じながら、横島は文珠を作り出し『探』と『速』の文字を込める。

(シロ、どうか無事でいてくれ・・・・)

祈るような気持ちで、横島はシロの姿を求め駆けていった。

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