銀色道
投稿者名:斑駒
投稿日時:(02/10/ 1)
歩こう。歩こう。
幾多の別離にも背を向けて。
歩こう。歩こう。
このいつ果てるとも知らぬ道を
歩こう。歩こう。
あまたの困難を乗り越えて
歩こう。歩こう。
ただ一つの想いを胸に・・・
「なぁ、マリア。こんなこと、わしの口から言うのもどうかと思うのだがな・・・」
「? イエス? ドクター・カオス??」
唐突な話の切り出しに、疑問を含む返事を返す。
振り向くと、いつになく真剣なドクターの顔があった。
「もしもおまえに今、生涯連れ添いたいと思うような相手がいるのならば、
わしに遠慮することなく言って欲しいのだ」
じいっ――とドクターが自分の目をまっすぐに覗き込んでくる。
「!! ドクター・・・カオス・・・??」
「おまえがあの小僧を憎からず思っていることは、先刻承知している・・・」
ドクターの頬がやんわりと緩んでいる。
「ドクター・・・マリアは・・・常にドクターと共に・あり続けるために・創られました。マリアは・・・もう・・・必要・ないのですか?」
マリアの返事を聞くと、慌てて言葉を紡ごうとするドクター。
「そ、そんなことは、ないっ! わしはいつだっておまえを必要としておるっ!」
「ドクター・・・カオス・・・」
自然と途切れ途切れになる声で、返事をする。
たまに身体の自由が利かなくなるような、この感覚。
ドクターが知ったらきっと『故障ではないか?』と危ぶむところだろう。
「う、うむ。そもそもおまえが毎日バイトしてくれているから、食っていけてるわけだしな。
身の回りのことも、おまえが居ないと何一つすることができん。
こうやって生きていけるのもおまえのおかげ・・・」
ドクターの目がこちらに向けられた瞬間、同時に口までもがその動きを止める。
全身の機関が『“制”』から『“導”』に変わる瞬間
身体の内から込み上げる何かを抑えきれずに、軽く肩を震わす。
「マリア・・・おまえ・・・喜んで・・・??」
こうやって、解析不能の感覚にとらわれるたびに思ってしまう・・・。
この感覚の正体をドクターは知っているのか・・・?
機械にあるまじき制御不全。
欠陥か・・・、それとも・・・
はっきり説明するべきなのかもしれないが、自分にはそんな勇気がまだない・・・。
だから、そのことは何も無かったかのように装う。
そして、固まったままのドクターに目を向ける・・・。
ドクターはにぃっと笑うと、その大きな手で自分の頭を優しく撫でてくれた。
『ドクター。マリアに欠陥が存在していたとしても、そばに置いていてくれますか・・・?』
そう心の中でつぶやき、そっとまぶたを閉じる・・・。
この大きな手・・・。
暖かい温もり・・・。
ずっと・・・、こうしていたい・・・。
再びドクターを見上げると、いつのまにかいつもの不遜で鷹揚なドクターの笑い顔に戻っていた。
その顔に目が釘付けになる・・・。一瞬、若かりしころのドクターを見たような気がした・・・。
失われてしまった時間・・・。手の届かなくなった過去・・・。
「おまえはいつまでも、わしと共に生きてくれ・・・」
そう言って、ドクターは自分の頭をポンッと叩く。
ドクターのその言葉が、あの頃のドクターの言葉と重なる・・・。
世界を駆け巡り、あまたの人々と出会い、替え難き親交を結び、別離が来ると、
ドクターといつも、別れを告げた人の墓碑を見つめていた。
ドクターの顔と墓碑を交互に見つめていると、頭をポンッと叩かれる・・・。
「おまえはいつまでも、わしと共に生きてくれ・・・」
振り返ると、いつでもそこにドクターがいた。
常に側に居る・・・、暖かさ・・・。
ドクターが自分にさせてくれた色々な経験・・・。
何をするときにもドクターは一緒に居て、不遜に・・・そして鷹揚に笑っていた・・・。
それが当たり前のことと。
永遠を信じて疑わなかった・・・。
失ってしまった時間・・・。手の届かなくなった過去・・・。
我に返ると、ドクターが見下ろしていた。
あの頃のドクターと変わらぬ笑顔で・・・。
一体どのくらいその笑顔に見入っていたのか・・・。
とにかく返事はしなければ・・・。
「イエス! ドクター・カオス!!」
言いながら心の中で、再び永遠を確信する。
失ってしまった時間。
でも変わることの無い、ドクター・・・。
手の届かなくなった過去。
どこまでも手の届く、未来・・・。
歩こう。歩こう。
ドクターの存在を側に感じて
歩こう。歩こう。
このいつまでも続く道を
歩こう。歩こう。
あまたの星霜を踏み越えて
歩こう。歩こう。
ただ一つの想いを胸に・・・
歩こう。歩こう。
いつも・あなたと・共に・・・
完
今までの
コメント:
- 朋友との盟約により、2連続オマージュにて登場です。
もしそのこと(改作投稿)に気を悪くされた方が居ましたらごめんなさい。
私の勝手な申し出に、快く作品を提供してくださったマリクラさんには感謝の言葉もありません。
最初から『マリアでオマージュを書く』という縛りはあったのですが、もと(『散歩道』)がすばらしかったので、わりと難なく書き上げることができました。……タイトル以外は(ドクロ)
そう。マリアが行くのは『遠い遠い遥かな道』なのです(遠い目)
ところで作品とは関係ないながらも宣伝をば一つ。
『マリアのあんてな』で展開予想の人気投票を始めました。
10月のテーマは“あなたの好きな展開予想キャラ”です。
一日に一回の投票で、自分の好きなキャラを上位に押し上げて見ませんか?
みなさんの参加をお待ちしております(○w○)/ (斑駒)
- ファン投票でソッコーで六道冥子さまに1票入れさせていただいたkitchensinkでございます(挨拶)。マリア・カオス研究専門家(爆)でいらっしゃいます斑駒さんが描くマリア&カオスコンビはやはり一味違いますね。肩を震わせながら「喜び」を表現するマリアを描く一方で、そのマリアが自分の感情の現れを「欠陥」と称しているあたりにまだまだ彼女が機械であることを印象付けられました。常に彼女がアンドロイドである一面を見失わないのがスゴイです。ビミョーに普段よりも格好いい感じのカオスも良かったです(笑)。投稿お疲れ様でした♪ (kitchensink)
- す・・・、すごいです・・・。
これって、本当に原作はあの「散歩道」なんでしょうか・・・。
ええ、そうですね、それくらいは分かります。原作者本人ですから(一人ボケ)
しかし、それを一瞬忘れてしまうくらいの深みを感じます。
「思い出が現実と重なる瞬間」というものをテーマに原作は書かせて頂きましたが、
マリアとカオスはその思い出が現実と連続しているし、共有しているんですよね。
二人がこれから歩く『遠い遠い遥かな道』はその瞬間にいっぱい巡り合えることでしょう。
タイトルはこれでいいと思いますよ(笑)
演歌調にするなら、「二人道」とか「夫婦道」でしょうか?(笑) (マリクラ)
- カオスさんがほんのりと格好よくて、マリアさんがふんわりと一途で良いな、と思いました♪
願わくば、ドクターカオスもいっぱい長生きしてくれますように……約二百年後にはボケてまわれるようですが(笑)(←無粋なツッコミですみません(><;)) (馬酔木)
- 永遠の道往きを只二人、寄り添い支え合い…か。
確かに、あの二人に相応しい道だ。
「犬さん♪犬さん♪」
しかし、少々寂しいものも感じる。彼らの道程は、何処まで行っても二人旅。たとえ心を寄せたとしても、それは永劫を歩む彼らにとって一瞬の出会いにしか過ぎないのだから…。
「猫さん♪猫さん♪」
……で、3号?
「なんでちか?」
その、犬さん猫さん鳥さん牛さんは、3号の友達カナ?(汗)
「初めて・会った・でち。いつの間にか・着いて来た・でち」
そ、そうなんだ。でもね、もう家に着くから、彼らとはサヨナラしようね?
「あーい・でち。みんな・またね・でち♪」
……ずいぶん、楽しそうなんだね。
「だって・楽しい・でちよ?」
うん、だからね。一瞬の出会いも悪くはないなぁ、って。……そう、思ったんだ。 (黒犬)
- コメンターさんへ一つ質問
>斑駒 さん、黒犬 さん の御二方
どうやって、それだけの大量の文字数を送信できるのでしょうか?
ブラウザの関係でそうなるのでしょうか?
もしもそうであり、差し支えないようでしたら、そのブラウザを教えてください。
(他のコメンターの方には重宝するかもしれませんので) (ギャグレキスト後藤)
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