ザ・グレート・展開予測ショー

ライアー・ライアー!!(ver.F)2完結編


投稿者名:sai
投稿日時:(02/10/ 1)

「やめて、貧ちゃん!」
(横島さんに失礼だわ)

「本当に貧乏神としか思えないから言うまでもないわ!日頃の行いも悪いしっ!!」






(((!!!???)))



時が、止まった。



有り得ない口から飛び出した、有り得ないセリフに全員が固まる。
一人だけ『有り得ない』理由を理解していない人間がいたが、そんな鈍感な奴の事は今は忘れよう。




「あ、あはははははは・・・僕、ちょっと疲れてるのかな、幻聴が聞こえたような気がして・・・」
「ワッシも耳の調子が悪くって、わはわはははははっ・・・・・・小鳩サンが、まさかのー!」「そそそそーよピート君!栄養足りてないんじゃないのっ?ふふっうふふふふふ・・・!」
現実逃避をするクラスメイツ。
「結構ズバリと言う方ですわね(ま、真実に近いでしょうけども。氷室さんの手前、それ以上は言わないでおきましょ)」
「こ、小鳩ちゃんどうしちゃったのかしら・・・・・!?」
「かわいい顔して結構きっついことゆうのねー・・・」
「・・・・・・・・い、今更ながら小鳩ちゃんみたいにマジメなコたちに言われると痛い・・・・・!」
しくしくと涙を流す横島。

言った本人はというと。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!」
青くなって口をパクパクさせていた。
(ど、どうしてっ!?私、そんなこと言うつもり全然無かったのに・・・!!)



「ま、まあ横島・・・・・・・・・そーはならんよーに、いう激励のイミも込めた訳であって
本気なわけちゃうから。な、小鳩」
誰よりも小鳩の心を理解しているという自負のある、貧乏神がとりなす。
なかなか横島と話せない小鳩の為にちょっとしたネタ振りをしただけのつもりであったが、なんだかイタい感じになってしまい若干責任を感じていた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・しかし今日の小鳩さんたら一味違うもんですから。






「いいえっ!!私、横島さんと縁があってほんとに迷惑してます!
横島さんて、とってもどうしようもない人ですもの!!私、会ってから暫らく経ちますけど、
なんていうか―――――――――――自分の欲望に忠実で、その分毛虫のよーに忌み嫌われしばき倒されて、
そんな人だからそばにいるとイライラしちゃってしょうがないっていうか・・・・・!!
今日も席が離れててほんと良かったわっ!!!」






「こっ・・・・・・・・小鳩ちゃんっ・・・・・!!」
(真実でもそこまで言われるとキツい・・・・!しくしくしくしく・・・・・)
シートに突っ伏してるるるーと涙を流す横島。




一方。
((((((おかしい!!!!!!))))))
水面下で小競り合いを繰り返すうちに誰がライバルかをお互い認識しあっている
女性陣や、それを目の当たりにしてきた弓やタイガーら全員が思った。



そして。
「―――――――――――――――――――!!!!????」
「こ、小鳩・・・・・・・・」
今度こそ小鳩の顔色は青を通り越して紙のように真っ白だった。
(どうして!?どうしてなのっ!?こんな事言ったら横島さん私の事、
きっ、嫌われっ・・・・・・・!!)






大きく垂れた眦に光るものが見る間に盛り上がり・・・・・・
「うええええええええ―――――――――ん!!」
たたたたた―――――っ!!

「小鳩!?」
貧乏神が呼び止めるのも聞かず、席を立って走って逃げていく。







あっけにとられる一同。
「小鳩さん、どうしちゃったんでしょうか・・・・・あんなこという人じゃないのに・・・・・」
「んふふ―――。種明かししてあげるのね――――――!」
おキヌの呟きに、答えたのはヒャクメだった。

「横島さん」
「?え、俺?」
「今日、なにか文殊もってるんじゃないかしら?『嘘』とか『逆』とか、そんな文字」
「えっと・・・・・ああ、そーだ二個持ってる。『真』と『偽』・・・・・・・あれ?一個減ってる」
横島がジャンパーを探ると、『真』の文字が浮き出た文殊が出てきた。
「あ・・・・『偽』が無くなってる!?」
「小鳩さんは拍子にそれを飲んじゃったのね――。だから変な事言ってたのねー!」


「あ・・・・・・・・・そういえば横島さんが美神さんにしばかれたとき、なにかが横島さんの
懐からアイスボックスに飛び込んだのを見ました・・・・・!」
ピートが証言する。
「それが――――――文殊が、氷と紛れて小鳩さんのコップに入ったのね」
「ってことは、あの小鳩ちゃんは文殊のせいであんな事を言ってたのか・・・えがった――・・・!
長期連載につきものの女性キャラの性格変化じゃなかったことも含めて・・・!」
ほ――――っと息をつく横島。










「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、なにしてんのよ横島くん」
「へ?何って・・・?別になにも・・・・・」

「ばかっ!とっとと追っかけて『真』の文殊飲ませて中和するなりして来なさいよっ!」
すこ――ん!!
「はっはいっ!?」
愛子の投げた紙コップが後頭部に命中し、横島は小鳩が走っていった方向へ駆けていく。



「もおっ・・・・・!これでこそ青春よねっ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっと羨ましいケド」
次第に小さくなっていく横島の背を見ながら、呟く愛子。
「ヒャクメも知ってたのなら、早く言ってくれればいいのに・・・・」
このあとの二人の情景をちらっと思い浮かべ、小竜姫が僅かに抗議の視線を投げる。
「色々波乱があった方が私は面白いのね――♪それに、誰かさんはVer.Bでいい思いをしてるから今回はちょっと遠慮するのね―――!」
「?何の事、ヒャクメ?」
「こっちの話なのねー」
古今東西イタズラな神の話は尽きないが、いつか人々の神話にヒャクメの名も挙がるに違いない。



そのころ横島はだだっぴろい六道邸の庭、桜並木を走っていた。
走りながら、さっきの事を思い返す。

(あの文殊・・・・)
たたたたたたたたた・・・・・

(『偽』で、あれだけボロクソ言われるってことは・・・つまり)
たっったったったったったったっ・・・・・・・・・



かあっ・・・
横島の顔が少し赤くなる。
「す、少なくともだいっ嫌いじゃないってことだよ・・・な・・・・」
たたたたたたたたたっ!
少しスピードを上げた。

(あ、いた)

大きな桜の木の下で、幹にすがりつくおさげの少女。
たったったったったったったったった・・・・・・・・


「小鳩ちゃん」
(!!)
びくっ、と体を震わせる。

「・・・小鳩ちゃん」
「こないでケダモノ!」
幹に向かったまま、拒絶の言葉。

(わ、分かっててもきちーなぁ・・・)
さくっと言葉のナイフが突き刺さり、ちょっと苦笑いが出る。
「あのさ、さっきヒャクメに教えてもらったんだけど小鳩ちゃん、俺の文殊を飲んじゃったらしいんだ」

(!?)
泣きはらした顔の事を忘れ、小鳩が振り向く。
「で、この文殊を飲めば元に戻るから・・・・・・・ホラ」
『真』の文殊を差し出すのを、不安げに横島の顔を見つめながら受け取る。



ゆっくりと口へ運び、飲み込むと――――――
キィィィィィィィィィィィィィィイイイイン・・・・・・・・・・・・!


見た目には、何も変わらない。変わったのは、その唇からつむがれる言葉だけ。
「・・・・・・・横島さん・・・・・・・・・」
「!小鳩ちゃん・・・・・・・・戻ったのか・・・・・な?」

「御免なさい!・・・・・・・あ・・・・・・喋れる・・・・・!いろいろ酷い事言ってごめんなさい!」
「いや、いーよ、俺の文殊のせいだって分かってるから気にしないでさ」
(ほっ・・・・・・戻ったみたいだ・・・)
うえええええええええええええええええええええん!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ぺたんと木の根元に座り込み、元に戻ってほっとしたのと美神ばりの言葉の凶器で横島をメッタうちにした申し訳なさで
小鳩は長いこと泣き続けた。
いくら横島が慰めても(あやしても?)「ごめんなさい」を繰り返し、小鳩が泣き止んだのは三十分程経った後だった。





「・・・・・・・さ、戻ろう。ホント俺の文殊のせいで、ごめん」
「(ぐすっ)・・・・・・いえ・・・・!」
厳密には誰かが右アッパーを入れたことも関係あるが、さすがに今の横島の頭にそれは浮かばなかった。
「ホラ。立てる?」
差し出される、少年の手。
「あ・・・」

きゅ。
(あ・・・・あったかい)
その手を取り、立ち上がる。にこっと微笑んで・・・。


「はい・・・!!」




(・・・・・・っ・・・・・と・・・・・?)
小鳩が立ち上がり、自然に手を離そうとしたが離れない。彼女の手が、離さない。
小柄な彼女は俯き加減で、横島の手を握ったまま桜並木をゆっくりと歩き出す。

(・・・・・ま・・・・いいよな・・・・・俺のせいでもあるし・・・)
ちらっと小鳩を見て、何事もなかったように自然にそのまま歩き出す。





目元の赤みも引き、ようやく落ち着いてきた心で想う。

(すてきな人たちがいっぱいいますけど・・・・・・)
「小鳩は、まけません・・・!」
ザアアアアアアアアアアァァァァアアアアア!!!
「え、今なんか言った!?」
突風が桜の枝を鳴らす音に呟きはかき消され、横島が聞き返す。





「・・・・・・・・・・・・なんでもありません!行きましょっ、横島さん!」

握る手を少し強めて、ゆっくりと歩き続ける。
いつか二人で歩いた、緋の絨毯のような桜並木の間を・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。








(おわり)
















遠くで間延びした女性の悲鳴と爆発音が響き、その直後西条が桜吹雪とお友達になっていたのはまた別ver.の話・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

(おわりですってば)

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