ザ・グレート・展開予測ショー

街あかり


投稿者名:斑駒
投稿日時:(02/ 9/30)

街に灯された明かりも、うっすらと滲んで見えにくい。
しんと、しずまり返った都心の夜空でひとりの少女はじっと前を見つめながら飛び続けていた。
少女は、そっと自分の腕を撫でる。
血のかよった腕は、あたたかくそして柔らかい。
この身体は、こころは、ある共通の基礎から作られたものだ。
ただ、目的を果たすために作られた【自分たち】
創造主とも言える方は、自分には理解できないことをしようとしている。
それはもちろん─―理解しようにも自分には難しすぎるものだけれど。
ただ、あの二人と一緒にやっている、それだけで良かったのだ。
だけど、いつのまにかみんなバラバラになってしまった。
ずきんと、しんぞうが痛む。
創造主の願いを叶える。
自分たちはそのためだけに【創られた】のだし、その為だけに生きて来た。
きっとそれは、動物での【本能】と呼ぶべきものだったのであろう。
だけど、本能以外の感情が、この結果を導いたのだ。
ずきん、ずきん─
ひどくなる心臓の痛みを自覚しながら思う。
まさか、こんなことで。感情のすれ違いなんかで二人を失うことになるかもしれないなんて。
大好きな仲間だったから、いつもいっしょなのが当たり前に感じるくらいに。
あの二人が辛いのも、苦しいのも、ましてや死ぬのなんて嫌だ、絶対。
街の明かりの中、少女はいや、少女の姿をした両手をきつく握り締め、額に押し付ける。
その姿は、まるで神に祈りをささげる殉教者のように、純粋でけなげだ。
少女は、神への反逆のために【創られた】イキモノなのに。
いや、もしかしたら後悔をしているのかもしれない。
無力な自分に。
二人の衝突を止められなかった事に。
二人を……守れなかった事に。
初めて身内のぬくもりを与えてくれたのに、そのお礼を言うことも、サヨナラを言うこともできなかった、最初で、最期の家族を…。
「…ごめん」
ぽつりとこぼれた言葉は、小さくそして寂しげだ。
そして、まなじりに淡い、ほんとうに淡い涙を浮かべる。
希望は、ある。
本当にちっぽけな可能性だけれども。
それでも今、自分にできることがあるのだから。
二人のために、してあげられるのだから。
これがさいわいでなくてなにが、幸いなのだろうか?

たとえそれが、徒労に終わってしまったとしても

ぎゅっと心臓のある場所を両手で抑える。
どくどくと恐ろしいくらい早い心臓の鼓動が聞こえた。
少女は、ぱんと両手で自分の頬を叩く

「きっと……。きっと、生きてるよね………」

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