ザ・グレート・展開予測ショー

つきあかり。(三十一巻参照)


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 9/29)

月に照らされる部屋は、灯りをつけることをせずとも明るい。
しんと、しずまり返った部屋のなかひとりの少女はじっと部屋にそなえつけられたベットに座っていた。
少女は、そっと自分の腕を撫でる。
血のかよった腕は、あたたかくそして柔らかい。
この身体は、こころは、ある目的のためにつくられたのだ。
ただ、目的を果たすために作られた【自分たち】
創造主ともいえる方は、自分には理解できないことをしようとしている。
それはもちろん─理解しようとも思わないけれども。
ただ、創造主はそれを願っている、それだけでいいのだ。
だけど、それはアイツが困る事なのだ…。
ずきんと、しんぞうが痛む。
創造主の願いを叶えたい。
自分はそのために【創られた】だしその為に生きているのだ。
きっとそれは、動物での【本能】と呼ぶべきものであろう。
だけど、本能以外の感情が嫌だと言うのだ。
ずきん、ずきん─
ひどくなる心臓の痛みを自覚しながら思う。
だって、そんなことをしたら、創造主の願いをかなえるようなことをしたら、あいつは困るし、泣くだろう。
優しいやつだから、敵であろう自分のを見捨てきれないくらいに。
アイツが泣くのも、困るのも、ましてや死ぬのなんて嫌だ、絶対。
月明かりの中、少女はいや、少女の姿をした両手をきつく握り締め、額に押し付ける。
その姿は、まるで神に祈りをささげる殉教者のように、儚く美しい。
少女は、神への反逆のために【創られた】イキモノなのに。
いや、もしかしたら懺悔をしているのかもしれない。
神ではないなにかに。
目的を果たせずに、逝くことを。
仲間そして創造主へ。
初めてあたたかい言葉をくれたのに、ついていくこともできない、言葉をかえすこともできなかった、最初で、最期のオトコへ。
「…ごめんね」
ぽつりとこぼれた言葉は、小さくそして寂しげだ。
そして、口元に淡い、ほんとうに淡い笑みを浮かべる。
後悔はない。
謝るべきひとはたくさんいるけれども─。
自分のこころのままにいきれるのだから。
生きて、死ねるのだから。
これがしあわせでなくてなにが、幸せなのだろうか?

たとえ誰かを悲しませるとしても

ぎゅっと心臓のある場所を両手で抑える。
どくどくと恐ろしいくらい早い心臓の鼓動が聞こえた。
少女は、ぱんと両手で自分の頬を叩く

「さて、と幸せになりに、いきましょう」


おわり。
いいのかこんな終わり方(自爆

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