ザ・グレート・展開予測ショー

注射の条件!(当日)


投稿者名:志狗
投稿日時:(02/ 9/26)

翌朝

前日の夜更かしのせいで珍しく少し寝坊したシロが、眠い目をこすりながら屋根裏の部屋から降りてきた。

「おはようでござる。」
「お、おはよう、シロちゃん。今日は少し遅かったわね。」
おキヌちゃんが朝食の準備をしながら答える。
シロの姿を見てわずかに動揺したのは、今日、シロのためにとはいえ横島とシロをだまして注射に連れて行くことへの罪悪感だろう。

「昨日の夜、ちょっと遅くまでタマモと話をしていたんでござるよ。それはそうと、美神殿に話があるんでござるが、まだ起きてきてないでござるか?」
「ええ、美神さんはあんまり早起きはしない人だから。でも朝食ができる頃には起きてくると思うわよ。」
美神の寝起きの悪さを思い出し微笑を浮かべながら答えるおキヌちゃん。
「そうでござるか、じゃあ美神殿が起きてくるまで手伝いするでござるよ。」

そう言いながら食器などを並べはじめるシロ。
しばらくするとタマモが屋根裏部屋から起きてきて、食事の支度ができる頃には美神が起きてきた。

食事が終りに差し掛かる頃、突然シロが切り出した。
「美神殿。」
「なーに」
美神は食後のコーヒーを飲みながら答える。

「今日は”ちうしゃの日”なんでござろう?」

ぶーーーーーーーーっ!!
飲みかけのコーヒーを思わず吹き出す美神。
〜〜〜〜〜〜〜っ!!
おキヌちゃんは食べかけのパンをのどに詰まらせ、胸をたたく。
まさか知られているとは思わなかった二人は大げさとも思える反応をしてしまう。
タマモだけは平然と食事を続けている。

美神はすぐに立ち直り、タマモに向かって『あんた喋ったわね』という視線を送るが、タマモはそれを難なくいなし答える。
「シロは元から知ってたみたいよ。それに私は昨日シロが逃げ出そうとしたのを止めたんだから感謝してもらいたいくらいだわ。で、美神が私にした話をしたら、シロもその話にのりたいんだって。」
「”お願い”の話?別にかまわないけど、お金がかかるのと、あんまり面倒なのはだめよ。」
「タマモちゃんのはお金がかかるのじゃないですか。」
ようやく落ち着いたらしいおキヌちゃんが、平等にしてあげないとかわいそうですよ、というような表情で聞く。
「タマモのほうは逃げたときのリスクが大きいからよ。シロならどうせ捕まえられるんだし、捕まえる面倒よりも楽なのじゃないと割に合わないわ。」
さすがは美神、損得の計算が速い。おキヌちゃんは納得のいかない様子だったが、当のシロは、
「美神殿に面倒は掛けないでござる。えっと、その、お願いは先生にかなえてもらいたいんでござるが・・・。」
と、なぜか落ち着かない様子で言う。
「?、横島君に?いいわよ別に、それならお金をかけさせようが、迷惑かけようがかまわないわ。横島君の飼い主として許可するわよ。」
「み、美神さん・・・・・。」
「横島って悲惨ね〜。」
美神のあんまりな発言に、おキヌちゃんとタマモはまだ来ぬ横島に深く同情するのだった。

その後朝食の片付けの間中シロは妙に浮かれていた。
鼻歌を歌ったり、ぽーっとしていたかとおもうと急に顔を染めて、体をくねらせていたりする。
時々、「拙者まだ心の準備が・・・」などという呟きが聞こえたりする。
タマモは気にしていないようだが、美神とおキヌちゃんは、シロの”お願い”に嫌な予感が積もっていくばかりだった。

そうこうしているうちに横島の出社時間となり「ちわーっす。」というすこし間の抜けた声とともに横島が事務所に入って来た。
「おはよ〜、おキヌちゃん。」
出迎えたおキヌちゃんに微笑みながら声をかける横島。おキヌちゃんの頬に朱がさす。
「横島さん、おは「せんせ〜〜〜〜〜(どたどたどたっ、ずしゃ、ぺろぺろぺろぺろ)」・・・・・あううう。」
シロのいつもの行動に、挨拶をさえぎられうめくおキヌちゃん。
「やめんか〜〜〜〜〜〜っ!!」

恒例の(?)やり取りの後、とりあえず一室に集まった、事務所メンバー。
美神が横島にシロの”お願い”について伝える。
「というわけで、横島君はシロの頼みを聞きなさい。」
「まあそれでシロがおとなしく注射を受けてくれるのならかまわないですけど・・・。」
と言って,シロのほうを向く。シロは期待に目を輝かせている。
「うっ、(これは聞かないわけにはいきそうに無いな〜)、な、なあシロ、俺にできる範囲のことにしてくれよ?金がらみだとちょっと限界もあるし・・・」
「大丈夫でござるよ、お金はかからないし、いつもの散歩より疲れないと思うでござるよ。」
「あの散歩より疲れるものがあるとは思えんが・・・・で、何をやればいいんだ?」
横島が聞くと、シロは顔を赤らめてなにやらもじもじし始めた。
「ええと、その、『アレ』をもう一度やってほしいんでござる!」
そういうと、顔を両手で覆ってしまう。
「『アレ』って?」
何の事だか分からず聞く横島。
「『アレ』は『アレ』でござるよ〜。恥ずかしいから何度も言わせないでほしいでござるよ〜。」

このシロのせりふと様子に美神とおキヌちゃんの頭にある図式があがった。

『アレ』=恥ずかしいこと→横島がシロに恥ずかしいことをした→滅殺

ゴゴゴゴゴ〜〜〜〜
「よ〜こ〜し〜ま〜く〜ん〜(さ〜ん〜)」
怒りのオーラを身にまとい横島を威圧する二人。
「ちょ、ちょっと二人とも、落ち着いて、俺にも何がなんだか・・・」
横島の命も風前の灯と思われたそのとき!!

「前に美神殿とおキヌ殿の前でやったときは怒らなかったのに、どうして今回は怒るんでござるか?」
「「え?」」
シロの言葉に二人の怒りが霧散する。
自分たちの前で今想像したような事を許した覚えは無い。ますます『アレ』が何か分からなくなってきた。

「せんせーも忘れちゃったでござるか?フェンリル狼、とゆーか犬飼ポチを倒したときにやってくれた『アレ』でござるよ♪」
「「「???」」」
「も〜、しょ〜がないでござるな。じゃあ、拙者の言うとおりにやってほしいでござるよ。」
「あ、ああ。」

そして『アレ』はシロの指導(?)のもとに完成した。

「「「・・・・・・・・・」」」
「”ちうしゃ”に行って帰ってくる間だけでいいでござるよ♪・・・でも先生さえよければ毎日でも・・・・」
などと言う言葉はほか三名(タマモはずっと気にせずに雑誌を読んでいる)には届いていなかった。
今の状況を説明すると、横島はシロの背中に片手を回し、もう片方はひざの裏に当てて両足を持ち抱きかかえている。
つまり、俗に言う

『お姫様抱っこ』

というものである。
しばらくして三人が我に帰った後、横島は断るわけにもいかず、シロのは喜びように機嫌の悪い二人も、前回何も言わなかった手前、やめさせることもできず
美神の「妙な事考えたら、どうなるか分かってるんでしょーね。」という脅し文句とともに送り出すしかなかった。

その後

行きはまだシロもおとなしくしていたが、注射の後の帰り道中、
「痛かったでござるよ〜」と横島にあまえにあまえて、(タマモも目尻にちょっと涙が浮いていて横島の服のすそをつかみながら帰ってきた)
それを見た留守番組の二人が横島をボコボコにし、シロ(+タマモ)の看病に、ちょっとデレッとしたところを再度八つ裂きにされ。
横島は、一晩,生死の境をさまようことになった。

それ以降、シロが注射を楽しみにし、横島が逃げ出そうとすると言う現象が起こるようになったそうな・・・・

(終)

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