ザ・グレート・展開予測ショー

注射の条件!(前日)


投稿者名:志狗
投稿日時:(02/ 9/26)

 深夜の美神除霊事務所・・・

明かりも落ち、音も無い事務所の一室で、一つの影が動いている。影は辺りの気配を窺いながら、ゆっくりと窓へと近づいていく。
窓から差す月明かりの中に入っていくことで、陰の姿があらわになっていく。

シロだ。

きぃ・・
わずかの軋みを立てながら、それでも慎重に窓をゆっくりと開けていく。
開け放たれた窓からわずかに吹き込む夜風を心地よく感じながら、シロは窓辺に足を掛けた。

「なにやってんの?」
びくうっ!!

急に掛けられた声に不意をつかれあからさまに反応を示すシロ。声を掛けた相手が誰かはわかっているのだが、それでも声のしたほうへ顔を向ける。

「お、起きていたのでござるか。タマモ・・・。」
平然を振舞おうとするのだが、普段感情を隠すということを全くしないシロは、動揺を隠せず思わずどもってしまう。

「で?なにやってんの?」
のそのそと寝床から起き上がり、ベッドに腰掛けながら追求するタマモ。

「え、え〜と、その。そう!散歩に行くんでござるよ!」
明らかに嘘と分かる嘘をつきながら、必死にごまかそうとするシロ。
バレバレの嘘に、タマモは嘆息しながら告げる。
「本当の事言わないと、今すぐ美神とおキヌちゃん起こすわよ。」
シロは、う〜、と呻いたが、あきらめたらしく窓から足を降し、自分のベッドの上にあぐらを書いて座った。

「拙者、おキヌ殿が電話で話しているのを聞いたんでござるよ。」
「何を?」
シロがわずかにおびえた声で言うのをいぶかりながらタマモは聞き返した。


「明日は、明日は”ちうしゃ”の日なんでござるよーーーー!!!」

どたっ!
それまでまあまじめに聞いていたタマモはシロの発言に思わずこける。
「あ、あんたねえ、そんな事ぐらいで逃げ出そうとしてたの?」
「そんな事じゃないでござるーーー!タマモは自分が受けないからそんな事なんて言えるんでござるよ!」
「ちょっと落ち着きなさいよ、このバカ犬!美神達が起きるわよ!」
とりあえず泣き叫ぶシロをなだめる(?)タマモ。

「まあ大体話は分かったわ。でもシロ、あんた勘違いしているみたいだけど、私も明日注射受けるわよ?」
「えっ、そーなんでござるか?じゃあ、一緒に逃げるでござるよ。」
と言って、シロは立ち上がり再び窓のほうに歩き出す。
「私は逃げないわよ。」
「何ででござるか?」
シロは驚き振り返りながら聞く。それにタマモは問いで返した。
「もしかしてあんた、前にも逃げ出したことあった?」
「?、あるでござるよ?」
問い返された意図が分からず疑問符を浮かべながら答えるシロに、タマモは浅くため息をつきながらつぶやく。
「どうりで美神があんな事言ってくるわけだ。」
「??」
ますます疑問符を浮かべるシロ。
それをちらりと見てからタマモは話し始めた。

「今日の朝、あんたが横島と散歩に出かけている間、おキヌちゃんと美神から『明日、予防注射があるけど逃げたりしないでおとなしく受けてほしい。受けてくれたらお願いを聞く。』って話があったのよ。万一私が逃げて騒ぎになったら、美神が私を退治していないのがばれちゃうからっていうのは分かったけど、いやに念を押してくると思ったら、あんたが前に逃げた事があったからだったのね。」
「そんなことがあったんでござるか?タマモだけお願いを聞くなんてずるいでござる!」
逃げる計画を立てたくせに駄々をこねるシロ。

「だったらあんたも『逃げないからお願いを聞いてくれ』って言えばいいじゃない。」
「そうでござるけど〜〜。」
「だいたい逃げたとして、あの美神から逃げ切れると思うの?結局注射されるんだったら、お願い聞いてもらったほうが得じゃない。」
「それもそうでござるな。」
と、あっさり納得してしまうシロ。
「じゃあ、もうさっさと寝て明日連れて行かれる前に話を切り出すことね。」
と言うなりタマモはベッドにもぐりこんだ。シロも自分のベッドに入る。心地よいベッドの感触に、すぐに睡魔が襲ってくる。

「ところで、タマモはなにをお願いしたのでござるか?」
「月に一回『最強(当店比)のきつねうどん』の出前。」

そんなやり取りを最後に、その日はふたりとも眠りに落ちた。









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