ザ・グレート・展開予測ショー

おべんとー


投稿者名:Maria's Crisis
投稿日時:(02/ 9/26)

〜〜〜hazuki様の名作「おべんとー」のオマージュ作品です〜〜〜






ゆったりと唇を吊り上げ、目尻を下げ・・・微笑む。
あどけなく・・・。
無邪気に・・・微笑む。
窓に両腕で頬杖をつき、ぶらぶらと尻尾を動かしながらあの人のことを考える。
雲ひとつない空。
どこまでも続く青い空の斜め前に、太陽が一個。
(まあ、二個も三個もあったら、さぞかし暑いでござろうな・・・)
そんなどうでもいいことを思いながら・・・また笑う。
傍から見たらおかしいことこの上ないだろう。
なにがあったのかは知らないが、にへらにへら、と空を見て笑っているのだから。
「シロ・・・、なんか薄気味悪いわよ・・・?」
タマモの呼ぶ声。
「ん〜、なあんでござるかっ?」
聞こえなかったふりをする自分。
自分の手のひらには、大きなお弁当箱の感触がまだ残っている。
いつもなら・・・、自分には持つことができなかった一つの勇気。
人狼である自分も人間のように、食事を採る必要がある。
なかには、食べなくていいというものもいるが・・・、少なくとも自分はその範疇ではない。
だから、みんなが言う食欲というものはよく分かっている。
憧れの先輩にちょこれーとやらお弁当を作るというものに憧れたりもするし、それを自分も食べたいと思う。
だから、その『誰かに自分の手作りの食べ物』を贈るということをやってみたかったのだ。
もちろんその憧れの行動は、なんというか当たり前というか・・・、あの人にお願いする。
なにしろ、自分が特別な想いで、初めて作る手料理なのだ。
そんな大事なお弁当を他の人に食べてもらおうなど、はっきり言って思えない・・・。
このお弁当は、自分の命の次に大事な物・・・、奪われそうなら、命を賭してでも守り抜く覚悟。
(ある一部の例外=美神さんによる強制執行)

だが、今回は・・・、ある意味いやがらせ(?)をしているようなものである・・・。
おかずは、牛肉、豚肉、鳥肉・・・のフルコース。
「タコさんウィンナー」は、気合が入り過ぎて、その足の数は倍の16本。
さらに、肉を詰め込み過ぎて、主食のご飯がお漬物程度にしか入りきらなかったのだ。

それでも・・・、シロは一生懸命なのだし、まあ、胃の調子は崩しそうだが、食べられないものではないのだ。
元々忠誠心は人一倍強い(横島クン限定だが)、それで今日お弁当を作ってあげるという決心をしたのだ。
もちろん・・・、横島クンの複雑な想いなどはわかっていない。
だけど・・・、うれしかったのだ。
渡された大きな箱を見て・・・、「へえ、シロが作ってくれたのかー!うれしいよ!ありがとう!」と言ってくれた。

横島先生のために・・・

夜も寝ずに、火傷も包丁の切り傷にも構わず、一生懸命作った・・・、そしてそれを無事渡すことができた。
それだけのことがとっても・・・うれしいのだ。
そっと・・・、傷だらけの手のひらを眺めてみる。
家庭的な女の子の勲章・・・、いいお嫁さんになれそうだね。

ふと、玄関の辺りで彼の気配を感じた・・・。

早く先生の笑顔が見たい!
先生に「ごちそうさま」って言ってもらいたい!
願わくば「美味しかったよ」って言ってもらいたい!
そして、う〜んと褒めてもらいたい!
それから優しく頭を撫でてもらいたい!

ぎゅっとシロは傷だらけの手のひらを握り締め・・・、
「先生!お帰りなさいでござるっ♪」
と言いながら、玄関へと急いだ。


今日の空は青く澄み渡り、絶好のお弁当日和♪
風も気持ちいいし・・・きっとお弁当はおいしかったことであろう。


 完

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