ザ・グレート・展開予測ショー

黒き翼(12−2)


投稿者名:K&K
投稿日時:(02/ 9/25)

 「シロ、おまえ道案内なんかできるのか?」

 幾度となく繰り返された、帰り道はシロの帰巣本能だけがたよりという散歩の経験から、一応確認
してみる。だが即座に返ってきた答えは想像したとおりのものだった。

 『できないでござる。』

 おもわずコケて運転席の背もたれにぶつけてしまった額をおさえながら、シロを睨みつける。

 『だっだだ大丈夫でござる。美神殿に現場までの地図をかいてもらったでござる。運転手殿、この
  地図に書いてある場所まで大至急お願いしますでござる。』

 横島の視線に殺気を感じたのか、あわててGパンのポケットから地図を出すとドライバーに手渡し
た。それを見て、いままで二人のやり取りを呆れ顔でみていた運転手の顔が微かに青ざめる。

 「お嬢ちゃん、ここはあの幽霊屋敷じゃないか。お嬢ちゃんみたいにかわいい子がこんな所になん
  の用があるのかな。」

 『拙者、美神令子除霊事務所のアシスタントで人狼族の犬塚シロと申す者でござる。先程まで仲間
  とともにその幽霊屋敷の除霊を行っていたのでござるが、今はこちらの横島センセーを迎えに来
  たのでござる。横島センセーは拙者の先輩アシスタントで・・・』

 かわいいと言われたのがうれしかったのか、シッポを猛烈にふりながら、二人の自己紹介を始めた
シロを制して横島が口を開いた。

 「すんません運転手さん、現地で仲間が待ってるんでいそいでもらえますか。」

 ドライバーは少し青ざめた顔でムリヤリ笑顔を作ると車を発進させた。ドライバーはしばらく無言
で車を走らせていたが、やかて落ち着いてきたのか、除霊事務所の仕事についていろいろ聞いてきた
。質問に答えるのは主にシロで、横島は黙って二人のやり取りを聞いていたが、ときおり調子にのっ
たシロが余計なことをしゃべりそうになると、肘で小突いて注意していた。

 「そういや、先月テレビのニュースでオカルトGメンに人狼族出身の捜査官が誕生したっていって
  たけど、もしかしてお嬢ちゃんの知り合いかい。」

 『そうなんでござる。彼らは拙者と同じ村の出身なんでござる。』

 「人狼は人間よりずっと力が強いんだろう?今後はスポーツ選手なんかにもどんどんそうゆうのが
  でてくるのかね。」 

 『さあ、それはどうでござろうか。人間がわれら妖怪を怖がる以上に妖怪は人間を恐れているでご
  ざるゆえ。』

 「へーえ、じゃあお嬢ちゃんも人間が怖いのかい。」

 『はじめて村を出たときはとても怖かったでござる。でも拙者もまわりはいい人ばかりでござるか
  ら、今はあまり怖くないでござる。』

 そんなことを話しているうちに現場に近づいてきたのか、肌に感じる霊気がしだいに強くなってき
た。ドライバーも寒気を感じているのかしきりと腕をこすっている。そろそろ危険だと判断して横島
はタクシーをとめて車を降りた。

 「二人ともケガしないように気をつけろよ。」

 ドライバーは別れ際にそう声をかけると、今来た道を引き返していった。横島は車が見えなくなる
と、まだ手を振っているシロの頭をなでた。

 「シロ、おまえ、いいGSになったな。」

 『へ、どういうことでござるか?』

 「以前隊長がいってたんだよ。GSの仕事は人間とそうでない者の仲立ちをすることだって。あの
  運チャン、今日おまえと話したおかげで、少しは妖怪達のことを理解したんじゃないか。」

 『拙者、そんなこと少しも考えてなかったでござるよ。だから、そんなふうにいわれても、なんだ
  かくすぐったいでござる。でもセンセーに誉められるのはうれしいでござる。』

 「ところでひとつ聞きたいんだが、さっきおまえのまわりはいい人ばかりだと言ったけど、あれは
  本心か?」

 『とっ当然でござる(汗)。』

 「本当に?」

 『う〜〜〜〜、実はたまにいい人ではない人もいるでござる(汗)。』

 「だろ?。」

 「『・・・・・・・・・。』」

 暫くの沈黙の後、二人は同時に笑い出した。ひとしきり笑った後、横島はシロに声をかけた。

 「そろそろいくぞ、美神さんがしびれをきらしている。」

 『はい、でござる。』

 二人は同時に駆け出していた。

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