黒金5・『絶望』
投稿者名:紫
投稿日時:(02/ 9/21)
コスモ・プロセッサの力にも不純物があった。
アシュタロスのもう一つの望みである、『自身の完全な死』。
その思いが、コスモ・プロセッサを操作するときに少しだけ流れ込む。
横島の『同情』と同じぐらい、少しだけ。
ために、全能の『一歩手前』となった両者の戦いは、互角となる。
先に仕掛けたのはどちらだったろうか。『情報戦』が始まった。
世界に満ちる『力』を操るものと、宇宙のタマゴ内からそれを持ってくるものと。
互いに相手を一撃で葬るような情報を作り出し、ぶつける。
霊体を崩壊させる、肉体を粉砕する。
霊基構造を狂わせる、空間ごとえぐり取る、この世から消去する・・・
互いにその情報の性質を読みとり、打ち消しを放つ。
それと完全に同じように『力』の流れを作り、逆向きにぶつければよいのだ。
白銀の電光と、黒金の霞がぶつかり合う。
余波で空気が灼け、大地が砕ける。空間すら歪む。
・・・ミスをした方が負ける。
「・・・ヨコシマ・・・大丈夫かしら・・・。」
さっきから、コスモ・プロセッサがたびたび光り、作動しているようだ。
・・・気になる。
「ちょっと・・・どころじゃなく危ないけど・・・見てきてくれない?」
手のひらから、眷属を呼び出す。
「一匹しか呼び出せないか・・・何かの援護ができれば良かったんだけど。」
数さえそろえれば、かなりの広範囲に幻術をかけることができる。
普通の近接戦闘では、自分の力だけで十分なのであまり使わないが。
「まあいいか。・・・ほら、お行き。」
視覚をリンクさせてからはなす。
蛍が飛んでいく。
・・・遅い。
・・・まあ、蛍だし。
「・・・!霊どもの動きが・・・!」
「バラバラになってきた!?」
「アシュタロスに何か起きているのか・・・!?」
辺りに渦巻いていた悪霊の気が、静まる。
そのおかげで、パピリオがルシオラの気配を確認する事ができた。
霊基構造を譲ったせいで極端に霊力が下がり、死んだと思われていたのである。
「・・・!ルシオラちゃん・・・!?」
(・・・ベスパちゃんは?・・・)
「・・・どーした?パピリオ。」
「ごめん!私・・・ちょっと行くとこがあるでちゅ!!」
さきほど、姉達が争っているらしき感覚があった。
そして今、片方の気配しか感じられないということは・・・?
会わなければ。明確に言いたいことがあるわけではない。
そんなモノが思いつくほど、自分は大人ではない。
だが、とにかく会わなければ。
・・・光が飛んできた。
(・・・蛍?)
アシュタロスは気にもとめなかった。『王』も無視した。
だが横島は一瞬だけ気を逸らした。『王』との同化が乱れ、隙ができる。
「バカめっ・・・!!」
「・・・ウソ・・・ヨコシマ・・・」
「ふん。・・・意外とあっけなかったな。」
「これでもう・・・」
(誰にも邪魔されずにコスモ・プロセッサが使える。)
『王』はアシュタロスとコスモ・プロセッサに対する反作用である。
つまり、これらが存在するうちは、『王』もまた存在し続けるのである。
横島がいたあたりの空間に『力』が集まる。
『力』が情報となり再現される。
徐々に人の形を取り始める。
再生。
この瞬間、勝負がついた。
『王』の放った破滅が『見えた』。
しかし防ぐ気にならない。
相手が絶対に『消えない』事がわかったから。
『勝てない』とわかっている戦いなどしたくない。
絶望。望みが絶たれること。
(・・・はじめから勝ちはなかったのか・・・)
今までは、もしかしたら勝てるかもしれないと考えていたが。
(・・・逆らう事もできないのか・・・)
この世界には。
(・・・なくなってしまえ、こんな世界など・・・)
(・・・私と共に。)
アシュタロス、消滅。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あれ?おかしいな。また一週間経ってしまったぞ。・・・話のイメージがあっても、書けるとは限らないんだなあと痛感した第五話です。うう、毎日書ける人って凄い。
ええもう。なんだか前回とつながりが悪いし、途中で「あ、パピリオとベスパの事も書かなきゃ」とか気づくし、ひどく考え込んだ割になんか変だし、話に矛盾がありそうだし。さっぱりですな(←あ、コレ前回も言ったな)。
・・・どんなことでもいいんで、コメントをくれると嬉しいです。では。
今までの
コメント:
- アシュと「王」の戦いが、紫さんが言う「反作用」の力により予め殆ど決着が着いていたワケですね。ある意味望みどおりの死を遂げることの出来たアシュでありますが、これで全てが1件落着したのでしょうか? ルシオラって眷属を使えましたっけ?とか思いましたが余り違和感を感じませんでしたので個人的にはOKです(笑)。次回も楽しみにしております♪ (kitchensink)
- 神魔人界、そして『世界の意思』と云う世の全てに仇と成されたアシュタロス。究極と言って良いほどに孤独な彼にはふさわしい最期、そして死に方だったのかも知れません。
最期の瞬間にすら、世界を呪う以外に言葉を持たなかった彼は、実に憐れな存在なのでしょう。 (黒犬)
- kitchensinkさん、黒犬さん、コメント有り難うございます。
えーと、まだ一件落着にはしません。もうひと騒動あります。
ルシオラの眷属ですが、完全に妄想です。気にしないで下さい(爆)。
アシュタロス。自分を否定する事(自殺)さえ許されなかった彼。・・・そーいえば、コミックス三十五巻の最高指導者達のセリフには、なぜか反感を覚えました。何なんでしょう?
・・・では。 (紫)
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa