ザ・グレート・展開予測ショー

心は共に・3


投稿者名:マサ
投稿日時:(02/ 9/17)

最近は美神さんが休業してしまって俺は学校に通う日が多くなった。
今日も学校が終わり、アパートの自室に戻る。
「…おキヌちゃん、元気にしてるかな?」
おキヌちゃんと別れてからどの位経っただろう。
今でも寂しさを拭いきれずに一人ごちる事が多い。
そんな時、突如電話が鳴り出した。
「……はい?」
『忠夫〜、元気してる〜?』
手に持った受話器から聞こえてきたのは陽気な懐かしい声。
電話の主は、お袋。
「…まあ、それなりに…ぼちぼちとな…」
『何なの、その返事は。何か気になることがあるように思えるけど?』
「…うん。……なんで分かるんだよ?」
『あんた、母さんを嘗めるんじゃないの!その声聞けばわかるわよ』
叱り付ける様な感じで、だけど、嫌な気分でもない。
「そんなもんかねぇ〜」
半分嘲るように返す。
俺にとっては自然なやり取りだ。
『いい、忠夫…』
「なんだよ」
『母さんはね、あんたをそんな意気地なしに育てた覚えは無いよ。あのね、……………男ならいじいじしとらんで何か行動せなあかんで!母さんはなーんも知らん。せやけどな、一つだけ言えることがある!…』
一つ深呼吸をしたかと思うと、次の瞬間に俺はひっくり返った。
『…シャキッとせい、シャキッと!!!!』
「…か、母さん…。…その…ありがと……」
『次に電話掛けた時は全部解決してるのよ』
「…そうしとく」
ガチャン
俺は受話器を下ろすと急いで服を着替えてアパートを出た。

「…あのバカ息子が……」
ナルニアの母・横島百合子は微笑する。







「令子ちゃんいる〜〜〜〜〜〜?」
事務所でおキヌちゃんがクリスマスに横島君からプレゼントされた服を眺めていた私の所に一人の来客。
冥子か…、こんな時に。
仕方なく玄関に出て一言。
「今あんたの相手してる暇無いんだけど」
本当は暇過ぎるくらいだったけど、冥子に関わるとろくな事が無いのよね。
「ひどい〜〜〜〜〜〜!寂しがってると思ったから〜〜〜、来てあげたのに〜〜〜〜〜〜!」
「……分かったわよ、入んなさい」
無理に返すわけにも行かないし、話だけでも聞いとくか…。
私と冥子は事務所のソファーに向かい合って座る。
「あのね〜〜〜、令子ちゃん。おキヌちゃんが居なくなって寂しいのは分かるけど〜〜〜、元気出さないと駄目よ〜〜〜〜〜〜」
「そんな事言いに来たの?私は別に……」
「私もね〜〜〜、生まれた時から〜〜〜傍に式神たちがいたから〜〜〜、一匹でも居なくなると〜〜〜とっても寂しいの〜〜〜〜〜〜。ずっと一緒の間柄って〜〜〜そういうものじゃないかしら〜〜〜〜〜〜」
何時もの如く聞いてて腹が立つくらい間延びした声が室内に響く。
「あ〜そう」
「くすっ…令子ちゃんなら〜〜〜、きっとそう言うと思ったわ〜〜〜〜〜〜。令子ちゃん……最近仕事休んでるしょ〜〜〜〜〜〜?」
「…だから何よ」
「気持ちの整理が出来なくて仕事が手に付かないのよね〜〜〜〜〜〜」
 (ばんっ)
もう頭に来た。
私はセンターテーブルを手で叩き、立ち上がる。
「何が言いたいのよ!!そんな事で私が参わけないし、何時休もうと私の勝手でしょ?!」
「………」
言い終わった後で、冥子が泣き出す事を危惧した。
何時ものパターンで事務所が吹き飛ばされる―そう思っていた。
けれど、今回の冥子の顔が真剣なものだったために私は驚きを隠せない。
あの―泣き虫が。
次の瞬間に、私の驚きは頂点に達する。
脳裏に焼き付いて離れないほどに、信じ難いことが。
すぅっと冥子は息を吸い込み、そして…。
「令子ちゃん!!!!」
「(びくっ)…………!!??」
眉を少しばかり引きつらせ、怒鳴った。
このコにとっては精一杯の、私にとっては初めて見る極めて希少な―姿。
「………そんなに意地を張ること無いのよ〜〜〜〜〜〜。寂しい時は〜〜〜みんな寂しいの〜〜〜〜〜〜。何時までも沈んでるより〜〜〜、一回おキヌちゃんがどうしてるか見に行ってみたら〜〜〜すっきるするかも知れないわ〜〜〜〜〜〜」
一呼吸置いて、何時もの笑顔に戻る冥子。
「……ありがと。まさか、あんたに教えられるとはね」
破裂しそうな心臓を落ち着かせ、自嘲気味に笑う。
まだまだ甘いわね、私も。
「だって〜〜〜、私の方が〜〜〜お姉さんさんだもの〜〜〜〜〜〜」
 (がくっ)
たった一つの違いでしょーが!

 (バアァンッ)
勢いよくドアを開けて入ってきたのは横島クン。
「お願いします!給料を前借させてください!!」
行き成り地面に突っ伏して何を言うかこいつは。
「どういうつもり?」
「そ、それは…その……」
口ごもったか…。
「当ててあげましょうか〜〜〜〜〜〜?おキヌちゃんのが居なくて寂しいから〜〜〜様子を見に行くのね〜〜〜〜〜〜」
「な、何故それを………」
横島クンも…寂し…かった…?
「だって〜〜〜、令子ちゃんも…むぐっんん〜〜〜〜っ!」
ホントに、悪意がない分質が悪い。
「どーしたんスか?」
「ああ、なんでもないのよ。こっちの話。で、給料を前借したいとかほざいてたわね〜」
「い、いえ、ダメならいーんですっ!ごめんなさい!」
また土下座してる。
「前借りなんて許さないわよ!…だけど、私も行こうかしら」
「連れてってくれるんスか?!」
「但し、今日はもう行くには遅いから明日辺りに下校時刻を見計らっていきましょう」
「そっかぁ、美神さんも何だかんだで結構寂しがりやだから……あ゛!」
次の瞬間には事務所の床に血まみれのバカが寝ていたわ。
「……おキヌちゃんに会ったら、絶対にナンパしてやりますからね」
「好きにしなさい。無視されても知らないわよ」

「じゃ〜〜〜、私は〜〜〜帰るわ〜〜〜〜〜〜」
「はいはい」
私は小声でありがと、って言ったけど、聞こえたみたいで冥子は嬉しそうに笑って帰っていった。






その後、事務所から少し離れた所での事。
「令子ちゃんたら〜〜〜怒るんだモノ〜〜〜〜〜〜。私〜〜〜私〜〜〜恐かった〜〜〜〜〜〜!……………ふえぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!」
 (ドゴオオオォォォ―――ッ)
プッツン状態の冥子が帰り道を式神を従えて練り歩きましたとさ。




                  ――つづく――

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