ザ・グレート・展開予測ショー

散歩道


投稿者名:Maria's Crisis
投稿日時:(02/ 9/13)

走ろう♪走ろう♪

太陽の日差しをに背に受けて


走ろう♪走ろう♪

この知らない道を


走ろう♪走ろう♪

青い森を突き抜け


走ろう♪走ろう♪

あの頃の思い出を胸に・・・






「ええ〜い!いい加減止まらんかい!このバカ犬!!」
「キャイン!」
急に首を思いっきり引っ張られ、足を止める。
振り向くと、汗だくで蒼白している先生の顔があった。

「半分気ぃ失ってる間に、こんな赤城山の麓まで突っ走りやがって!!
一体埼玉県を何分で縦断したんだ・・・?」
ハァ〜ッと先生は大きくため息をつく。

「も、申し訳ないでござる、先生・・・。つい夢中になって・・・」

「言うこと聞かないと、このままこの山に捨てて、野生に返すぞ!?」
先生の頬が引きつっている・・・。

「そんな・・・、拙者・・・、マンションに引っ越すが為に捨てられるペットみたいなのは嫌でござるよ・・・」
自分の目から涙がこぼれ落ちるのを見て慌てる先生・・・。

「ば、ばか!冗談に決まってるだろ!だから泣くのはやめてくれ!」

「ホントでござるか・・・?」
しゃくりあげた声でそう問い返す。

いつのまにか得意になってしまった「嘘泣き」。
父上が見たらきっと、「それでも武士の子か!」とお怒りになられるだろう・・・。

「ああ。まあ、こうやってたまには都会から離れて、新鮮な空気を吸うのもいいもんだしな。この超長距離フルマラソンも、結構いい修行になってるかもしれない。
こうやって健康でいられるのはお前のおかげ・・・」
先生の言葉が終わる前に飛びつく・・・。




「嘘泣き」が「うれし泣き」に変わる瞬間



涙を誤魔化すように先生にしがみつき、顔をなめる。

「ダーッ!だから、そうやってくっつくなー!顔をなめるなー!」

こうやって、先生に突き放される度に思ってしまう・・・。
この行動の意味を先生はご存知なのか・・・?
犬族の最高の愛情表現。

先生のことが・・・、好・・・

はっきり説明するべきなのかもしれないが、自分にはそんな勇気がまだない・・・。
だから、そのことは気にしないふり。

そして、困った顔をする先生を下から見上げる・・・。

先生はにこっと笑うと、その大きな手で自分の頭を優しく撫でてくれた。

『ここで笑顔を見せるなんて、先生はズルいでござる・・・』

そう心の中でつぶやき、そっと先生の胸に紅潮した頬をよせる。



この大きな手・・・。

暖かい温もり・・・。



ずっと・・・、こうしていたい・・・。


再び先生を見上げると、いつのまにか夕陽が彼の顔を赤く染めていた。
その眩しさに目を細める・・・、一瞬父上の顔を見た気がした・・・。


失ってしまった何か・・・。手の届かなくなった何か・・・。



「さ、そろそろ帰ろう。ちょうどご飯の時間になるぞ」
そう言って、先生は自分の頭をポンッと叩く。



先生のその言葉があの頃の父上の言葉と重なる・・・。

野を駆け回り、川を飛び越え、森の中を冒険し、日が暮れると、
丘の上で父上といつも夕陽を眺めていた。
父上の顔と夕陽を交互に見上げていると、頭をポンッと叩かれる・・・。

「さ、そろそろ帰ろう。ちょうどご飯の時間になるぞ」

家に帰ると、母上が笑顔でご飯の支度をして待っていてくれた。
家族団欒のひととき・・・、暖かさ・・・。
母上の作ってくれた美味しいご飯・・・。
自分がご飯をお腹いっぱい食べる様子を、父上と母上は笑顔で見つめていてくれた・・・。

それが当たり前だと思っていた。
永遠にあると思っていた。


失ってしまった何か・・・。手の届かなくなった何か・・・。



我に返ると、先生が見下ろしていた。
あの頃の両親と同じ笑顔で・・・。

一体どのくらいその笑顔に見入っていたのか・・・。

とにかく返事はしなければ・・・。

「はい!でござる!!父・・・じゃなくて、横島先生!!!」

そして、動揺を悟られぬように元来た方向へ走り出す。



失ってしまった何か。

それを取り戻してくれた先生・・・。


手の届かなくなった何か。

今にも手が届きそうな先生・・・。






走ろう♪走ろう♪

夕陽の日差しを背に受けて


走ろう♪走ろう♪

元来た帰り道を


走ろう♪走ろう♪

赤い森を突き抜け


走ろう♪走ろう♪

あの頃の思い出を胸に・・・







走ろう♪走ろう♪

この涙が乾きますように・・・



 完

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