ザ・グレート・展開予測ショー

走れ 西条!!(後編) #新歓企画!『対決!!』Ver.アフロマシーン改


投稿者名:アフロマシーン改
投稿日時:(02/ 9/12)






走れ 西条!!



(嗚呼、トイレはまっこと安らぎの母じゃ〜〜〜!)

すでに脳細胞は、電波な思考しか許していない。
目の前にコンビニが一軒見える。

(ラストチャンス!ダメならふふふふふふ)

西条の脳裏に邪悪な考えがよぎる。
西条は、コンビニに入る前に、自分の下腹を一発思い切りたたき便意を一瞬抑制させた。

「すいません。トイレかりられますか?」

脂汗でぎとぎとしながらも、満面の微笑をうかべる。西条の死力を尽くした渾身の演技だ。

「はい。どうぞ、そのままつきあたりにございます。」

店員がにこやかに手でトイレを指した。
その手の先を、西条は飢狼の目で見つめる。
瞬間移動というものがあるとしたら、まさしく今の西条がその優れた使い手だろう。
西条はまたたくまに、トイレのドアの前にいた。
中に人がいたらなんてことは、すでに想念にない。
いたらいたで西条は、猛烈な勢いでたたき出すだろう。
がばっ!トイレのドアがあいた。
誰もいない。

(僕は呪いをうちやぶったぁ〜〜!!)

脳内で叫ぶとともにベルトをはずしにかかった。
カチャカチャ

「はっはずれない!なんでなんだー!」











「神よ……」















「敵がなぜ攻撃しないか考察する必要がある。
つまりすでに敵は目的を果たしてしまっていることがしばしばある……。」


ワーテルローの戦いについて……ナポレオン語録(偽)























(遠い世界になってしまったな……)












窓からは、柔らかな日の光が常緑樹のフィルターを通してさしこみ、平和な街の音が聞こえてくる。その中にまじって仲むつまじき兄妹と思われる会話ももれてくる。

「ほら、いくぞ。」

「もう〜、お兄ちゃんのえっちっちー!!(プンスカ)まってよ〜。」

近い距離から聞こえているはずだが、はるか遠くの出来事のようにも思える。

(かつての僕と令子ちゃんのようだな……)

時間はどんどん過ぎていくようだ。日差しに朱が混じり始めた。
だんだんと、下半身が冷たくなってきたのを感じ、西条は身震いする。

(いつまでも、このままでいるわけにもいくまいか……)

一度は、真っ白に燃え尽きた西条であったが、ふたたび立ち上がらんとしていた。

(一流の男は、どんな逆境であってもポジティブ・シンキングでなければならんのだよ。)

うつむいていたあごを上にそらす。

(よしんば、この年で……、えいっ!。排泄に間に合わなかったともしてだな!)

こぶしをにぎりしめ、両肩をふるわす

(そう!僕は生きる。そしてこれは事故だ。徐霊中の事故なんだあぁぁぁぁぁぁぁっ!!)

何度も両手を力強くあげて、ガッツポーズをとる西条。
立ち直ったら行動は早い。ズボンを捨て、ブリーフを捨て、身元が知れるものを残さないようにチェックする。結局上着とワイシャツにネクタイ、それ以外は身につけない姿となった。

(いや、まてよ。ベルトもつけたらファッションのニューモードとごまかせるかもしれないな。)

嗚呼!西条、まだ完全に立ち直っておらず思考判断が錯乱気味である。

(これからどうする?ホテルに居を構えたのは失敗だったな。この姿では入れない。いっそキヨさんに事情を話してきてもらうか……。いや、しかし万が一話が漏れるようなことがあったら!横島君……、いや横島のイカ野郎は、鬼の首をとったみたいにいいふらすに違いない。彼にだけは知られたくない。

ううっ、けれど魔鈴君に知られたら、『はい、パン○ース。これからはお店に来るのは遠慮してくださいね(笑顔)。他のお客様の迷惑になりますし、お掃除するの大変ですから。』とかいわれかねん。

なによりも令子ちゃん!が問題だ。僕の光源氏計画はどうなる!?途中で留学したために刷り込みは中途半端なままだし、アホ横島が妨害するおかげで頓挫したままだ。たとえロリコンとさげすまされようとも僕の本命は令子ちゃんなんだ。ここでばれたら、僕の遠大な野望はついえてしまう。

隊長!あの人に知られたら終わりだ。娘さんたちとの交際も、隊長が僕に寄せているであろう熱い思い(?)も。それに職場に知られたら……、僕の築き上げてきた信頼と実績が崩壊する!……里香くん、あゆみくん、さらくん、etc……。君たちの美しい口に陰口は似合わないよ。ぶすはよるな!逝ってよし!

ひのめちゃん!令子ちゃんがダメなときに備えて、RE光源氏計画を発動させて「ステキなオジサマ(ハート)」なんていわせるはずだったのに、「うんこたれのおじさん」なんて先入観が植え付けられたら台無しだあ〜〜〜!!)




はあはあはあはあ……、

全身に汗がわきでて、のどが異常にかわく。服が気持ち悪い。うわぎも脱いで捨てることにした。

(そうだ!僕はオカルトGメンの事務所の鍵をもっている。結界も僕がはったもんだ。入るのはたやすい。たしかあそこのロッカーに替えの服が入っているはずだ!)

靴と靴下も最終的に脱いだ。身にまとっているのは、ネクタイとワイシャツとベルトのみ。

(夜まで待つか……、いやここにもかれこれ一時間以上いる。店の人に不審がられてチェックされたらやばい!それまでにここをでないと!)

西条は、輸吉さんを何枚かトイレットペーパーに差し込むと(そこしかきれいな場所はなかったのだ!)

ドアの鍵をあけてそっと店内をうかがった。
マジックミラー越しに、三人ほど立ち読みしている客が移る。レジには二人店員が立っているようだ。西条が、外にでるためには書籍コーナーを通り抜けて、出口で店員の視線をかわさなければならない。

(いけるか?いやいかねばならん。ここに住むわけにもいかんからね。)

西条は、アシュタロス戦のときなど比較にならないほどプレッシャーに耐えながら、その一歩を踏み出した。
走りたくなる。
でもそれは耐えなければならない。つとめて平静をよそわなければならない。
出口が遠い。時計の針ものろまになったらしい。
客の一人がちらっと西条を見た。

(どきっ!はわわ〜〜〜)

西条の頭の中を奇怪な言葉がかけめぐる。
客はまた雑誌に視線を戻した。どうやら気づかなかったらしい。
店員はおしゃべりに夢中だ。
なんとか無事に外にでることができた。

(暗くなるまで公園に身を隠そう。)

西条はどうどうとしたそぶりをよそおいながら、歩道を歩いていく。ちなみに改めてこのときの西条のすがたを描写すると、はだしにワイシャツとネクタイ、ベルトを締めたままの、照る照る坊主のような姿だ。コンビニから100mほど歩いたところで、二人の人間とすれ違ったがばれなかった。
人はそう、たいがい他人のことなど無関心なのだ。あるいは、係わり合いになるのを恐れて無視したのかもしれない。

(公園まで約300m)

西条はゆく。

(あと200m)

前方に強敵が現れた。

女子高生の集団だ。
汗が全身からふきだすのを感じながら、西条は歩き続けた。曲がり道はない。一本道である。女子高生達はおしゃべりに夢中だ。
互いの距離が5mまで近づいたとき、悲劇は起こった。

「キャーーー!」

「?、どうしたの女華ちゃん?って、うそっ!!キャーーー!」

「女華ちゃっ……、イヤーーーヘンタイ〜〜!!」

女子高生のなかできわめてごつい、プロレスラーの体型をしたような女の子が、西条の姿に気づき奇声をあげたのだ。
向こう側の歩道や、車道からなんだなんだと人の視線が女子高生に集まり、そして西条に移った。一瞬の間の沈黙、西条にはとても長く感じられた。
そして、空気は怒号と悲鳴に満たされた。

弾けるように走り出す西条
ワイシャツのすそがひらひらと舞い上がり、欲求不満の奥様たちを悩殺する。

走れ 西条!!

何人かが追いかけてくる。

走れ 西条!!

警察に連絡している人も見受けられる。

走れ 西条!!

社会復帰のチャンスと危機一髪だ。

走れ 西条!!

おなかがまた冷たくなってきた。

走れ 西条!!

人の不幸は蜜の味だぞ。

走れ 西条!!








なんとか振り切ったようだ。西条はいま公園の公衆便所にいる。だがパトカーのサイレンが近いところから聞こえている。けして安全な場所ではない。
気がつくとシャツが裂けて、ボタンはすべてとんでしまっている。追っ手に途中つかまれてびりびりに破けてしまったらしい。ベルトは逃走にじゃまなので、途中で捨てた。首元にネクタイだけが残っている。

(ここは、まずい。発見されるのは時間の問題だ。幸い日もとうとう暮れた。いざゆかん!僕の尊厳をかけて!)

走れ西条!

事務所はもうすぐだ。















〜エピローグ〜




それから遠くない出来事。








「ぶつぶつぶつ……、」

西条は美神事務所に事件解決の糸口を探しに、無精ひげを生やし、何日もの徹夜で目をはらしてやってきた。

「大丈夫、西条さん?」

美神が心配そうな顔をする。
かつてないほどげっそりとした姿だ。
扉が開き、シロとタマモが入ってきた。

「うっ!タバコと汗のにおいっ!」

「それとうんちとおしっこのにおいも!」

「失礼なっ、君たち!。そこまで不潔にしとらんわ!」

(どきどきどき、しまったぁ!そうだよ、ここには嗅覚の優れた二人がいたんだったぁ。)


例の逃走劇のあと、無事に事務所にたどり着いた西条ではあったが、直後重大事件が発生し、何日も事務所で帰らずの日々を送っていた。トラウマを消そうと、必死に事件にのめりこむ西条。その事件のおかげでストリートキングの件は、あまり表に出ず、うやむやに消えてしまったのが不幸中の幸い?ではある。

(ちなみに重大事件とは、かみそりに宿る悪霊にシロとタマモが婦警さんルックで立ち向かい、西条はいいとこなしのあの事件である。)





走れ 西条!!












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