ザ・グレート・展開予測ショー

走れ 西条!!(中編) #新歓企画!『対決!!』Ver.アフロマシーン改


投稿者名:アフロマシーン改
投稿日時:(02/ 9/12)





日差しは夏のものだが、空気はめっきりと涼しい秋の気配が増している。心地よい空気を楽しみながら西条は、すぐ隣の美神令子事務所についた。

「こんにちは、令子ちゃん。」

「あら、西条さん。」

美神令子は、恒例行事のごとく手馴れた手つきで、助手の男をしばいていた。

「君もこりん男だな〜。」

「ううっ、これは過剰防衛や〜〜。はおあっ!?」

「なんだって!もう一回いってみんかい!コラ!?」

「ううっ、堪忍や〜〜、しかたなかったんや〜。」

「あの〜、美神さん。このままだと横島さんが死んじゃいますよ〜。」

おキヌちゃんが間にはいって、ようやくどつきの儀式は収まった。

「ところで西条さん。今日はどうしたの?」

「令子ちゃんに仕事を手伝ってもらいたくてね。今日はオフだろう?」

「ええ、西条さんの頼みなら!……でも参考までにギャラはいかほどもらえるの?(キラキラ)」

自称乙女のひかりを発する美神。
ぐはっ!?突如飛来した神痛根の一撃に悶絶する語り手。

「そう来ると思ってね。僕からポケットマネーを1億円だそう!」

「本当!するっ、するする何でも言って?私はどこにいけばいいの?」

(ホント、令子ちゃんだな〜〜。だがこれでまた一歩僕の野望に近づいたのだよ、ふふふ。)

今回の徐霊は、トイレに間に合わず公衆の面前でいたしてしまい、自殺したエリート官僚である。その無念が悪霊となり、東京駅の周りの霊をひきこんでやっかいなものになっているという。

「なんでもらしたぐらいで、死にますかね。俺ならうんこ食べて命が助かるなら、くっちゃいますけどね。」

横島は不思議そうにつぶやいた。

「あんた……、正真正銘の馬鹿ね。」

美神があきれている。

「令子ちゃん、横島君、おきぬちゃん!君たちは、右側から回り込んでくれたまえ!
 僕は正面から突入する!」

「OK,西条さん、気をつけてね。」

悪霊が、西条の姿を認識したようだ。

「トイレは……神聖なものなり〜。」

意味不明な言葉をぶつぶつ繰り返している。

「とうっ!僕の正義の剣をくらいたまえ!」

ずしゃっ!!

「ぎゃああああああああああ〜〜〜」

西条は一撃で悪霊をしとめてしまった。

(ふっ!令子ちゃんも僕の勇姿に惚れ直すだろう。)

と思った瞬間、すっと腰に冷たいものが走ったような気がした。
悪霊がしぶとく生き残り、西条に襲い掛かったのである。
ぴかっ!西条と悪霊のあいだに、ひかりが走った。横島が投げた「浄」の文殊である。
悪霊は、あっさりと昇天した。

「ちっ!つまらないものを助けちまったぜ。」

横島が毒づく。

「……ありがとう。横島君。だが貸し借りはなしだよ。」

西条は不機嫌そうにつぶやいた。

「西条さん!大丈夫?」

「大丈夫さ、令子ちゃん。これから別口の仕事があるから今日はもういいよ。ありがとう。
また今夜ね。(ニヤリ)」

「なんですとー!ぶほっ!?」

叫ぶ横島に顔面パンチをいれる美神。

「飲みにいくだけよ!この馬鹿横島!」

「それじゃ、僕はこれで……、報酬は明日振り込んでおくよ。じゃあ。」

「おつかれさまです、西条さん。」

おきぬちゃんの挨拶にもそそくさと西条は去っていった。
いったい何が西条におきたのか?
ごく生理的な欲求である。
トイレに行きたくなったのである。それも個室のほうに。

「どれ駅のトイレはと、これは?」

すさまじい長蛇の列

(ここは、やめたほうがいいな。いったん外に出よう。)

デパートにはいった西条。ここもいっぱいだ。
ならその隣のオフィスビルはと……
西条の鼻先で個室に入った男が、ノックをすれども返すばかりで出てくる気配がない。

(いったいどうしたことだ。この周囲で集団食中毒でもはやっているのかな?)

次から次へと、トイレが使えそうなところにいってみるのだが清掃中であったり、行列であったり、ずっと人が出てこなかったりする。さすがに西条も余裕がなくなってき始めていた。

(くうっ!なんでここも?)

(たかがトイレだぞ?なんで僕が振り回されなければならない。やることはやまほどあるのに。) 

脂汗がにじみ始めた。

(くっ!この腹の中をテレポートしてやりたいよ!)

浮浪者がたむろする公園にまでやってきた。公衆トイレをノックする。
がさごそ、中からは音がするだけだ。

(うそっ!?まさか人が住んでる?)

西条はよろよろと小走りにトイレから走り出た。公園の藪がとても魅力的に映る。

(はっ!いかん、いかん、僕のプライドを売るにはまだ早すぎる。)

西条はトイレを求め、都内をさまよった。

「すいません。うちはトイレをお貸ししていないんですよ。」

コンビニの店員は無情にも言い放つ。

(ああっ!神よ。これからはトイレにいくたびに、うやうやしい気持ちになるでしょう。)

断続的に便意の波が西条を襲う。

(ビバ、トイレ!)

脈絡もない思考が、西条の意識を侵食し始めている。

(令子ちゃん、助けてくれ!)

頼られた令子嬢は、きっと困惑するだろう。
便意の波のあとには、ささやかな小康状態が訪れる。

(ああっ、トイレは神聖なものなり!あれ?……って、どこか聞いたセリフだな。)

西条の脳裏に、先ほど退治した悪霊がひらめく。

(そうか……、あのとき呪われてしまったようだ。くっ!僕としたことがつまらんみすを!!)

再び、便意の本流が西条を襲い始める。

「神よ!……、トイレよ!……うあっ!」

西条は一心不乱にトイレのドアを乱れうちし始めた。
中に入っている人は、おびえているのか出てくる様子がない。
がやがやと人だかりがし始めた。
西条はあきらめると、矢のように走り去った。

走れ 西条!!

西条の心臓は、トイレを求めて早鐘のように鳴っていた。

走れ 西条!!






〜まだつづく〜




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