ザ・グレート・展開予測ショー

もう一つの物語(24)


投稿者名:hoge太郎
投稿日時:(02/ 9/ 9)


4人は、深い森の中を歩いていた。
車は、脇に寄せて枝を被せて隠してある。
横島は、小龍姫に肩を貸して貰って歩いている。相当苦しそうだ。
早苗も、息が上がっている。

「はぁ、はぁ、た、確か・・・このあたりなんだけどな。」

横島は、周りを見渡す。

「ヒャクメ様。このあたりで、空間が歪んでいる所はありませんか?」
「調べてみるねー。」

そう言って、ヒャクメは周りをゆっくりと見渡していく。
ふと、その動きが止まった。

「ここから、200メートル程行ったところに、僅かな空間の歪みがあるねー。」
「行きましょう。大丈夫ですか?横島さん。」
「はぁ、はぁ、す、すんません。まだ、なんとか大丈夫っす。」

やがて、空間の歪みがある地点に到着した。

「ヒャクメ、お願いできる?
私は霊力が消耗してるので、空間に穴を開けることができないの。」
「やってみるねー。」

ヒャクメは空間に手を伸ばして霊力を送り始めた。
空間を無理矢理こじ開ける嫌な音が、静かな森に響く。
やがて、空間に穴ができた。全く違う景色が眼前に広がる。

「どこだべ?ここは。」

早苗が辺りを見渡そうとした。
だが、いつのまにか剣を持った複数の侍に囲まれている。

「ひっ!な、なんだべ?あんたら!」
「貴様らこそなにものだ。結界に近づいていた頃から監視していた。
どうやって、この場所を知った?」

侍は、早苗に剣を向けたまま、鋭い目をしている。
小龍姫は、片手で御神刀に手を伸ばした。

「どうも、お久しぶりっす。俺っす。横島っす。」
「・・・横島殿!?」
「すんません。事情は後でお話するっす。とりあえず、中に入れて貰えないっすかね。」
「おお、もちろん大歓迎でござる!シロの師匠ではござらぬか!
ささ、参られよ!」

ここは、人狼族の隠れ里であった。シロの故郷である。
4人は、長老の元へ向かった。

「そうですか。お二人は神族でいらっしゃるのか。
そして、横島殿は、魔族との混血であると。なんとまあ、
ワシの知らない内に、随分とお変わりになられたもんじゃわい。」

横島は、経緯を長老に話し終えた。
そして、自分たちをかくまって欲しいと。

「水くさいことを仰るものですなあ。横島殿は、シロの師匠ではござらぬか。
それに、以前の事件の時も、随分と世話になったもんですじゃ。
傷が癒えるまで、気の済むまでここにご逗留くだされ。」
「あ、ありがとうございます。長老・・・。」

そう言って横島は頭を下げた。
そして、頭を下げたまま、畳に倒れ込んだ。

「横島さん!」
「傷に加え、今までの疲労が重なったのねー!」
「長老様!申し訳ねえっすけど、寝るとこをお願いしますだ!」
「うむ。おい、ご案内するのじゃ!」

こうして、横島除霊事務所の面々とヒャクメは、人狼族の里へ、
身を隠すことになった。

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横島達が、人狼族の里に身を隠してから、1ヶ月半が経とうとしていた。
横島は、3週間目くらいから、歩き回れるようになっている。
今は、霊波刀の訓練を、人狼族の若者達に行っていた。

早苗や小龍姫、そしてヒャクメは色々な手伝いをしている。
畑仕事、食事の用意、木の伐採など。
特に、小龍姫は、見かけに寄らず非常に力が強いので、力仕事に重宝されている。
早苗とヒャクメは、結界の監視を毎日行っていた。

「それにしても、強力な結界よねー。」
「まったくだべ。何百年も、人に見つからずにいたというのは、伊達じゃないだべな。」
「今のところ、神魔族の目からは、逃れられているみたいだし、なんとか大丈夫そうよねー。」
「でも、いつまでここにいるんだろ。わたすは、山田君に会いたいべ・・・。」
「そうなのよねー。」

早苗は、別の結界を見に行き、ヒャクメは長老宅へ戻った。
4人は、長老宅へ居候しているのだ。
洗面所へ向かったヒャクメは、そこで小龍姫と会う。
小龍姫は、ちょっと苦しそうにしている。

「どうしたのー?小龍姫。」
「え?あ、ヒャクメ。昨日のお刺身があたったみたい。ちょっと気分が悪くって。」
「じゃあ、見てあげるわよー。一緒に部屋へ行きましょー。」
「・・・お願いするわ。」

こうして、小龍姫とヒャクメは部屋へ戻る。
小龍姫に線を繋げ、キーボードを叩いているヒャクメ。
そのヒャクメの目が、大きく開いた。

「・・・小龍姫!あなた!?」
「え?」

夕方になった。
長老宅がにわかに騒がしくなった。
部屋で話し込んでいた、小龍姫とヒャクメが長老の元へ駆けつける。

「どうかしたのですか?」
「結界に近づいているものがいるらしいのじゃ。人数は正確なところは不明だが、
4〜5名だそうだ。早苗殿が、知らせてくれた。早苗殿は、現在結界の入り口で、
監視と、結界の強化をしておられる。」
『ま、まさか神魔族特殊部隊!?』

やがて、横島も駆けつける。

「分かりました。もう、ここまで追っ手が来てしまっては、逃げることもできないっす。
とにかく、できる限りの事をしてみるよ。人狼族のみんなには、迷惑をかけないようにします。」
「何を言っておられるのじゃ。我らも戦うぞ!」
「いえ。これは俺の、いや、俺たちの問題なんっすよ。
人狼族のみんなを巻き込むわけにはいきません。俺たちを匿って頂いただけで、十分ありがたいです。
時間が無いっす。俺は、結界の入り口で待ち伏せをします。」
「私も行きます!」
「私も行くねー。役に立つかどうかわかんないけどねー。」

そう言って、急いで結界の入り口へ向かう3人。
早苗は、お札を使って入り口に、もう一重の結界を張っていた。
結界に、侵入者の接近を伝える影が映っている。
空間を結界でずらしているので、結界の外がはっきりとは分からないのだ。

「相手は、まもなく来るだべ!」

そう言って、神通棍に霊力を注ぎ込む早苗。
キンッという音と共に、霊気の棒が現れた。

「こんなことなら、もっと訓練しておくべきだっただな。今更だけど。」
「わりーな、早苗ちゃん。」
「それこそ、今更だべ。」
「来ます!」

小龍姫が鋭く叫ぶ。
結界はなんの抵抗もせずに、すんなりと開いてしまった。

「そ、そんな!?」

早苗が愕然としている。
侵入者を改めて見据える。

「おキヌちゃん!?美神さんも!」

なんと、美神除霊事務所の面々であった。
シロの通行手形を使ったので、結界を破る必要が無かったのである。

「ふん、やっぱりここに居たってわけね。
私の勘も、相変わらず冴えてるわねー。」

だが、小龍姫は構えを解かない。
横島は、美神を見つめた。

「・・・俺を殺しに来たんすか?美神さん。」
「あんたを殺すのは、私の念願だったしねえ。」
「そうっすか。」

そう言うと、横島は強力な霊波刀を出現させる。
おキヌちゃんが慌てて美神に叫ぶ。

「ちょ、ちょっと美神さん!冗談はこれくらいにしてください!
横島さんが、本気にしてるじゃないですか!」
「冗談が通じないやつは、もてないわよ?横島クン。」
「笑えない冗談は、趣味悪いっすよ?美神さん。」

ニヤリと笑う美神と横島。
構えを解く小龍姫と早苗。
後ろからそっと見ていたヒャクメも安心して出てくる。
シロが横島に飛びついた。

「せんせえええええええええ!!無事だったでござるかあ!!
拙者は、拙者は、うわーーーん!」
「相変わらず悪運は強いわね。横島。」
「久しぶりだな。ダチがピンチになってるってんで、力を貸しに来たぜ。」

強力な助っ人が、人狼族の里にたどり着いた。

・・・続く。

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