ザ・グレート・展開予測ショー

#新歓企画!『対決!!』Ver.みみかき(完)


投稿者名:みみかき
投稿日時:(02/ 9/ 4)





 外気の温度より幾分か低い設定のクーラーが、室内の空気をかき混ぜていた。
 このオカルトGメン関東支局の一室で室温より高い熱を発生しているのは、この部屋の主と小型の液晶モニターのみである。

 美智恵は先程まで凝視していた液晶モニターから顔を上げると、席を立ち外に広がる街並みを見下ろしていた。
 ふいに視線を上方に向け、遠くにつづく空に意識を飛ばした。
 あの空の向こうは神奈川県なのだ。

 彼女の携帯が鳴る。
 着メロは『渚のシンドバット』だった。

 「…はい。………ごくろうさま。うん……。
 いえ、よく撮れていたわ、大変だったわね。 こちらでも記録したから、そちらの媒体の損傷は問題では無いわ。
 ………そう、彼は病院に搬送されたの。ごめんなさいね…え?気にしなくていい?そう。
 ……………………結果は満足よ。私が欲しかったのは”結末”ではなくて”顛末”ですもの。
 予想はしていたけど楽しい時間だったわ。
 それで報酬はなにが………いらない? ホントにいいの?ふふふ。
 …………ま、そうね。それがあなたには一番の報酬になるかもね。
 うふふふ、がんばってね、あなたも」

 接続を切ると、帰り支度を始める。

 駐車場に降りるエレベーターの中で、壁に寄りかかって美智恵は思う。

 「せめて、ひのめだけは平凡な恋をして欲しいけど……、ウチの血筋だしね」





 「なんでじゃぁぁぁぁ〜〜っ!俺は一夏の甘くせつなく激しい体験すら望めんとゆーのかぁぁぁ!!
 なにかバチが当たるような事、俺がしたというのかぁぁぁっ!!」

 十分あったと思うが。

 ”元”平和な海水浴で横島は膝を砂につき、拳を突き上げて常識人が眉をひそめる事を叫び続けていた。
 夕暮れの海岸で、もはやここで遊ぶ家族連れやカップルは一組もいなかった。
 しばらくはいないだろう。
 彼の熱い、熱すぎて鬱陶しい願望は両の瞳から流れ出して、次々と砂の中に消えていった。
 彼にできる事は、その砂を握り締め嗚咽する事だけだった。

 海からの風が強くなり、横島が泣いてもわめいても時が戻らない事を思い出した時、後ろに誰かいる事に気がついた。

 木製の古びた机に座る彼女が、薄暗闇の中黒い水着にパーカーをはおっているのが、彼は認識できた。
 陸に向かう風が、彼女の美しい黒髪を揺らしていた。
 もし、そこがもう少し明るかったら、彼女が頬を赤らめている事に気づいたかもしれない。
 場違いにもホドがある、その机の上から穏やかな視線を向けていた彼女は、胸元に抱えていた小型のペットボトルを
 横島に緩くほうった。

 「今日はいろいろと愚痴りたい事、あるんでしょ? お酒とは云わないけど、それでも飲みながら私が聞いてあげるから……」


 夏は、
 夏は、まだ終わってはいない。
 少なくとも、彼女達には。


 (おしまい)

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