ザ・グレート・展開予測ショー

真・私のそばに立っていて!2


投稿者名:sai
投稿日時:(02/ 9/ 4)

「うっ!先回りされてる!?」
はるか前方に、黒い雲のような瘴気が見える。事務所へ行くにはアレを越えなくてはならない。
はっと後ろを振り向くと後ろからも霊団が襲ってくるのが見える。

「はさまれた―――――!!あかんもーだめや――――――!!!!」
涙と鼻水を吹き出す横島。
(ああっ、やっぱダメかも・・・・!)
さっき一瞬すごく心強かったのだが。

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「こーなったら文珠の結界で時間稼ぎ・・・・・・!」
スカッ。Gジャンを漁るが、さっき二個使っているので既に予備はない。
「あかん!出ろっ!文珠――――!!」

ヴヴヴ・・・プス。
「あ゙―――――――!!!」
当然ながら鍛錬のない横島がそうホイホイ文殊を出せるわけもない。
(ヤバいっ・・・・・・・!!集中が足らん・・・・・・・・・!!)
次第に霊団たちが横島達に近づいてくる。

絶体絶命の事態に、おキヌが不安げに寄り添う。
瞬間、横島の頭脳に策が閃く。もちろん、彼の頭脳は裏技関係にしか発揮されない!

(そーだこのテが・・・!しかしっ、人として・・・・・・・・・・ああっ背に腹は代えられねー!)
決断と同時に、横島は動いていた。






「おキヌちゃん、ごめん!!」
「え・・・・・・?キャッ!!」










・・・・・・・きゅっ・・・・・・・・・









おキヌが振り向こうとしたときには。
もう彼は、うしろから彼女を抱きしめていた。





(か、かわいい・・・・・・って今はそーじゃなくってっ!!!あったかくてやーらかい・・・・・・)


キィィィィィィイイイイイイイン・・・・・・・・・・!!
たちまちの内に、横島の手の中で珠が姿を結ぶ。
「やった!!守ってくれ文殊!!!」
パシュッ!!
瞬間、『護』の文字が文殊に浮かび、それを地に叩きつける!


・・・・キンッ!ビシュァアアアアァァァ!!
瞬時にテント大の半透明のドームに包まれ、間一髪霊団の侵入を免れた。

「と・・・とりあえず助かった――――――――・・・・・・・・・・!」
安堵感でへたり込む。









呼ばれて抱きしめられた瞬間、びっくりした。
けど、恐いとも、イヤだとも感じなかった。


(どうしてかしら・・・・・・・・・・・・・・この人だとちっともイヤじゃない・・・?)

それよりも・・・・・・・・
(あったかくって・・・・・・・・・こんなにピンチなのに、安心する・・・・・)
知らず、横島のGジャンの袖に自分の手を添えていた。

その数秒後、突然パシュッという音と共に結界が出来、悪霊たちが弾き返されているのが見えた。

「と・・・とりあえず助かった――――――――・・・・・・・・・・!」
(あ・・・・・助かったのね・・・・・・)
ぽて。
横島のその声を聞いておキヌも脱力してへたり込み、頭を横島の胸に預ける形になる。






「よし・・・・・・・・・あとは美神さん待ちか・・・・・・・・!」
連絡をしたわけではないが、これだけ近所だ。気付いてはくれるだろう。


しかし重大な思い違いに気付く。
そもそも美神さんは自分に被害さえなけりゃ隣のうちに核弾頭が突っ込んでてもソファーでごろ寝してる人だよな・・・・・・・・・

『はぁ?なんでギャラも出ないのに首突っ込まなけりゃなんないの?
忙しいんだから近所の悪霊なんざ無視無視!!』
めんどくさそうに手をひらひらさせる美神の姿が一瞬浮かんだ。


(やっぱ、ダメかもしれん・・・・・・・!!)
横島の額を冷や汗が伝った。





しかし、今回ばかりは天は横島達に味方していた。
既に美神はおキヌの養父母達から連絡を受け、見鬼君でサーチしていたところに悪霊たちが群れているのを発見し追跡中だったのだ。途中で厄珍経由で西条からネクロマンサーの笛も入手している。



ヤバい武器をしこたま積んだコブラを走らせ、遂に悪霊に囲まれた横島達が遠目に見えた。
「結界・・・・・・・・!?・・・・・・・・・・・でかした、横島クン!!そのまま待ってんのよ!!!」






言われるまでもなく、結界の中ではそのまま二人じっと動かずにいた。
そのまま・・・・・・ってのは、ええ、そりゃそのままなわけで。

(も、もう離れてもいいのかしら・・・・・・・・・・?でも・・・・・・・このままでも・・・・)
先に我に返っていたのはおキヌであったが、ほの赤く染めた頬を俯かせて動かずにいた。

悪霊たちが結界に衝突するのを眺め、美神が来るかを考えていた横島が我に返るにはもうちょっと時間がかかっていた。

が。そのとき遅く、かの時はやく。美神の叫び声の方が到着していた。
「くぉら横島ぁ――――――――!!!状況をわきまえんか――――――――っ!!」
「!?美神さん!?」

キュキュキュキュキュキュキュキュッ!!!
コブラのスピンブレーキにもかき消されない怒声に、ばばっと二人が離れる。

「全くもう!このネクロマンサーの笛で直ぐ浄化してやるから大人しくしてんのよ!!」
言いざま、笛を構える。
(とはゆうものの、私もあんま自信がないのよね・・・ええいままよ!!)
攻撃的な性格が生と死の揺らぎにある者の癒しに向いていないという事は知識として知ってはいた。が・・・・・・・・


フュ――ッ!!フュ――ッ!!
(音が出ない・・・・・・・!!やっぱりダメ!?)


シュゴオオォォォォォォォオオオオォ!!
「!美神さん!!」
両手のふさがった美神に霊団の一部が襲いかかる!

「きゃあああっ!!」
カンッ―――カラカラ・・・・・・!
霊団の直撃を食らい美神が吹っ飛ばされると同時に、ネクロマンサーの笛が結界の中に弾き飛ばされる。

「!これ、横島さん・・・!!」
「ああ、さっき美神さんが吹こうとしていた笛だな・・・これを使えば除霊できるかも・・・!」
土まみれになって汚れたのをGジャンの袖で拭って、横島が吹いてみる。


フュ―――・・・ピョロ・・・フュ――――・・・
「ああっ全然ダメ!!??」

ドンッ!!ドカッ!!
ほんのちびっと音らしきものが出たが何も起こらない。そうしている間にも悪霊は結界に衝突を続ける。
{死ニタクナイ・・・・・・・・!!}
{生キテイタカッタ―――――――!!}
{怖い・・・怖いよ・・・}
{誰か・・・誰か助けて――――――}
近づく悪霊の叫びがおキヌに聞こえる。
「このひとたち・・・」

「あ・・・悪霊の数がまだ増える・・・!!文殊の結界ももう持たんぞ・・・!!」
横島にはその叫びは聞こえない。

(死にたくないよね・・・・・・生きてるってあんなに素敵なことなんだもの・・・誰も好きで死んだりしないよね・・・)


「このひとたち・・・かわいそう・・・・・・・・・」
もう一度、おキヌが呟く。自分の命が風前の灯火のこの状況で、霊たちの為に泣きそうな表情をしている。
「こっ、こんな時にもおキヌちゃんって・・・!!・・・・・そうだ!!」
半分あきれながら、横島に閃きがあった。
「おキヌちゃん!!この笛を吹いて!!」
「ええっ!?」
ネクロマンサーの笛を差し出す。
「おキヌちゃんなら、使えるかも・・・・!!」
「で、でも私霊能者じゃないし・・・お姉ちゃんは少し出来たけど・・・」
「どーせダメもとだっ!!それにさっき美神さん『除霊』じゃなくって『浄化』って
ゆってたから、おキヌちゃんみたいな優しいコなら効くかも・・・!」
オカルト知識の少ない横島だが、ゲームだのの影響で直感で感じていた。


「・・・・・・・・は、はい!やってみます!」
笛を受け取り、結界の外へ向かい合う。
ドンッッッッ!!ガシィィィ!!
1メーター先の結界の外には、自分を狙う哀れで恐ろしい悪霊たち。
幽霊の記憶を失い、神社の娘とはいえ今は一介の女子高校生。自然と膝が小刻みに震える。喉の奥で息が詰まり、唇にも震えが伝わる。



横島に背を向けたまま、おキヌが話し掛ける。
「あっ・・・・・、あのっ・・・!」
「何?」
「あのっ・・・!さっきみたいに・・・そのっ、『ぎゅっ』ってしてもらえ・・・ませんか・・・?」
言い切って、かああっと頬が赤くなるのを感じる。
(ついさっき会った人だっていうのに・・・わ、私どうしてだろ・・・)

「え!?・・・」
おキヌの性格を踏まえれば大胆な申し出にドギマギする。



(あ・・・・・・・・・・・・!)
彼女の細い肩の僅かな震え。それを見たとき、横島の気持ちから照れが消えた。








すっ・・・・・・・・・・・・・








さっきと同じく、優しく抱きしめる。





(あ・・・・・・・・・・・)


心に感じる。暖かいような、懐かしいような・・・・・


(やっぱり、私この人に会ったことがきっとあるんだ・・・・・・・・・)
さっき、会ったことがあるようなことを横島さんは言っていたけど。



(思い出したいな・・・・・・・・・・・そのころのこと)
そんな事を思ったとき、体の震えは止まっていた。




「・・・・・・・・・・・・・」
ぼそっ、と横島が呟く。

おキヌが頷く。










外の霊たちを見つめ、すっと息を吸う。
(つらかったでしょう?苦しかったでしょう?)
(私にはよくわかるよ・・・・・・!!)
(もう、やめよう・・・?・・・・・・・・・ね・・・・・・・・・!)


ピリリリリリリィィィ―――――――――ッ・・・・・・・・・
ピリュリュリュリュリュリリリリィィィィ――――――――――――――・・・・・・・・・!

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