ザ・グレート・展開予測ショー

もう一つの物語(18)


投稿者名:hoge太郎
投稿日時:(02/ 9/ 3)


シロの顔がくしゃくしゃになった。
おキヌちゃんは、ほけーという顔をしている。美神も同じだ。
タマモは、興味深げに、他の女性達を見ている。

「せんせえええええええええ!!!」

シロが飛びついた。そのまま泣き出してしまう。
横島は慌ててシロを慰める。

「シロ、久しぶりだな。悪かった。な?泣くな。」
「どうしてでござるか!どうして拙者を置いて出て行ったでござるか!!」

横島は、少し悲しそうな顔をする。

「俺にも事情があったんだ。勝手言ってすまん。」

おキヌちゃんが、横島の前にすっと立った。
横島が、シロからおキヌちゃんに視線を移すと、そのまま壁まで
一気に後退した。怒っている。思いっきり。

「横島さん・・・!」

地獄から響くようなおキヌちゃんの声。
何かを言おうとする。でも、それっきり、他の言葉が出てこない。
俯いていた顔を、バッと上げる。ヒッという横島の声が漏れた。

「・・・・・・お帰りなさい。」

それだけ言うと、おキヌちゃんはお茶を入れに行った。
おキヌちゃんに先を越されてしまった美神は、横島をギロリと睨む。

「よくもまあ、恥ずかしくもなく顔を出せたものねー。
小龍姫様と早苗ちゃんに仲介を頼んで来たってところかしら?
甘いわねー。いきなり出て行った従業員を、また雇うと思う?
熱湯で顔を洗って出直してきたらどお?」
「あの、すんません、美神さん。」
「謝ったら許すと思ったの?」
「いや、そうではなくて、その・・・。」

おキヌちゃんがお茶を人数分入れて、戻ってきた。
横島は、歯切れが悪い。
早苗が、いらつくように横島に噛みついた。

「あーーーーー、もう!なんでそんなにウジウジしてるんだべ!?
いつかは言わなくちゃ駄目だろ?」
「そうなんやけど、その・・・。」
「美神さん。私、名刺を作ってきたんです。どうか、お受け取りください。」

小龍姫は、名刺を美神に渡す。

「へー、小龍姫様が名刺ねー。なんか御利益ありそうな・・・!?」

ピシッと美神が凍り付いた。
シロタマと、おキヌちゃんが不思議そうに、名刺を覗き込む。
同じように、凍り付いた。

その名刺には、【横島除霊事務所 小龍姫】と書かれていた。
同じく、早苗も名刺を渡す。【横島除霊事務所 氷室早苗】とある。
最後に、横島が名刺を渡す。【横島除霊事務所 所長 横島忠夫】。

ゆっくりと、美神除霊事務所の面々が、横島、小龍姫、早苗を見た。

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「ふーん・・・。」

美神の声だ。
全員、事務所のソファーに座って、小龍姫の話を聞いていた。
今、それまでの経緯を話し終えたところだ。
横島が、魔族とのハーフであることや、ルシオラのことは伏せてある。

「つまり、横島クンはずっと妙神山で修行していた。
そして、小龍姫様は除霊の修行のために、横島クンと一緒に、事務所を開いた。
早苗ちゃんは、偶然横島クンに捕まった、と。なるほどねー。」

美神は、横島をジーッと見ながら話した。
おキヌちゃんも、指を口に当ててジーッと見ている。
横島は、申し訳なさそうな顔をしていた。

「ですから、今でも横島さんは、剣や霊力の修行中です。師匠は私。
そして、私は除霊の修行中。師匠は、横島さんです。」
「よりにもよって、横島クンを師匠にするなんて、宝石をドブに捨てるようなもんじゃない。
小龍姫様。それよりも、私の事務所に・・・!」

美神が話し終える前に、小龍姫は自信たっぷりに言う。

「美神さんが知っている横島さんは、そうかもしれませんね。
でも、私の師匠である横島さんは、世界でもトップクラスのGSです。
ね、早苗さん。」
「わ、わたすに振らねえでけろ!」
「どうしてですか?」
「う、なんとゆーか、横島さんを認めてしまうと、
何か自分の価値観が崩壊するような、そんな気がすて・・・。」
「・・・そこまで嫌わんでも。」

横島は、シクシクと泣く。
突然、雪之丞が語りかけた。

「ところで、お前の事務所は、従業員の募集はしてねーのか?
もし、してんなら俺が行ってやってもいいぜ?」
「せ、拙者だって、行きたいでござる!!」

美神が、雪之丞とシロに慌てて怒鳴る。

「ふ、ふざけんじゃないわよ!それでなくても、手が足りないのに!!」

横島は、哀愁漂うように呟く。背中が寂しい。

「雪之丞。事務所を構えたばかり、しかもド田舎だ。これ以上従業員を増やしたら、
明日にも潰れる。勘弁してくれ・・・。」
「わ、悪かった。・・・お前も苦労してんだな。」
「毎日、事務所が潰れる夢にうなされてるんだよ。うう・・・。」
「わ、分かったから泣くな!」

美神は、横島を血祭りに上げるつもりだったが、あまりにも哀れになってくる。
おキヌちゃんは、思わず横島を慰めようとしてしまう有様だ。

「あーもう、うっとうしい!で?何しに来たのよ。」
「す、すんません。実は、なんでもいいから、仕事を回して欲しいって思いまして。
美神さん、いつもギャラの高い仕事ばっかりしてるじゃないすか。
安い仕事は捨てて。その、安くて捨ててる仕事を、回して欲しいんです。」

美神がニヤリと笑う。獲物を見つけた蛇の笑いだ。

「なんで私が同業者に、しかも造反者に仕事を渡さなきゃならないのよ。」
「そ、そこをなんとか!」
「美神さん、そんな意地悪しないであげてください。」
「何言ってるのよ、おキヌちゃん。世間の荒波は厳しいの。
私は、心を鬼にして言ってるのよ?」

言葉とは裏腹に、ニヤニヤしている美神。
横島は、液体を吹き出しながら、美神にすがりつく。

「た、たのんますーーー!2週間たっても、依頼が一件だけなんすよー!
このままじゃ、このままじゃ、うおおおおおおん!!!」
「えーい!やかましい!!ったく、仕方ないわねえ。」
「み、美神さん!!!」
「但し、依頼料の7割は貰わないと。」
「そ、そんな滅茶苦茶な!せめて3割!!」
「7割。」
「うぐぐぐっ、4割で!」
「7割。」

ふと、小龍姫が割り込む。

「横島さん。代わってください。」
「へ?あ、お願いします。」
「さて、美神さん。」
「な、なによ。」

じーーーーーっと美神を見つめる小龍姫。
なぜか、焦り出す美神。

『なぜ?なんなのこの不安感は?もしやあれがばれた?それともあれか?
いや、そんなはずは・・・。』

じーーーーーー。

「わ、わかったわ。6割にしてあげましょう。」

じーーーーーー。

「うう、わ、わかったわよ!!5割!これ以上は負からないわよ!」

にっこりと微笑む小龍姫。

「さすが美神さん!4割で紹介してくれるなんて!」
「ちょ、5割・・・。」

じーーーーーー。

「ううううっ、分かったわよ・・・。」

美神の敗北宣言。一体誰がこのような事を予想したであろうか。
タマモがポツリと呟く。

「横島ってさー、全然役に立ってないよね。」

部屋の隅で、しくしく泣いている横島所長であった。

・・・続く。

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