ザ・グレート・展開予測ショー

もう一つの物語(17)


投稿者名:hoge太郎
投稿日時:(02/ 9/ 2)


早苗は、ずっと思っていた疑問を小龍姫に尋ねた。

「なあ、小龍姫様。なんであんな馬鹿でスケベでアホで間抜けな
やつと一緒にいるんだべ?そりゃ、GSとしては確かに優秀かも
知れねーけど、人間として根本的に間違ってるような気がするんだけど。」
「・・・そうですね。」

小龍姫は、少し微笑んでから、ゆっくりと早苗に話し始めた。

「横島さんは、確かにスケベです。でも、それは横島さんの
ほんの一面でしかないんですよ。私は半年間一緒に暮らしましたが、
横島さんの、別の一面を何度も見てきました。」
「でも、その一面が致命的でねーか?」
「ふふっ!早苗さんにはそう見えますか?」
「どういうことだべ?」
「実は、妙神山で何度もお風呂を覗こうとしたんですよ、横島さんは。」
「・・・最低だべ。」
「違うんです、早苗さん。横島さんが、本気で覗こうと思ったら、
私に見つかるようなヘマはしません。
確かに、剣術や霊力では私が勝っていますが、横島さんには文殊があります。
文殊の力を持ってすれば、お風呂を覗くことなど、造作もないことなんです。」
「よくわかんねーけど。」
「つまり、横島さんは、見つかるように覗いていると言うことですね。」
「なんでそんなことを??」
「さあ、私もそこまではわかりません。でも、考えてみてください。
横島さんの実力、単純な戦闘能力だけ比較しても、人間界ではずば抜けています。
そんな人が、早苗さんにボロボロにやられますか?」
「・・・あ。」
「そう言う人なんです、横島さんは。」
「ふーん・・・。でも、やっぱりよくわかんね。」
「多分、本人も分かっていないのでしょうね。」

しばらく、会話が途絶える。
早苗が、小龍姫を見ずに、問いかけた。

「小龍姫様。」
「なんでしょう。」
「小龍姫様って、横島さんの事、その、好きなんだべか?」

小龍姫は、早苗から視線を外し、じっと壁を見つめた。
早苗が慌てたように弁解する。

「あ、別に好きだからどうとか言うわけではないべ!
そもそも、神様が人間を好きになるかどうかもわかんねーし。」

早苗は、横島が人間ではないことを知らない。
知ったところで、態度が変わるとは思えないが。

「・・・私は、はっきりと誰かを好きになったことがありません。
特に、男女間の恋愛というものからは、全く縁のない世界にいましたから。」
「・・・へ?」
「私にもよく分からないんです。本当ですよ?早苗さん。
嫌いか?と問われると、否ですね。好きかと言われると、多分好きなんでしょう。
ただ、早苗さんの期待している好きでは無いと思います。どちらかというと、
手のかかる弟みたいな感じかな。それに・・・。」

小龍姫は、少し視線を下げた。

『私は、自分の気持ちだけで、横島さんと一緒にいるわけじゃない。
横島さんを監視するため。そして、万一の場合は、横島さんを殺すために
側にいる。いつでも、横島さんを殺すことができるように・・・。』

辛そうな小龍姫の顔を見て、早苗は慌てた。

「ご、ごめんなさい!小龍姫様。わたすは、その、興味本位で聞いただけで、
困らせるつもりじゃ!」
「私の方こそごめんなさい。・・・駄目ですね。私は。
私は、神族の中ではかなり若い部類に入るんです。
まだまだ、子供ということなのかな・・・。」

小龍姫は苦笑した。
会話は打ち切られ、小龍姫も早苗も、ソファーに横になった。
疲れていた2人は、そのまま眠りに落ちていった。

こうして、横島除霊事務所の記念すべき最初の1日は終わった。
・・・所長は簀巻きにされたままであったが。

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次の日から、横島は事務所の立ち上げに忙殺された。
早苗の父が、横島に簡単なノウハウを教えていく。美神の元である程度見ていた
記憶も根掘り葉掘り掘り起こし、横島は、普段使わない頭をフル回転させ、
オーバーヒート寸前だ。
GS協会への登録や、広告の掲載、仕事の受け方など、多種多様。
お札は、早苗の父が安く売ってくれた。もともと、封魔や結界などが、
氷室神社の得意分野だ。副業ではあるが、けっこう儲かっているらしい。

そんな感じで、あっというまに2週間が経過していた。

「・・・仕事がない。」

横島は、目に隈を浮かべながら、暗い声で呟いた。
3日目に、早苗の父が紹介してくれた仕事で、30万の収入はあったが、それっきり。
除霊の仕事は、いつもいつもあるわけじゃない。だが、それにしても酷すぎる。
小龍姫は、庭に出て、素振りの稽古をしている。
早苗は、ソファーに寝ころびながら、お菓子をくわえて雑誌を眺めていた。
出かけているときは、留守番電話にしてある。毎日眺めるのだが、
メッセージは入っていない。

「やっぱ都内じゃねーしなあ。それに、美神さんとこみたく有名じゃねーし。
営業したほうがいいのかなあ。このままだと、1ヶ月もたねーぞ・・・。」

早苗は、何かツボにはまったらしく、雑誌を見ながらケラケラ笑っている。
むかっ!とくる横島であったが、文句を言えるわけでもない。
確かに、美神と対極にいる横島所長であった。

「しかたねー・・・。GS協会へ行って、仕事を斡旋してもらうか。
それと、知り合いのGSに、仕事を回してもらうように頼んでくるか。
・・・美神さん怒るだろうなあ。でも、いつかはばれるだろうし。
このままだと、小龍姫様の修行どころか、単に無駄に時間を潰しているだけだかんなー。」

こうして、横島除霊事務所のメンバーは、東京へ向かった。

「美神さんに会うのは久しぶりですねー!楽しみだなあ。」
「わたすも、久しぶりにおキヌちゃんと会えるだ。元気してるかな?」

2人の美少女は、無邪気にはしゃいでいる。
しかし、横島は、この世の終わりのような顔をしていた。
GS協会で、仕事の斡旋の登録をすませたあと、美神除霊事務所へ向かっている。

「やっぱ嫌だああああ!絶対殺されるうううう!!」
「往生際が悪いですよ?横島さん。」
「情けない所長だべ。」

小龍姫と早苗に襟首をつかまれ、ずるずると引きずられていく横島。
そうこうしている間に、目的地に着いてしまった。
玄関で、まだ無駄な抵抗をする横島。ふと、横から声がかかった。

「・・・何やってんだ?お前。」
「ゆ、雪之丞!」
「久しぶりだな!ま、上がれよ。」
「ちょ、ちょっと待て!俺は帰るううう!」

さらに、雪之丞にまで捕まれ、抵抗むなしく、事務所の扉が開いた。

「お帰り、雪之丞。どうだった?」
「大した相手じゃねーよ。あの程度なら、シロタマでも十分だぜ。」
「拙者達でも十分とは、気になる表現でござるな・・・。」
「まあまあいいじゃない。雪之丞さん!お疲れ様です。今、お茶をお入れしますね。」
「・・・油揚げ。」
「それよりも、珍しい客だぜ。」

雪之丞は、後ろに控えていた人物を中に招き入れた。

「小龍姫様!?早苗ちゃんも!久ぶりじゃない!」
「お姉ちゃん!!」
「お久しぶりです!美神さん。相変わらず儲かってるみたいですね。」
「久しぶりだべ、おキヌちゃん!元気してただか?怪我してねーか?」

ふと、シロが鼻をヒクヒクさせた。

「あれ?なんだか懐かしい臭いを感じるでござる。この臭いは・・・!?」
「おい、いつまでそこにいんだよ。」

雪之丞が声をかける。不思議そうに見る美神除霊事務所の女性達。
横島は、小龍姫と早苗の陰からビクビクしながら、そっと顔を出した。

「ど、どうも。」

・・・続く。

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