ザ・グレート・展開予測ショー

真・私のそばに立っていて!1


投稿者名:sai
投稿日時:(02/ 9/ 2)

プルルルルル。
美神の事務所の電話が鳴る。

「はい?」
メフィストの一件が一応片付いたものの、自分の感情に今ひとつ釈然としない美神。
電話に出る声も若干尻上がりになる。

『・・・・・・・・・・・・』
「え?」
やや年配の男性の声。美神の表情が引き締まる。

『・・・・・・・・・・・・!!』
「なんですって!?」
男性の切迫した声に今度こそ美神の顔色が変わった、その頃・・・・・・・・



「ふ――――――・・・・・・・・・・・・・・」
食料を買出しに街を歩く横島。しかしその表情は引き攣っており、あたかも首筋に拳銃を突きつけられている人質のようだ。

「なーんか落ち着かんよな―――・・・別に女王様にギャクタイされるのが好きってわけじゃ
ないんだが・・・理由がわからず虐待がやむってのは不気味だ・・・!」
先月今月とわけもわからず給料が多く、しかもここのところ虐待の度合いが極端に低くなった。
ピートとタイガーに相談したが、「横島さんはもう手遅れだ」という結論にしかならなかった。

(平安京で何かあったのかな―――?)
ビンゴなのだが、覚えていない横島には分からない。
しかも、自分の明日の命の事で頭がいっぱいの横島には曲がり角に向かって走ってくる女性にも気付かない。

たたたたたたたたっ・・・・・・!!


ドンッ!

「きゃ・・・!!」
「のわっ!?」

ぶつかってきた少女がしりもちをついた。少女の方が勢いがついていた分、横島もひっくり返る。


「大丈夫ですかっ!?おケガは・・・!?」
「てーなっ!!どこ見て歩いて―――――え!?」

吹っ飛ばしてしまった少女が気遣い、声をかける。

―――――――――――その声はとても聞きなれた声。懐かしい声。

そして、いつか聞いた言葉―――――――――――――――――――――――






--------------------------------------------------------------------------------
私のそばに立っていて!

--------------------------------------------------------------------------------「お・・・おキ・・・」
少女の顔を見て思わず横島が叫びかけるがおキヌは構わず来た道を振り向く。

「!!来た・・・!・・・ごめんなさいっ・・・!」

だッ・・・!
更に一言謝って、交差点から駆け出してゆく。
「ちょっ・・・ちょっとまって――――!!君は―――――――!!」

呼び止めてどうしようというのか。そんな事は考えもせず反射的に叫ぶが、おキヌは振り返りもせず
走ってゆく。
その姿を呆然と見送る横島に背後から物体が近づいてくる。見る見るうちに横島の背中に迫ってゆくが、おキヌに気を取られている横島は気付かない。



ズゴォオォォオオオオオオオッ!!!!!
(!?)
横島の頭上を何か暗い大きな塊が越えてゆく。慌てて振り仰ぐと、霊体らしき頭部が無数に群れて黒色の光芒を引いて飛んでゆくのが見える。

(霊・・・?悪霊のかたまり・・・・・・・・!?・・・・・・・・・・・・追われているのか!!!)









(おキヌちゃん―――――――――――――!!!)
反射的に、横島はおキヌと悪霊を追うように駆け出していた。いや、本人は駆け出していることさえ気付いていないかもしれない。

既に彼女の姿は見失ってしまっている。見渡す限りの交差点、都会の道は網目のように枝分かれしていく。
「文珠っ!!」
横島は『緊急用に』と美神に持たされていたリザーブの文珠を二つとも取り出し、
念を込めると『絹』と『姿』の文字が浮かび上がり、それをすぐさま発動させる。
キィィィィィイイイイイィィィィィイイイン・・・・・・!!
手のひらで文珠が発動し、投影機のように小さくおキヌの走るビジョンが浮かぶ。
狭いながらも流れていく背景も映し出され、それに注目する。

あれは俺の高校の前・・・寄り合いにいつも行ってた神社・・・・・・・・・あっちか!!
おキヌが向かったとおぼしき方角へ駆け出していく。おキヌは横島と遭遇した地点を考えると若干迷走気味に
進路を取っているが、それが彼女のおぼろげな事務所のイメージによっている事など今の横島には知るべくもない。

駆けながら、少し落ち着きを取り戻し考える。
(なんで彼女は追われてるんだ!?・・・・っちゅーかそもそも俺は彼女を助けられるのか?)
・・・・・・・・・・あれだけの霊団・・・・。
(力技で・・・・・・・って、俺にそんな力あるか――――い!)
そもそも横島の今までの対戦例からも、『ある程度知恵のある人型タイプ』をだまくらかすような手で
勝利してきた事が多い。人格(霊格?)が既に崩壊していて、力と数だけで押してくるタイプは苦手でむしろエミのようなタイプが向いているのだ。



(とにかく合流して・・・・文殊で逃げ回って、あとは美神さんに何とかしてもらおう!!)
・・・・・・・・・・・最善の消極策と言えよう。



走りながら、再びおキヌのビジョンを見る。例によって迷走しているが、徐々に事務所方面に近づいている。迷走している分だけ、最短距離を追ってきた横島からはもうすぐだ。霊団は、おキヌを何度か見失いながら追っているようだ。
(もうすぐ・・・・もうすぐ行くからな、おキヌちゃん・・・・・・・・!!)
横島も必死で駆ける。脳裏に久しぶりに見た彼女の姿が浮かぶ。

(彼女、何も変わってなかったな・・・・)
ちょっと感慨に耽る。早苗と一緒に通学している姿は、涙が溢れそうで顔を背けてしまい僅かしか見られなかった。



駆ける。駆ける。






「!・・・・・・・いた・・・・・・・・・・!!・・・・・・・・・・・あ!?」

十字路で、どちらに進もうか迷っているかのようにきょろきょろしている。
あと数十メートル。おキヌに追いつこうとした時。



グォォォォオオオオオォォォォオオン・・・・・・・・!
本体からはぐれたらしき小霊団がおキヌの背後に迫ってゆく!

『逃ガサン・・・・・・!!ヨコセ・・・!!』
びしゅるっ!!
「!?キャァアァッ!!」
霊団の霊気がおキヌの足首を捕らえたその瞬間!




「させるかコンチクショ―――――!!!」
ズババババババッ!!!

横島の栄光の手が霊団を切り裂き、霊気が霧のように散ってゆく。
しかし、黒い霊気はゆっくりと再凝集を始める。
「まにあった・・・・今だ!逃げよう!!」
「!?は、はいっ!」

横島がおキヌの手を取って駆け出す。
(早く、事務所へ・・・!)

「あっ、有難うございます!あの、あなたは・・・・」
走りながらおキヌが問う。
「ああ・・・俺、・・・俺は・・・・・・ゴーストスイーパーの横島」
おキヌに自己紹介する複雑な気持ちを抑えて、ちらっと彼女に振り向き答える。
「あ、あの・・・・・」
「ん?何?」
「ちょっと、手、痛いです・・・」

見ると、さっきから彼女の手を強く握り締めたまま走り続けていた。
「うわっ!?ご、ごめんおキヌちゃん!」
ばっ!
「い、いえ」
慌てて離したが、おキヌの手には横島が握った形そのままに赤くあとがついていた。
「も、もう暫らく行けば美神さんっていうGSの事務所につく!そこへ行けば何とかなるからさ!!」
顔をそらし、照れ隠しに一気にまくしたてる。

そんな表情に、無意識におキヌは既視感を感じる。
(このひと、どこかで・・・・・・・・?)
「あ、あの・・・どうして私の名前を?初めて会ったはずなのに・・・」

「・・・・・ああ。」
死津喪比女の件を思い出して、少し遠い目になる。









「俺・・・・・・・・君がもう覚えてないくらい前に、君に助けてもらった事があるんだ・・・・」
「え・・・・・・」

あの時。結局死頭喪比女に致命傷は与えられなかったものの、弱らせて時間が稼げた為
細菌弾を打ち込めたのだ。







「だから・・・今度は、俺が君を・・・・―――――――」

「・・・・は、はい・・・・・」
横島の真剣な瞳に、少し赤くなってうつむく。
(私がどうしたのかは覚えてないけど・・・それでなんだか知っているような気がしたのね)
少しだけ納得したと同時に、妙にもう大丈夫、という安心感が生まれてきていた。



「うっ!先回りされてる!?」
はるか前方に、黒い雲のような瘴気が見える。事務所へ行くにはアレを越えなくてはならない。
はっと後ろを振り向くと後ろからも霊団が襲ってくるのが見える。

「はさまれた―――――!!あかんもーだめや――――――!!!!」
涙と鼻水を吹き出す横島。
(ああっ、やっぱダメかも・・・・!)
さっき一瞬すごく心強かったのだが。

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