ザ・グレート・展開予測ショー

もう一つの物語(16)


投稿者名:hoge太郎
投稿日時:(02/ 9/ 1)


「ようこそ、美しいお嬢様方。」

男は、優雅な動作で礼をする。
横島は、いいかげんに、それでいて隙を作らないようにして、
男に話しかけた。

「よ!あんたが、この建物に巣くっている妖怪か。この物件は俺たちが購入したんだ。
悪いが、出て行ってくれねーかな。」

男は横島を完全に無視する。
そして、小龍姫と早苗をじっと見つめる。小龍姫は、男から妙な霊気を感じた。
小龍姫は特に問題はなかったが、早苗の目がトロンとしている。

「早苗さん!?」
「ふん、簡単なチャームってとこか。確かに男には効かねーな。
小龍姫様。早苗ちゃんが持っている端の赤い札をとって、軽く霊気を送ってください。」

そう言って、小龍姫と早苗の正面に立ちふさがる横島。
小龍姫は、言われたとおりにする。すると、札が発光し、半径2メートルほどの
結界が生まれる。早苗は我に返ったように、小龍姫を見た。

「あ、あれ?わたすは・・・?これは、結界?」
「チャームというのに掛っていたそうです。」
「そんな、いきなりやられていたのか、わたすは・・・。」

男は、初めて横島を見る。
その表情が急激に変わっていく。口が裂け、赤い舌がちょろちょろと出ている。

「うっとうしい男だ!私は男が死ぬほど嫌いなんだよ!女の悲鳴は最高だ!
死ぬ寸前の顔はもっと最高だ!ふひゃひゃひゃひゃ!!さあ死ね!男は今すぐ死ね!!」
「お、それは俺も同意見やなー。男が嫌いってとこだけな。」

そう言うと、妖怪は壁にあった両刃の剣を構え、一気に間合いを詰めて、
横島に襲いかかる。
凄まじいスピードだ。少なくとも早苗にはそう見えた。だが、横島は、すっとかわす。
妖怪は、驚愕した。妖怪だけじゃない。早苗も驚いている。

「う・・・浮いてる??」

横島は、床から数メートルの所に浮いていた。
文殊を使った様子はない。

「小龍姫様!建物を潰さない限り、思いっきりやってください!
もっとも、大した奴じゃないっすけどね!」

小龍姫は頷くと、御神刀を構え直す。
妖怪は、大きな両刃の剣を小龍姫に向け直す。

「調子に乗るな!この俺様が人間の女ごときに・・・!」

この言葉が妖怪の最後の言葉となった。
小龍姫は軽く跳躍すると、妖怪の剣ごと、文字通り一刀両断にする。
さらに、剣撃を加え、妖怪は粉々になって消えた。
チンという音と共に、御神刀が鞘に収まる。

「お見事っす、小龍姫様!さすがは我が師匠!
除霊終わり、だな。・・・?いや、まだなんかいる。」

横島はすっと床に降り立った。そして、手のひらに気を集中させた。
早苗は、呆然としている。突然、興奮したように早苗がまくし立てた。

「す、すごい!すごいだべ!小龍姫様!!
わたす、あんな剣技見たことがないだべよ!Bクラスの妖怪をあっという間に!!」
「あ、ありがとうございます、早苗さん。」
「やっぱり龍神族って神様だというのは、本当だったんだべ!」
「・・・今まで信じてなかったんですか?」
「あう、ちょっとだけ疑ってたんだべ。許してくんろ・・・。」
「ふふっ、今回は役に立てました。私はそれだけで満足です。」
「ん?横島さん、何をやってるんだべ?」

横島は、手のひらに文殊を乗せて、なにやらクルクル回っている。
文殊には、【霊】【探】という文字が浮かんでいた。

「うん、こっちだ。」

そう言うと、横島はスタスタと歩いていく。
2人は、横島を追う。やがて、地下室にはいる。早苗は息を飲んだ。
そこには、多種多様の拷問器具と、頭骸骨がコレクションのように並んでいた。

「あのボケ妖怪の被害者だな。そしてあんたらが、その幽霊か。」

横島は、奥に視線を向ける。
そこには、悲しそうな顔をした女性の幽霊が、何体か浮かんでいた。

「ここは、早苗ちゃんの出番だな。できるか?
強制的に除霊することもできるけど、幽霊とはいえ、女の子には
あんまりしたくねーんだな。」
「あんた動機が不純だべ。まあ、でもこれは巫女の役目だな。」

さすが、ずっと巫女をしてきただけある。数分後には、幽霊は全て成仏していた。

「よし。これで本当に除霊は終わりだ。だけど、この糞忌々しい道具を
外に出して、全て焼いてしまおう。あと、被害者の骨は警察に届ける。
悪いけど、もう少し頑張ってくんねーかな。」
「そうですね。それでは、私が道具を運び出しましょう。」
「それじゃ、わたすは被害者の骨だな。」
「俺は小龍姫様を手伝うっす。」

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全ての事後処理が終わったのは、夕方だった。
幸いというのは、妖怪が建物や家具を綺麗に維持していたこと。
まあ、あんな妖怪に使われていた家具を使うのも気持ち悪いが、
今は1円でも惜しい。とりあえず、仕方が無いと言うことで、
使うことになった。急いで、シーツやカーテンなど、洗濯できるものは
してしまう。電気、ガス、水道は、早苗の父が手を回しておいてくれた。

「ふーーー、わたすはくたくただべー。帰るのが面倒になっただよ。」

ソファーに、バフンという音を立てて、早苗が倒れ込んだ。

「さすがに疲れましたね。ねえ、早苗さん。今日は泊まっていったら
どうですか?食事はくる途中で買ったおにぎりしかないですけど。」
「うーん、そうだべなー。部屋は一杯あるみたいだし。そうすべか。
それに、ケダモノと小龍姫様を一つ屋根の下に置いておくのは危険だしな。」

横島を見ながら、半眼で早苗は言う。

「てめー!俺は今まで小龍姫様と、ずっと一つ屋根の下にいたんだぞ!」
「ええ!?横島さんと小龍姫様って、同棲してたんだか??」

早苗は、珍獣を見るような目で、横島と小龍姫を見る。

「・・・同棲ってなんですか?」
「うーん、小龍姫様に聞くこと自体が、間違ってただべかな。
同棲というのは、男と女が、その、一緒に住んだり、さらにあんなことや、
こんなことを!!キャー!わたすも山田君といつかは!」

早苗は一人で悶えている。
横島は鼻の穴に指を突っ込み、ケッと毒づいていた。
小龍姫の顔が真っ赤になった。

「そ、そ、そんなことしてません!!」
「一緒に住んでたんでねーの?」
「そ、それはそうですけど、2人きりじゃないし。」
「なんだ、そういうことだべか。つまんねーの。」

横島は、頭の中で妄想を暴走させつつある。

『い、今まで忘れていたが、早苗ちゃんが帰ってしまうと、
俺と小龍姫様は2人きり!!それは、つまり!!夫婦であって!
なんでもオッケーという関係に・・・ぶっ!!」

いつのまにか妄想を声に出してしまった横島。
こいう所は全く成長していない。

早苗の口から、コオォォォという謎の気が吐き出されている。
小龍姫は、苦笑していた。

「このケダモノ!!小龍姫様は、あんたの師匠じゃねーんだか!?
師匠に襲いかかるなんて最低だべ!」
「堪忍やああぁぁぁ!」
「許さん!!」

数分後。手足を痙攣させて倒れている横島。
さらに、容赦なく別の部屋に簀巻きにされて放り込まれた。
一応、横島は所長なんだが、そんなことは早苗にとって、
些細なことらしい。ようやく落ち着いたらしく、ソファーに座って烏龍茶を飲み始めた。
小龍姫も烏龍茶を飲んでいる。

少し躊躇したのち、早苗が小龍姫に話しかけた。

・・・続く

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