ザ・グレート・展開予測ショー

もう一つの物語(15)


投稿者名:hoge太郎
投稿日時:(02/ 8/31)


現在、3人は初めての仕事場へ向かっている・・・はずが、
いきなり途中で寄り道をしていた。
田舎町ではひときわ大きい、ショッピングセンターである。
その中のおばちゃんの戦場、魔のバーゲンセール会場に、3人の姿はあった。

「ぬおおおおおお!!!」

凄まじい気迫と共に、早苗が戦場に突入する。
おばちゃんをなぎ倒し、突き飛ばし、どんどん割り込んでいく。
巫女姿だから、目立つことこの上ない。
小龍姫は呆然と戦場を眺めていた。横島は、おばちゃんの中に混じっている
お姉ちゃんにセクハラを敢行すべく、突入タイミングを虎視眈々と狙っている。

「捕ったああああ!」

早苗の声が響いた。まるで、乱戦の中敵将の首を討ち取った猛者のようである。
手に、戦利品を山のように抱えていた。
服も髪も滅茶苦茶だ。せっかくの美少女が台無しである。

「あれ、横島さん。その顔はどうしたんだべ?」
「いや、別に。」

見ると、横島の顔には、あちこちに痣があり、さらには手のひらの痕が
くっきりと残っていたりする。
小龍姫は、こめかみを押さえた。

「初仕事の前に、なんでいきなりこうなるんですか!」

小龍姫は、先行きに凄まじい不安を感じた。
早苗は不思議そうに、小龍姫を見る。

「何怒ってるんだべ?せっかく小龍姫様の服とかを分捕ってきたのに。」
「え?」
「小龍姫様。多分気に入ってると思ってたから黙ってたんだけど、
その服で、除霊に向かうつもりだべか?」

小龍姫は自分の服を見た。
ミニスカ姿である。横島に買ってもらった服は、さすがに直ぐには復帰できない。

「この服装、まずいですか?」
「本人がいいなら、別にいいんだども、もう少し動きやすい方がいいべ?」

そう言って、更衣室へ強引に小龍姫を引っ張っていく早苗。
カーテンが閉まる。服の着方が分からないというので、早苗も一緒に入っている。
中から、声が聞こえてきた。

「あれ?小龍姫様、変わった下着だなー。」
「あ、えっと、あまり大きな声で言わないで欲しいんですけど・・・。」
「そんなこったろうと思って、適当に分捕った下着もあるだ。つけてみるだべ。
・・・ふーん、見た目より胸が大きいんだな。」
「あのう、声が・・・。」

もはや、横島の煩悩は臨界点を超えつつある。
顔の穴という穴から怪しい液体が噴き出し、周りを歩く人が、ヒッと声を上げて逃げていく。
腰を抜かしてるお年寄りや、興味津々の子供を慌てて避難させる母親もいた。

「もはや我慢ならん!!久々に、小龍姫さ・・・ぶっ!!」
「愚か者め・・・。」

いつのまにか、早苗が仁王立ちしている。
そして、早苗の後ろから、小龍姫が姿を現した。

「どうでしょう。似合いますか?横島さん。」
「・・・へー。」
「なんか言ったらどうだべ?」
「あ、いや、小龍姫様って、なんでも似合うんすねー。」

今度の小龍姫の姿は、ジーンズとシャツという、活動的な格好だ。
でも、あの戦場でそれなりに早苗が吟味したのだろう。
印象ががらっと変わったが、それでもすごく似合っていた。

「ばっちりっす!そっか、こんな感じの小龍姫様もいいなあ。」
「そ、そうですか?」

そう言って、改めて鏡を見直す小龍姫。まんざらでもない様子だ。
微妙にポーズを付けてみたりしている。

「えへへへ!気に入ってくれてよかっただよ!」
「え?あ、えっと、ありがとうございます。早苗さん!」
「どういたしまして。さあ、改めて出かけるだべ!」

服装に合わせ、スニーカーに履き替えた小龍姫、他2名は早苗の車に乗り込んだ。

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「ここ・・・ですか?」
「そうみたいだべな・・・。」
「うーむ、ほったらかしの物件だったはずなんやけど??」

周りは完全に緑に囲まれている。
砂利道をゴトゴトと走ること10分。
一軒の小さな洋館が現れた。かなり古い作りだ。しかし、家の前の庭は、
綺麗に手入れが行き届いている。

「不動産屋がやってくれた・・・んなわけねーな。
しかしまあ、建物からは確かに妖気を感じる。なんかいるな。早苗ちゃん、資料を頼む。」
「わかっただ。この建物の昔の所有者は・・・」
「あ、いいや別にそれは。相手の正体さえ分かればいいから。」
「初仕事をきめようとしてるのに、水をさすんじゃねー。
すかたね。相手は、人型の妖怪だそうだ。知能レベルは中。
戦闘能力はBクラス。・・・ええ!?Bクラスだって?」

早苗はかなり驚いている。
しかし、横島は特に気にしたような様子はなく、早苗に続きを促した。

「続けてくんねーかな。」
「へ?あ、そだな。性格は一見温厚。実は凶暴。趣味は拷問・・・げ。
それと、掃除。なんだべ?変な奴だな。
物理攻撃は効果薄。霊的な攻撃は有効。お札による攻撃が最も有効と思われる。
今まで、除霊に向かったGSのうち、何人かの女性が行方不明になっている。
恐らく、拷問によって殺されたと思われる。男は、問答無用で殺される、だそうだ。」
「ふーん、女好きの変態妖怪ってわけだ。」
「あんたと一緒だべ。」
「ざけんじゃねー。俺は女の子には徹底的に優しいのがモットーだ。」
「あ、そ。で、どうするんだべ?相手はBクラスだぞ?わたすは、今までそんな除霊したことないべ。」
「三千万は伊達じゃねーというこった。とりあえず、挨拶してこようか。」

そう言って、横島はスタスタと入っていく。
慌てて、小龍姫と早苗はついて行った。

「ちょっと待つだ!作戦はどうすんだべ?」
「そうやなー、前衛は俺が行く。中堅に小龍姫様、後衛は早苗ちゃん。
これでいいだろう。後方が遮断されると思うから、早苗ちゃんは、
結界をいつでも展開できるように。小龍姫様は、相手の出方によっては、
先鋒をお願いするかもしれないっす。これでいーかな。」

歩きながら、横島は淡々としゃべる。
いつの間にか、玄関の前にまでたどり着く3人。

「早苗ちゃん。ドアに霊的な罠があるか調べられる?」
「や、やってみるだ。」

早苗はかなり緊張している。
相手の妖怪がBクラスと聞いて、怖じ気ついてしまったのだ。
早苗がドアの前に立つと、急にドアが開いた。

「んぎゃあああああ!!!」

驚いた早苗は、横島にしがみつく。

「ぐはっ!単にドアが開いただけだっつーの!は、離せ!苦しい!!」
「お、落ち着いてください、早苗さん!」
「へ?あ、あはははは!ちょっと芝居をしてみたんだべ。お、面白かったか?」
「・・・まあいいや。それよりも、ドアを開けてくれるとは親切じゃねーか。
よほど自信があるんだな。」

そう言って、慎重に入っていく3人。
全員が入りきったところで、横島は周りを見渡した。

「ま、こういうところのお約束と言えば。」

横島がしゃべり終わると同時くらいに、後ろのドアが大きな音を立てて閉まった。
早苗が慌ててドアを開こうとするが、ビクともしない。

「こうなるんだなあ。」

横島は、特に興味を示した様子はなく、ゆっくりと建物の中へ進んでいく。
小龍姫は、横島の言葉を思い出した。

『後方が遮断されるから・・・か。横島さん、こういう場面を、完全に予測してたんだ。』

早苗も横島をちらりと見ている。

『除霊するときの横島さんの顔って、普段と全然違うべ。
なんでおキヌちゃんがこいつのこと好きなのか分かんなかったけど、
こういう事だったんだな。まあ、山田君よりは劣るけど。』

もちろん、おキヌちゃんがそれだけの理由で横島を慕っているわけではないのだが、
それは本人のみ知る事である。

突然、部屋に明かりがついた。
玄関ホールのようだ。そして、明かりの先には、端整な顔立ちの男が立っていた。

・・・続く。

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