ザ・グレート・展開予測ショー

もう一つの物語(13)


投稿者名:hoge太郎
投稿日時:(02/ 8/29)


「・・・というわけです。」

横島とパピリオは、昼食の蕎麦を食べていた。
その動きが止まった。

「あの、小龍姫様。意味がよくわからんかったのですが?」
「何度も言わせるんじゃありません。ちゃんと聞いてください。
私は、除霊の修行に出ます。横島さんには、お供してもらいます。
パピリオは、現在の修行を続けて貰います。指導は、老師に引き継ぎます。
また、妙神山の管理人の代理人は、老師が担当します。」

小龍姫が淡々と述べる。

「・・・なんででちゅか?なんでヨコチマを連れていくんでちゅか!!!
しかも、なんでパピリオだけ置いていくんでちゅか!」

パピリオが喚く。

「それはワシから説明してやろう。」

いつの間にか、老師が一緒に蕎麦を食べていた。

「パピリオ。お主は、魔界からの派遣という形で、妙神山で修行をしておる。
お主は、魔族、神族の微妙な力関係の一つなんじゃ。小龍姫どころか、ワシの
一存でも、勝手に動かすことはできん。」

老師が、蕎麦をうまそうに啜る。

「小龍姫、お代りはあるかの?」
「はい。一杯ありますよ。もう無くなったのですか?」
「いや、もう少しで無くなる。」

パピリオは、目に涙を溜めながら、なお食い下がる。

「でも、ヨコチマを連れて行くんじゃないでちゅか!!」
「小僧は、小龍姫の管理下じゃ。どうしようと小龍姫の勝手というわけじゃな。」
「納得いかないでちゅ!」
「人生、うまくいかないものなのじゃ。」

どこかで聞いたようなセリフをはく老師。
小龍姫は、ちょっと辛そうに、パピリオを見ている。

「・・・パピリオ。心配しないで。時々戻ってくるから。ね?」
「嫌でちゅ!」
「我侭言わないの。」
「嫌と言ったら、嫌でちゅ!」

そう言うと、パピリオは横島にしがみついた。
横島は、小さい子を諭すように、パピリオに優しく話す。

「パピリオ。お前は、俺の叔母なんだぜ?
甥に、しがみついてどうすんだよ。もっとしっかりしてくれ。
大丈夫だ。俺たち、血が繋がってるじゃねーか。そんなこと言ってると、
ベスパに笑われるぞ?」

パピリオは、横島にしがみついたまま、ヒックヒックと泣いている。
やがて、横島を名残惜しそうに離すと、そのまま元の席に戻った。

「・・・必ず会いに来るんでちゅよ?叔母の命令でちゅ。」
「ああ、必ず会いに行く!」
「・・・わかったでちゅ。」

こうして、小龍姫と横島は、妙神山を出た。
小龍姫は、心の中でパピリオに謝る。

『ごめんね、パピリオ。我侭言ってるのは、私の方だよね。』

鬼門の運転で、買い出しに訪れる小さな町についた。
鬼門が男泣きをしながら、小龍姫に別れを告げている。

「小龍姫様!どうか、どうかご無事で!!」

うおおおんという叫び声が道行く人々の興味をそそる。
小龍姫は、そんなことはお構いなしに、鬼門に語りかける。

「心配せずともよい。老師とパピリオのこと、くれぐれも頼みましたよ。」
「小龍姫様あああ!!うおおおおん!」

汗くさい鬼門の行動が、相当頭にきたらしい。
横島は、大荷物を抱えながら、鬼門に蹴りを入れる。

「えーい、うっとうしい!!小龍姫様には、俺が一緒にいるんだから、
お前らは心配せんでもいいちゅーの。」
「お前が一緒だからますます心配なんだろうが!」
「どーゆー意味だてめえ!」
「小龍姫様!このケダモノが襲いかかってきた暁には、遠慮は無用ですぞ!
妙神山謹製拷問フルコースを叩き込んでやってください!」
「おのれら〜!」
「ふふっ、大丈夫ですよ。横島さんはそんなことするような人じゃありません。
ね?横島さん。」
「も、もちろんっすよ!小龍姫様の着替えやお風呂を覗いたりとか、
二人っきりになったのをいいことに、あんなことやこんなことをしようなんて
これっぽっちも・・・ハッ!!」

首筋に冷たいものが触れた。
ゆっくりと振り返ると、小龍姫が微笑んだまま、御神刀を横島の首筋に当てている。
初っぱなから先行きに大きな不安が残る、2人であった。

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町の中心から少し外れた公園のベンチで休憩をする2人。
大荷物を地面におろし、横島は小龍姫に尋ねた。

「さて、と。除霊の修行と言っても、あてはあるんすか?小龍姫様。」
「私にあるわけないじゃないですか。」
「へ!?」

横島の目が点になる。

「そ、それじゃこれからどうすんです?」
「それは横島さんが考えることです。」
「そ、そんな無茶苦茶なああああ!!」
「横島さんは、GSの資格を持っているじゃないですか。
それに、大丈夫ですよ!軍資金もあることだし。さっき、換金してきたんです。」

そう言って、小龍姫は、札束を見せる。

「なんと!100万円もあるんですよ!!
これだけあれば、都内に事務所を置けますね!美神さんと鉢合わせするかも。」

楽しそうに、小龍姫は話している。
だが、横島の目は半眼になっている。
確かに大金だ。でも・・・。

「小龍姫様。ちょっとこちらへ。」

そう言って、小龍姫をコンビニまで連れて行く。

「これに目を通してみてください。」

そう言って、都内の物件情報誌を渡す。
よくわからないまま、情報誌を開いた小龍姫。ピシッと凍り付く。

「横島さーん・・・。」

小龍姫の目がウルウルしている。
黙って横島はコンビニを出て行く。

「ああっ、待ってください!置いていかないでー!」

2人は、また公園のベンチに座った。

「どうしましょう・・・。軍資金の持ち出しは、1回のみだし。
ああ、こんなことなら、千両箱をそのまま持ってくるんだったー!」
「いきなり、流浪のGSになってしまった・・・。」

横島は、ちょっと、いや、かなり後悔している。
小龍姫を責めているわけではない。都内のオフィスの相場なんて、小龍姫が
知るわけ無い。むしろ、横島が軍資金の現場に居合わせるべきだった。
要するに、あまりにも無計画すぎたのだ。

『美神さんを頼るか・・・?いや、それはあまりにも節操がなさすぎる。
そもそも、小龍姫様は、俺を信頼して除霊の修行をすると言ってくれたんだ。
俺の力でなんとかしないと・・・。でも、どうする?』

時間が無為に過ぎていく。
小龍姫と横島は、先ほどのコンビニでおにぎりを買って、
公園のベンチでモソモソと食べていた。

『前みたいに、いきなり除霊の現場に居合わせたなら、共同作業として
いくらか報酬が貰えたかもしれないけど。・・・ん?そうだ、あの人に聞いてみよう。』
「すんません、小龍姫様。ちょっと電話してきます。」

そう言って、横島は電話ボックスへ走っていった。

横島が電話ボックスから戻ってきて、待つこと1時間半。
公園の前に、1台の軽自動車が止まった。

「まったく、こんな所まで呼び出すんじゃねーべ。」

ブツブツ言いながら、運転席から、ショートカットの女性が降りてきた。

・・・続く。

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