ザ・グレート・展開予測ショー

『命』の選択・番外編1


投稿者名:運値
投稿日時:(02/ 8/28)

『命』の選択?番外編


事件は、命の選択騒動の1週間前に遡る。この日の天気は快晴。雲一つ無い空。まさに行楽日和である。

「本当に晴れてよかったですね」
「ええ〜〜、そうね〜〜」
「そうでござる」
「…そうね」

3人は今日仕事を休みにして妙神山までやって来ていた。天邪鬼騒動後に、小竜姫に遊びに来るように誘われたため暇を見つけて湯治に来たのだ。今回は、そのメンバーにシロが加わっている。美神・おキヌは精霊石の競売のため海外に行っており、シロだけが取り残される形になっていた。ならば、と横島が誘ったのである。

「温泉楽しみね〜〜」
「…覗いたら、分かってる?」
「………あは、あはははは…」

横島は冷や汗を垂らして乾いた声で笑った。どうやら痛い所を突かれたらしい。そうこうしている内に、妙神山の門まで来る。

「よお、久しぶりだな鬼門」
「おお、おぬし、横島か!!!久しいな。話は聞いているぞ、さあ入れ」
「それじゃ、通るぜ」

鬼門達が開門すると、小竜姫とパピリオが迎えに来た。パピリオは横島の姿を見止めると、跳びついて抱きついた。それを見てシロが固まる。
(先生に抱きつくのは、拙者の特権でござるのに!!!このガキ!!!)
パピリオは、そんなシロを横目で見て鼻で笑うと、横島に話しかけた。

「久しぶりでちゅ、ポチ!!!ずっと、会いたかったでちゅよ!!!」
「久しぶりだな、パピリオ。少し成長したか?」
「ハイでちゅ!!!もう少しで、小竜姫なんて目じゃなくなりまちゅよ!!!」
「パ…パピリオ……」

横島が、背中に冷や汗を掻きながら小竜姫の方を見ると、小竜姫はニコニコと微笑んでいる。
(…気のせいか?)
横島は少し安堵して、パピリオを首に抱き付けたまま小竜姫に話しかける。

「小竜姫様、今日はお招きありがとうございます」
「いえ、この間の御礼もありますし、いつもお世話になっていますから気にしないでください」
「そうですか〜〜、じゃあ、早く中に入りましょう〜〜ここまで来るのに歩き疲れちゃったわ〜〜」
「…そうね。じゃ、先に行ってるから」

そう言うと、2人はさっさと奥に歩いていった。よっぽど温泉が待ち遠しいらしい。しかし、シロはパピリオを睨みつけたまま動かなかった。2人が奥に行ったとき、小竜姫は唐突に横島に話しかけた。

「横島さん。後でお話がありますので、私のところに来てください」
「え…?」

(こ、これはまさか!!!愛の告白か!!!いやしかし…)
横島は妄想をし、顔がどんどんにやけていく。小竜姫はそれを見ると口の端を歪めてパピリオに言う。

「ふふふ、抱き付いても妄想もされないガキは可愛そうね…クス…」
「小竜姫!!!アンタなんてこと言うんでちゅか!!!」
「ぐ、ぐぐ…ぱ、パピリオ…ぐるじい…や、やめ…首絞まってる…」

(小竜姫様…物凄く怒ってたのね…やっぱ予感は当たって……ガク)
小竜姫は、普段の彼女とは思えないほど辛辣なことを言う。これに怒ったパピリオは抱きつくために横島の首に回していた腕に思い切り力を入れて、横島を締める。既に横島の意識は無くなっていた。

「パ、パピリオ、早く横島さんから離れなさい!!!横島さんが苦しそうですよ!!!」
「そんなこと、指図される覚えは無いでちゅ。ポチはアタシの物なんでちゅ!!!」
「なんですって!!!」
「パピリオにはまだ未来があるでちゅ。嫉妬は醜いでちゅよ、お・ば・さ・ん!!!」
「ぐ!!!もう怒りました!!!覚悟はよろしいですか?!」

横島の顔色は青を通り越し真っ白になっている。しかし、頭に血がのぼった2人は気づかない。横島の命運はここまでと思われた瞬間、2人の間に、シロが割り込んだ。

「貴様、その手を離せ!!!先生を殺す気か!!!」
「な、何を言って…え?ポチ、ポチ!!!大丈夫でちゅか!!!」
「よ、横島さん!!!く、パピリオ、貴方のせいですよ!!!」
「あ、アタシのせいなんでちゅか…」
「今はそのような事をしている時じゃないでござる!!!早く部屋の中へ!!!」

シロが怒鳴ると、横島を抱えて急いで建物の中に入っていき、小竜姫もそれに続いた。しかし、パピリオはその場に立ち尽くしていた。



「っは!!……ここは何処だ?」
「あ、お目覚めになられましたか?横島さん」
「先生!!!大丈夫でござるか!!!」

シロが嬉しさの余り、横島に跳びついて顔をなめる。

「うわ、シロ、跳びつくな!!!顔を舐めるな!!!」

横島がシロを引き離して、小竜姫の方に顔を向ける。

「あれ、小竜姫様、…ここは?」
「ここは、あなた用の部屋ですよ」
「何でここに……そう言えば死んだ婆ちゃんが川の向こうで手を振ってた様な…」
「それは…」

小竜姫が今までのことを説明する

「本当にすみませんでした。横島さん」
「いや、気にしないでください。そうか、…ありがとう、シロ」
「師匠を助けるのは弟子の勤めでござる!!!」

シロは嬉しそうに尻尾を振る。横島はそれを見てやれやれと思いつつ、ふと周りを見回して言う

「あれ?冥子さん達とパピリオは?」
「冥子さんは居間で、タマモは今風呂でござる」
「そっちは小竜姫様が入ってないからパス。でパピリオは?」
「何がパスかは分かりませんが…そういえば何処に行ったんでしょう」
「拙者は見てないでござるよ」
「ま、お昼には戻るでしょう。横島さんは気にせず休んでいてください」
「そうっすか!!!じゃあお言葉に甘えて」
「じゃあ、私達はお風呂に入ってきますので、ごゆっくり」
「は、はい」

2人が部屋を出て行った瞬間横島は飛び起きて行動を開始する。
(この横島忠夫、目の前の獲物をみすみす見逃すほど甘い男ではないのだ!!!)
目から炎を噴出しつつ、温泉への道を突き進むのであった。



「あ〜、良いお湯でござる」
「そうですね、ここは妙神山の修行の疲れを癒す場ですから」
「先生も一緒に入ればもっと楽しいのに」
「そうねえ…って、シロちゃん、もっと常識を…」
「拙者は構わないでござるよ」
「………そ、それは……」
「小竜姫様は、先生のことを嫌いなのでござるか?」
「…嫌いじゃないけど…」

突然のシロの問い掛けに真っ赤になって答える小竜姫。
(…別に嫌いじゃないけど…あの軽薄な性格がもう少し…う〜ん…)
それを少し複雑そうな顔で見つめるシロ。
そんな中,横島は塀の隙間から、目を凝らして覗いていた。

「くーー、せっかくよじ登ったのに、シロの背中が邪魔で肝心の小竜姫様が見えん!!!」

丁度、シロの背中が塀の前にあり、小竜姫が隠れる格好になって見えない。

「くっそーー!!!シロどけ!!!先生の命令が聞けんのか!!!」
「…聞けないわ」
「なにー!!!って…あれ?」

横島が冷や汗を垂らして後ろを振り向くと、タマモが冷ややかな顔で立っていた。

「あ、た、タマモ、これは…その…」
「問答無用ね!!!この女の敵!!!」

横島はタマモにボコボコにされる。しかし、タマモの心の中はシロ達を覗いたことに対する怒りかと思うと、さにあらず。
(なんで、アタシ達の時には覗きに来ないのよ!!!ヨコシマの癖に!!!)
乙女心は複雑であった。

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