ザ・グレート・展開予測ショー

もう一つの物語(11)


投稿者名:hoge太郎
投稿日時:(02/ 8/27)


除霊を終えた氷室親子と、横島と小龍姫は、近くの喫茶店にいた。
小龍姫は黙ったままだ。端から見ていても、これでもかって言うほど落ち込んでいる。
早苗が、得意そうに言った。

「これに懲りて、素人が除霊に口だしするんでねーぞ!」
「こら、早苗!そんな言い方があるか!」
「だども、父っちゃ・・・わかっただよ。」

横島は困っていた。
小龍姫を落ち込ませるために、除霊に行ったわけではない。
ちょっとした気分転換のつもりだった。思ったより大きな除霊作業であったが。
横島に買って貰った服は、烏龍茶のシミどころではない。あちこちが破れ、汚れいている。
早苗が話題をそらそうと、冗談めいた口調で小龍姫に話しかける。

「ところで、あんた横島さんと付き合っているだべか?
物好きだなー。毎日セクハラに怯えて生活してるんだべ?わたすだったら、絶対嫌だけどなー。」

小龍姫は答えない。
横島は、早苗に口調をあわせる。

「そう?そう見える?付き合ってるように?やっぱそう見えるか!
光栄やなー!わはははは・・・は・・。」

横島は横目で小龍姫を見る。
やはり小龍姫は何もしゃべらない。
早苗は、ムッときたらしい。

「ちょっとあんた。なんかしゃべったらどうだべ?
そう言えば、名前を聞いてなかっただな。なんていうんだべ?」
「・・・小龍姫。」

初めて、ボソッと小龍姫は答えた。

「へー、小龍姫っていうんだか。変わった名だな。中国の人か?」
「小龍姫?」

早苗の父が、口に運びかけていたカップを、止める。

「小龍姫・・・小龍姫・・・・。どこかで聞いたんだが。
確か・・・小龍姫!?」

早苗の父が、驚愕の眼差しを小龍姫に向ける。

「あの、まさか妙神山の・・・?」

小龍姫は、コクッと小さく頷いた。
早苗は不思議そうに、父を見る。

「父っちゃ。知ってるだべか?」
「馬鹿ものーーーー!!!日ノ本の国の守護をなさっておられる、神々のお一人だ!」

早苗の父の声が喫茶店に響き渡る。
しかし、早苗は疑わしそうに父を見る。

「だども、神様ってあんなに弱いんだべか?
そもそも、神様がこんな商店街をうろうろしているわけねーべ。」

鋭い突っ込みを入れる早苗。
弱いという言葉に、ギュッと口を真一文字に結ぶ、小龍姫。
だが、父は確信しているらしい。

「無礼な事を言うな!証拠は頭のツノだ。あのツノは龍神族の証。
私も初めて拝見するが、昔読んだ書物の内容と一致する!」
「ふーん。」

早苗は小龍姫のツノをまじまじと眺める。

「横島さん。本当だべか?」

横島は苦笑しながら、本当だと答えた。
突然、小龍姫は立ち上がり、スタスタと出口に向かって歩いていく。
慌てて横島は、コーヒー代をテーブルの上に置き、更に、自分と小龍姫のことを
内緒にしてくれとたのんで、小龍姫を追いかけていった。

日が暮れようとしている。
長い影を目で追うと、小龍姫が橋の上に立っていた。
そっと近づく横島。小龍姫は、じっと夕日を眺めている。
横島は、夕日の中に佇む小龍姫を、ハッとしたように凝視した。
失ってしまった大切な人影と、重なって見えたような気がしたのだ。
横島は軽く首を横に振り、小龍姫に優しく語りかける。

「行きましょうか。随分遅れてしまったので、鬼門が心配してるっすよ?」

小龍姫は、小さく頷くと、鬼門が待つ場所へ歩いていく。
横島は、鬼門に散々責められたあと、小龍姫と共に車に乗り込んだ。

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小龍姫は、暗くなった外を、じっと眺めていた。
横島は心配そうに小龍姫を見ている。小龍姫は、独り言のように、小さく呟いた。

「・・・私は、なんの役にも立ちませんでしたね。
むしろ、足手まといでしかなかった。」
「仕方ないっすよ。除霊の現場って、初めてなんすよね。
俺なんか、美神さんのところで、荷物持ちばっかりしてましたから。」

横島は、小龍姫から視線をはずし、ゆっくりと話し始める。

「除霊に霊力がいるのは、間違いないんです。でも、相手の特性によって、
対処法が色々あるんですよ。」

小龍姫は、窓の外を見たままだ。
車窓に夜の町の灯りが流れる。

「今回は、俺が作った霊団が相手でしたけど、ああいった相手には、
俺の霊波刀はもちろん、小龍姫様の御神刀も役に立たないんです。
全てがそうじゃない、というのが面倒なところなんですがね。」

一呼吸置く横島。

「GSが対応する除霊の8割方は、ああいう悪霊が相手なんすよ。
魔族や魔物、妖怪。さらには神族が相手なら、小龍姫様の御神刀が有効なんすけどね。
あと厄介なのは、除霊には大概条件が付くんです。建物を壊すなっとかね。
建物ごと潰してもいいんだったら、俺と小龍姫様で、5分もあれば十分なんすけど。」

小龍姫は、窓の外を見たまま、また呟いた。

「私は、思い上がっていました。神族だから、人間が行う除霊なんて、
簡単だと思っていました。でも、実際は龍神族の恥をばらまいてしまった。
ただ眺めているしかできなくて。何か横島さんの役に立ちたくて・・・。
でも・・・!」

小龍姫が拳をぎゅっと握りしめる。

「でも、役に立つどころか、横島さんに買って貰った服をボロボロにしてしまって、
私は、私・・・!」

最後の方はもはや言葉になっていない。
横島は、じっと小龍姫を見ている。突然、明るい声で横島は小龍姫に語りかけた。

「でも、よかったっす。」

小龍姫は、キッと横島を睨む。

「何がいいんです!!」

横島は、屈託のない笑みを小龍姫に向ける。

「だって、今まで俺は、小龍姫様に教えて貰ってばかりだったじゃないですか。
それが、除霊に関してはほんの少し、俺が小龍姫様に教えることができる。
小龍姫様が、何でもできてしまったら、俺が得意顔で小龍姫様に、
教えることができなくなっちまう。少なくとも、小龍姫様に頼ってばかりではなくて、
俺が小龍姫様を守ることもできるということっすよ。」

小龍姫は、横島をじっと見ている。

「俺自身、大したことできないっすけど、でも、ちょっとは頼ってみてください。
・・・俺だって、つまり、その、小龍姫様を守りたいんです!!
・・・とか言ってみたりして。」

横島は、最後で恥ずかしさから、戯けた風に話す。
横島は、小龍姫をちらっと横目で見た。小龍姫の目は、じっと横島を見つめている。
その目は、落ち込んでいる目ではない。
嬉しくて、悲しくて、ちょっと恥ずかしくて。そんな感じの目だ。

「・・・生意気言うんじゃありません!」

小龍姫は、横島の額を指で軽く突いた。
少し怒った風に、小龍姫は横島に話す。

「私はあなたの師匠なんですよ?」
「す、すんませ・・・」

横島の言葉を遮るように、小龍姫が指を横島の口にすっとあてる。

「・・・でも、除霊に関しては、あなたの弟子になってあげます。」
「・・・え?」
「不満ですか?」
「不満だと思いますか?」
「・・・ふふっ!」

お互いにクスクスと笑う。
鬼門は、後部座席でクスクスと笑っている2人が気になるようで、
ミラーでチラチラ見ている。

「ねえ、横島さん。」
「なんすか?」
「また、GSをやってみたい?」
「そうっすねー。一応本業ですからねー。」
「あら。それじゃ妙神山のお仕事は、副業なんですか?」
「そ、そんなことはないっす!わはははは!」

慌てて取り繕う横島。
小龍姫は、窓の外を眺めている。

「・・・。」

何かを決心したように、小龍姫は小さく頷いた。

・・・続く。

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