ザ・グレート・展開予測ショー

もう一つの物語(9)


投稿者名:hoge太郎
投稿日時:(02/ 8/27)


横島と小龍姫は、妙神山から車で1時間ほどの小さな町にいた。
町の古美術商へ向かい、小判を換金。
それから、買い物というのが定番コースとなっている。

商店街の威勢のいい声の中、大荷物を抱えた横島は、魚屋の前で
交渉している小龍姫を眺めている。

「姉ちゃん。これ以上下げたら飯の食い上げだよ!」
「そこを何とか!もう一声!ね?」
「んなこと言ってもなあ。」
「それじゃ、あとこれも付けてくれる?だったら、この値段で買うけど。」
「えーい、仕方ねえ。姉ちゃんには負けたよ。持ってきな!」
「ありがとう!」

大阪商人顔負けの交渉ぶりだ。
半年間小龍姫と行動を共にしている横島は、小龍姫の意外な一面を色々見ている。
それが、結構楽しかったりする。
それにしても・・・。

『小龍姫様のミニスカ姿は、ちょっと、いや、かなり時代遅れだよなあ。』

ファッション関係に疎い横島であったが、それでも、町を行き交う若い女性を
見ていると、小龍姫の服装はかなり浮いている。

『見た目は、完全無欠の美少女なだけに、もったいないよなー。
でも、小龍姫様は、そういうのに全然興味が無いみたいだし。
・・・そうだ!』

小龍姫は、交渉を勝利で飾り、ご満悦のようだ。

「一通りの買い物は、終わりましたね。バナナも買ったし。
まだ、時間がありますね。どうしましょうか。」

鬼門が待っている車に、荷物を積み込んでいる横島を見ながら、小龍姫は呟いた。

「小龍姫様。俺、自分の服を買いに行きたいんすけど、いいですか?」
「ええ、かまいませんよ。」
「それで、小龍姫様も暇でしたら、よかったら一緒に行きません?」
「いいですよ。」

小龍姫は微笑む。
早速、横島は自分が持っている小判を換金する。普段使うことが無いので、
結構貯まっている。ちなみに、厄珍堂で1枚2万で買い取られた小判は、10万で
買い取られていた。厄珍に密かに復讐を誓う横島。

2人で並び、小さいながらも結構ものが揃っている商店街を歩く。
横島は、ちょっとしたデート気分に浸っている。
ふと、横島の目がショーウィンドウの前で止まった。
小龍姫は、どことなく楽しそうに、小物を見ている。

『う〜む、これは小龍姫様に似合いそうだな。
でも、ちょっと子供っぽいかな?いや、小龍姫様なら大丈夫か。
値段は・・・げっ!?女物の服ってこんなに高いのか。でもまあ、金はあるし、いっか。』

「小龍姫様!ちょっとここへ寄っていきませんか?」
「え?でも、ここに横島さんの服とか売ってるんですか?」
「まあまあ、とりあえず寄ってみましょうよ。」
「え、ええ。」

2人は、ブティックに入っていく。

「いらっしゃいませ。」

綺麗な20代後半と思われる女性が応対する。
思わず、反射的にナンパを仕掛けようとしてしまう横島であったが、
直ぐに思い直し、店員に尋ねる。

「これが欲しいんすけど。」

店員は、すっと小龍姫を見ると、ではこちらに。と小龍姫を案内する。

「え?え?」

よく分かっていない小龍姫は、為すがままにされている。
しばらく待っていると、カーテンがさっと開いた。
横島は、思わず見とれてしまった。

『す・・・すっげー似合ってる!!』

白を基調とした涼しげなワンピースだ。
小龍姫には、派手な服は似合わないと思い、シンプルなものを選んだのだが、
ここまではまるとは思っていなかった。

「滅茶苦茶似合っていますよ、小龍姫様。」
「あ、あの、横島さん。これってどういうことなんですか?」
「俺からの感謝の気持ちです。迷惑でしょうけど、受け取って貰えませんか?」
「・・・」

小龍姫の頬が少し赤い。
そのまま、購入した服を着て、ブティックを出た2人。
更に、その他細かいものをそろえ、完全無欠の美少女の完成だ。
小龍姫は、黙ったままだ。少し不安になって、恐る恐る横島は尋ねる。

「あの、小龍姫様。もしかして、怒ってます?」

慌てたように小龍姫が首をブンブンと横に振る。

「そ、そ、そんなことないです!その、私、こういうのは初めてで、
あの、よく分からないってゆーか、つまり、あの、その・・・」

支離滅裂な言葉をしゃべる小龍姫。
横島は、屈託のない笑みを浮かべる。

「んじゃ、デートの続きでもしましょうか!」
「え?」
「あ、いや、すんません。暇つぶしの続きです。」
「え、ええ。」

思わず、心の中で思っていたことを話してしまい、慌てて言い直す横島。
小龍姫は、困ったような、嬉しいような、なんとも複雑な表情をしている。

2人は、ぎこちなく歩き、ちょっとした大きさの公園に入った。

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2人は公園に入って程なくして、大きな木の木陰にあるベンチに座った。

夏の日差しは、きついものの、公園の中では小さな子供が、元気一杯に走り回っている。
時折、爽やかな風が吹いている。

「「・・・」」

どちらも、会話のきっかけが掴めない。

「お、俺、ジュース買ってきます。小龍姫様は、何がいいっすか?」
「あ、えっと、烏龍茶をお願いします。」
「分かりました!」

そういうと、横島は自販機へ向かって走っていった。
自販機に金を入れながら、横島は少し困惑している。

『俺らしくねーな。なんつーか、美神さんだと煩悩全開なんだけど、
小龍姫様と一緒にいると、緊張するってゆーか。どっちかっつーと、
おキヌちゃんと一緒にいるみたいな。うーん・・・。』

ジュースの取り出し口に手を突っ込んだまま、横島は止まってしまう。

『まままままさか!?小龍姫様は、もしかして俺のことを・・・!?
そんでもって!そんでもって!!・・・あほらし。
んなわけねーか。第一、おキヌちゃんと同じなら、どっちかっつーと、
家族みたいな感じだし。そもそも、小龍姫様が俺を相手にするわけねーし。』

そのころの小龍姫。

『私、どうしたんだろ。』

ベンチに座りながら、子供達を眺めている小龍姫。

『数百年生きてきたけど、今までこんな事はなかったな。ずっと修行してたし。
横島さんと一緒にいると、楽しいんだけど。でも、苦しい時もあるし。
どうしたんだろ・・・。よくわからないなあ。』

ボーっとしている小龍姫は、いつのまにか目の前に人がいることに気が付いた。

「あ、お帰りなさい、横島さ・・・」

横島ではなかった。いかにも、チンピラ風の2人の男が、小龍姫を下卑た目で見ている。

「何かご用ですか?」

男達は答えない。嫌らしい目で小龍姫をなめ回し、嫌らしい声で笑う。
小龍姫は、この男達を嫌うことに決めた。

「用がないのであれば、そこをどきなさい。人を待っていますので。」

男達が、初めて口を開いた。

「まあいいじゃねえか。俺たちと良いことしようぜ?天国に行けるような気分になれるぞう!」
「興味ありません。」
「なあ、その髪飾り変わってるねえ。ツノ?似合わねえから取りなよお!」
「余計なお世話です。さっさとどきなさい。」
「いいからこいっつってんだよ!!」

男達の手が小龍姫に伸びた。小龍姫は、骨の2、3本でも折ってやろうかと考える。
その時声が聞こえた。

「すんません、小龍姫様。遅くなりました!」

横島ののんびりした声だ。
横島は、チンピラ風の2人を見る。

「なんすか?こいつらは。」
「てめーこそ、なんだコラァ!この姉ちゃんの男か?貧相ななりをしやがって。
文句あんのか?あ?」
「うっせーな。」

横島はそれだけ言うと、蓋を開けて、小龍姫に烏龍茶を渡す。
さすがに、最近の横島は自信がついている。チンピラごとき、本気を出すまでもない。

「なめてんじゃねーぞコラァ!!」

横島の背中がドンと押された。
烏龍茶が小龍姫の服に零れる。白いワンピースに小さなシミができた。

「貴様ら・・・!!」

小龍姫が持っていたスチール製の缶が一瞬で握り潰され、霊気が爆発した。
男達が、解放された小龍姫の霊気に吹っ飛ばされる。
続けて、小龍姫が手のひらを男達に向ける。霊気砲を撃つつもりだ。
慌てて、横島が止めにはいる。

「ちょ、ちょっと待ってください、小龍姫様!
人間界でそんなことしちゃまずいっす!落ち着いてください!」
「でも!!横島さんに買って貰った服をあいつらは!」
「烏龍茶のシミ程度なら、直ぐに落ちますって!今洗えば大丈夫っす!」
「でも!」

そうこうしている内に、男達は化け物だーと叫びながら、転びつつ逃げていった。
ざわざわと周りに人垣ができている。
横島は、小龍姫の手をつかみ、水道でシミを落とした後、逃げるように公園を後にした。

「ふう、ここまでくればいいだろ。」

公園から離れた場所で、横島は一息ついた。
ふと、横を見ると、小龍姫が少し頬を染めながら、あさっての方向を見ている。

「あ。」

横島もちょっとだけ赤くなった。
公園から、ずっと手を繋いでいたのだ。
まるで小学生カップルのような初々しい反応を示す2人。
どちらからともなく、微笑む。
ふと、横島の顔が緊張した。すっと左手の建物を眺める。

「どうしたんですか?横島さん。」

小龍姫は、横島の反応を不思議そうに見る。

「霊の気配っすね・・・。」

久々にGSとしての横島の勘が動き出した。

・・・続く。

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